【絵本の紹介】「マドレーヌのクリスマス」【286冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は大人気「マドレーヌ」シリーズより、この季節にぴったりの一冊を紹介しましょう。

マドレーヌのクリスマス」です。

作・絵:ルドウィッヒ・ベーメルマンス

訳:江國香織

出版社:BL出版

発行日:2000年11月1日

 

パリの寄宿舎で暮らす12人の女の子の活躍を描いた素敵な物語。

これまでに2作品を紹介しました。

 

≫絵本の紹介「げんきなマドレーヌ」

≫絵本の紹介「マドレーヌといぬ」

 

マドレーヌといぬ」では絵本界の最高賞コールデコット賞を受賞したものの授賞式には出ず、マドレーヌの名前のモデルである妻を代理に立てたというシャイなベーメルマンスさん。

素行不良で故郷にいられなくなり、アメリカに渡り、ほとんど独学で絵を、描いて描いて描きまくることによって学んだベーメルマンスさん。

 

そんな魅力的な作者の生涯は、「ベーメルマンス マドレーヌの作者の絵と生涯」という本にまとめられています。

とても面白いですよ。

 

さて、シリーズ化して以降のマドレーヌたちは、隣に引っ越してきたいたずらっ子のペピートと交友を深めたり、ロンドンやアメリカに遠征したりと世界を股にかけた活躍を見せます。

今回はパリに帰ってきて、お馴染みの寄宿舎でクリスマスを迎えるのですが……。

 

なんとマドレーヌ以外の11人と、ミス・クラベルまで屋敷中が風邪で寝込んでしまいます。

たった一人元気なマドレーヌは、掃除に料理、みんなの看病までてきぱきとこなします。

ただのいたずらっ子ではない、実にしっかり者。

そこに訪ねてきた、妙にアラビアンなじゅうたん商人さん。

12まいのじゅうたん」を行商に来たのです。

 

なんてすてき。あさ おきるとき、これで あしが つめたくないわ

と、やさしいマドレーヌは、ミス・クラベルの許しを得て、12枚のじゅうたんを商人から買い取ります。

 

ところが、全部のじゅうたんを売ってしまった商人は寒さに震え、じゅうたんを取り戻そうと屋敷に引き返してきます。

どんな商人だよ。

 

屋敷に辿り着いた時には、商人は全身カチンコチンに凍っており、マドレーヌがやかんのお湯で解凍し、薬を飲ませてやります。

パリの冬って、そこまで寒いの?

元気になった商人は実は魔術師で、マドレーヌを手伝って魔法で皿洗いをします。

さらに、呪文を唱えると、

じゅうたんが一斉に空に飛び上がり、12人をそれぞれの家族のもとに連れて行ってくれます。

12人は実家で楽しく過ごした後、寄宿舎に戻って元気に新しい年を迎えるのでした。

 

★      ★      ★

 

ツッコミどころ満載のマドレーヌ流クリスマス。

サンタカラーのじゅうたん商人、あれほどの魔術師なら、寒さくらいなんとかならなかったのかとか、最後に呪文を解くのは何故かミス・クラベルだったりとか。

なかなかはっちゃけた展開のオンパレード。

 

この楽しい絵本が、ベーメルマンスさんの遺作となりました。

絵本製版にあたっては、雑誌掲載時のカットを写真撮影で引き延ばしたり、その上から彩色したりして製本したそうです。

 

そのためかどうか、正直なところ、絵の完成度としては初期作品に及ばない部分が見られます。

いつもの美しい街並みのカットがないせいかもしれません。

 

でも、マドレーヌの奮迅ぶりは頼もしいし、珍しく彼女の顔のアップも見られますし、荒唐無稽でありながら幸せなストーリーも爽快感があります。

あっさりとした終わり方は、ある意味でベーメルマンスさんの遺作に相応しいようにも思います。

 

ベーメルマンスさんの死後、このシリーズは彼の孫のジョン・ベーメルマンスさんが引き継いで描いています。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

じゅうたん商人にツッコミたくなる度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「マドレーヌのクリスマス

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

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【絵本の紹介】「サンタクロースってほんとにいるの?」【285冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

そろそろ今年もクリスマスが近づいてきました。

ぼちぼちクリスマス絵本を取り上げて行こうと思います。

 

サンタクロースを信じているのは何歳までか」という問いが定番になっているほど、子どもとサンタを巡る問題は決着しません。

子どもにサンタの存在を信じ込ませようとするのは親のエゴだ」と言われると、そうかもしれない気もします。

 

無邪気にサンタを信じ、プレゼントに感激する子どもの姿は確かに可愛いものです。

しかし、「いい子にしていないとサンタさんが来ないよ!」と取引の道具にするのはどうかと思います。

 

かの瀬田貞二先生が児童百科事典を編纂した際に、「かっぱ」の項目に「かっぱは今もいる」と断言された時の気持ちを考えると、子どもにとってサンタがいなくてどうするのだ、とも思います。

 

では、当の子どもたちはこの問題をどう考えているのでしょう。

大人よりも遥かに合理的で現実的な彼らは、「サンタクロースの矛盾」を無視はできないはずです。

 

今回はそんな子どもたちと両親の息詰まる攻防を描いた絵本「サンタクロースってほんとにいるの?」を紹介します。

作:てるおかいつこ

絵:杉浦繁茂

出版社:福音館書店

発行日:1982年10月(かがくのとも傑作集)

 

ねえ サンタクロースって ほんとにいるの?

 

いつかは浴びせられるであろう、子どもからの問い。

とある家庭の、浴室風景です。

お父さんは子どもたちとお風呂に入りながら、彼らの鋭い質問に答えて行きます。

えんとつがなくても くるの?

ドアに かぎが かかっていても くるの?

 

どうして ぼくの ほしいものが わかるの?

どうして としとって しなないの?

どうやって ひとばんで せかいじゅうを まわれるの?

みなみのくにでは どうするの?

こないうちもあるのは なぜ?

お父さんとお母さんは、次々に投げかけられるもっともな質問から逃げたりあしらったりせず、真摯に丁寧に、彼らが納得しやすいような回答を与えます。

 

最後に子どもたちはどこか不安な表情で、

ねえ、ほんとうにいるの

 

いるよ

サンタクロースは ほんとにいるよ

せかいじゅう いつまでもね

 

子どもたちは求めていた答えを得て、幸せな表情で眠りにつきます。

 

★      ★      ★

 

子どもに嘘を教えることは良くないことです。

しかし、子どもにはファンタジーが必要です。

 

彼らはこの世界が「善きところ」「美しきところ」であることを信じたいと思っています。

これからの長い人生にとって、世界が美しく善いところでなくてどうしましょう。

 

子どもがいつかサンタクロースの正体を知る日が来たところで、そんなことは些末なことです。

その時までに、彼らの心に色鮮やかなファンタジーが育っていれば、サンタクロースそのものは問題ではないのです。

 

大人がそのことを理解し、そして自分も心からこの世界が美しいことを信じていれば、この絵本のような子どもからの質問に、確信をもって即答することができるはずです。

 

大人たちが一瞬でもたじろいだり、「自分の言葉でない言葉」で語ったり、ごまかしたりすれば、子どもは即座に見抜きます。

その時、子どもは大人を出し抜いたという勝利感を手にするでしょうが、同時にかけがえのない世界を失っているのです。

子どもに、そんな悲しい勝利を与えたくはありません。

 

それにしても、我が家の息子はサンタクロースについてどう考えているのでしょう。

実のところ、どうにもそれが不明なんです。

 

年齢相応以上の読書経験のある子ですから、その中にはサンタの存在を否定するような内容のものもあったでしょう。

科学本もたくさん読んでいますし、意外と現実と幻想を分けているような素振りも見せます。

本当はサンタクロースなんていないと思ってるのかもしれません。

 

でも、今年のクリスマスには「本当に乗れる飛行機のラジコン」が欲しいなどと宣います。

そんなもん……」と言いかけると、不思議そうな顔でこちらを見てきます。

どうしてダメなの? サンタさんに頼むのに」と言わんばかりの表情で。

 

何もかもわかっててやってるのか。

無邪気なのか。

 

聞くわけにもいきませんしねえ。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

両親のアドリブ能力度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「サンタクロースってほんとにいるの?

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【絵本の紹介】「ハリス・バーディックの謎」【284冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

絵本は大人が読んでも面白いもの。

ただし漫然とテキストを読み飛ばすような仕方では絵本は楽しめません。

子どもの頃のように、目と耳を澄まし、想像力を鋭敏にして、そこにある絵と短い文から物語を読み取るのです。

 

今回は非常に変わった構成ながら、大人もワクワクさせられてしまう不思議な絵本を紹介します。

クリス・ヴァン・オールズバーグさんの「ハリス・バーディックの謎」。

文・絵:クリス・ヴァン・オールズバーグ

訳:村上春樹

出版社:河出書房新社

発行日:1990年11月30日

 

オールズバーグさん作品はこれまで「魔術師ガザージ氏の庭で」「ジュマンジ」「急行『北極号』」を取り上げています。

 

≫絵本の紹介「魔術師ガザージ氏の庭で」

≫絵本の紹介「ジュマンジ」

≫絵本の紹介「急行『北極号』」

 

毎回幻想的で想像力を刺激されるオールズバーグさんの絵本。

今回は、絵本にしては少し長めの「はじめに」という文があって、これを読んでおかないと内容が意味不明になります。

実際、私は初めてこの絵本を読んだ時、「はじめに」を飛ばしたのでさっぱりわけがわかりませんでした。

 

出版社勤めのピーターという人物のもとへ、自分の書いた物語を売り込みに来たらしい「ハリス・バーディック」なる男が訪れます。

その14の物語にはそれぞれハリス・バーディックが自分で描いた絵があり、この時、見本として各物語に一枚ずつその絵を持ってきていました。

その絵にすっかり魅了されたピーター氏は、その物語を早く読みたいと催促します。

 

ところが、明日物語を持参すると約束したハリス・バーディックは、次の日になっても現れず、それどころかそのまま姿を消してしまいます。

残されたのは14の絵と、それぞれに付けられたタイトルと短い説明文のみ。

作者はその絵を「複製」し、この「ハリス・バーディックの謎」を作った……というのが「はじめに」の要約。

 

もちろんフィクションでしょうけど、物凄いリアリティのある設定です。

そしてこの絵本は、ハリス・バーディックが残した14の絵とそのタイトルと短い説明文を並べた構成になっています。

例えば、「ヴェニスに消えた」という絵。

説明文は「その強力なエンジンを逆進に入れたというのに、旅客船はどんどん運河の奥の方にひきずられていった

 

招かれなかった客」という絵には「彼の心臓はどきどきしていた。ドアの把手はたしかに回ったのだ

 

リンデン氏の書棚」という絵には「彼はその本について、女の子にちゃんと注意を与えたのだ。でももう遅い

七つの椅子

五つめは結局フランスでみつかった

 

オスカーとアルフォンス

それらを返さなくてはならない時が来たことは彼女にもわかっていた。毛虫たちは彼女の手の中でもぞもぞとうごめき、「さよなら」という字を描いた

メイプル・ストリートの家

それは文句のつけようのない離陸だった

 

★      ★      ★

 

まさに謎。

こんな調子で物語の断片だけが示され、各ページに関連性はありません。

後は読者の想像力のみに委ねられているのです。

 

イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」の展示作品を見ている時もこんな感じだった気がします。

絵を読む、という絵本の特性を抽出して濃縮したような作品です。

各カットは美しく、怪しく、どこかSFチックで、いくらでも自分の物語を想像させてくれます。

絵本作家のヨシタケシンスケさんも、この絵本に大いに刺激を受けたそうです。

 

小学生のころ、図書室で借りたい本を選ぶために適当にページをめくり、挿し絵のある部分だけを見て面白そうかどうかを判断していたことを思い出します。

結局借りられなかった本の中の、そのワンシーンの絵と文だけが何故か長く記憶に残るのです。

あれはいったい、どんなお話だったのだろう……と、何かの折に想像してみたりするのですが、もはやタイトルすら忘れてしまい、読むことは叶いません。

 

ちなみに、この絵本にインスピレーションを受けた作家さんたちがそれぞれの絵から物語を書いた「ハリス・バーディック年代記」という本があります。

この絵本の影響力がいかに大きいかがわかりますが、私は読んでいません。

「謎を謎のまま楽しむ」というのもいいものですから。

 

推奨年齢:小学校高学年〜

読み聞かせ難易度:☆☆(読み聞かせ向きとは言えませんが、読み聞かせるのは楽しそうです)

想像力触発度:☆☆☆☆☆

 

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