【西宮市大谷記念美術館】「2017イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」へ行ってきました。

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

「バベルの塔」展に続きまして、今度は毎年恒例のボローニャ国際絵本原画展を見に行きました。

西宮市大谷記念美術館で開催中。

今週末まで。

例によって例のごとく、終了日間際のレビュー。

 

ボローニャ国際絵本原画展とは、イタリア・ボローニャで毎年行われる絵本原画のコンクールで入賞した作品を展示するもの。

コンクールは絵本の原画を5点1組にすれば誰でも応募できるので、毎回世界各国から多くのイラストレーターたちが参加しています。

もちろん、日本人も。

 

私はこの展覧会に行くのはこれが初めてになります。

夏休みも終わったというのに、多くの来館者。

なかなかの人気です。

 

今回は日本人6名を含む26か国75作家が入選を果たしたということで、すべてを見て回るのには結構時間がかかりました。

以下、個人的な感想。

 

絵本から原画展に行く時は非常にワクワクしますが、原画から入ると、また違った趣があります。

全体として、確かにすごく上手い。

そして、ハイセンスな印象です。

どっちかというと大人向け。

もちろん、子どもがじっと見入るような絵もあるんですけど、単純な楽しさよりも、深いメッセージ性のある作品が多い気がしました。

 

それ自体は全然悪いことではありませんが、これだけ世界中から色んな作家さんの作品を集めているにも拘わらず、展覧会全体にどことなく統一感のようなものがあるのですね。

審査員が意識的にそうしたのかどうかはわかりませんが、私はもっとカオスな展覧会を想像していました。

だって、絵本って物凄く自由度が高く、それゆえに作家の個性が発揮されやすいメディアだからです。

 

その割に、今回の入賞作品はどこか似た雰囲気のものが多い。

あと、コラージュ手法がやたら多い気がしました。

コラージュ好きですけどね。

 

見たこともないような大胆な表現技法とか、思わず力が抜けてしまうようなゆるーいイラストとか、「これが絵本?」と思ってしまうような実験的な作品とか、そういうのを期待してたんですけども。

 

もちろん、そういう作品も多く寄せられていたのかもしれませんが。

繰り返しますが、作品そのものはすごくハイレベルだと思いますし、面白いものもたくさんありました。

 

入選作家の他作品を含む絵本展示ブースもあり、私はそこにいた時間が一番長かったです。

原画もいいけど、やっぱり「絵本」の形で手に取ってみたい気持ちが強いらしいです。

 

 

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「100冊分の絵本の紹介記事一覧

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

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ブリューゲル「バベルの塔」展へ行ってきました。【国立国際美術館】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

大阪は国立国際美術館で開催中のブリューゲル「バベルの塔」展を観てきました。

7月から開催されてますけど、相変わらず全然急がない系の行ってきました記事。

公式HP≫【公式】ブリューゲル「バベルの塔」展

 

国立国際美術館は中之島の、大阪市立科学館のすぐ隣にあります。

科学館のほうは息子のお気に入りスポットで、10回くらいは遊びに行ってますが、美術館に入るのは初めて。

 

相当宣伝されているのでご存知の方も多いでしょうけど、一応簡単に説明しますと、今回の展覧会はピーテル・ブリューゲルという16世紀ネーデルラント絵画を代表する画家の、「バベルの塔」という作品が最大の目玉となっています。

またブリューゲル以前にネーデルラントで有名だったヒエロニムス・ボスという画家の作品と、ボスを模倣した作者不詳の作品が展示されています。

 

ボスの絵はやたら怪物がいっぱいでてきて、緻密だけどちょっと気持ち悪い。

ブリューゲルはそんなボスの影響を大きく受けつつ、農民など大衆の生活を描いた作品が多いです。

 

さて、絵本屋を構えている身ではありますが、正直言って私は美術的審美眼というものをほとんど持ち合わせておりません。

絵本が本当に好きになったのも息子が生まれてからですし。

このブログで「絵本とは」などと大きな顔をして記事を書いたりしてますけど、「絵」そのものについての知識は素人に等しく、専門的なことはあんまりわかってません。すいません。

 

ですから、絵本を語る時に「物語」や「構成」に比重が大きくなりがちで、肝心の「絵」については、実は自信がない。

 

でもやっぱり「絵本」なんだから、「絵」が大事なんです。

そういうわけで、勉強のつもりも兼ねて行ってきたわけです。

ブリューゲルが好きだったわけではありません。

 

ですので、ここで美術史や技術的な話を知ったかぶりで書くのはやめて、「絵本屋」目線で感想を記したいと思います。

 

「バベルの塔」に限らず、ブリューゲルの作品はそのどれもが、「これは絵本の絵になるなあ」と思えました。

 

絵本の絵とは「物語る絵」です。

すべての絵画は何かしら「物語っている」と言えるかもしれませんが、ブリューゲル作品には特にその傾向を強く感じます。

 

とにかく人物が多い。

そして、非常に暗喩的です。

ことわざを視覚化した絵をシリーズ的に描いていますが、一枚の作品の中に蠢くイメージの膨大さは、ひとつひとつ追っていくだけで物凄い時間がかかります。

 

さらに、現実的観察眼の上に構築された想像力の豊かさに圧倒されます。

「七つの大罪」シリーズでは、ボスゆずりのユニークな怪物が大勢登場し、人間の犯しやすい罪について強烈なイメージを投げかけています。

 

それらはテキストなしでも十分に、そして雄弁に、「物語って」います。

目玉作品の「バベルの塔」に関しても、そこには無数の人々が緻密に描かれ、それぞれの動きや意思が存在しています。

 

そこに描かれた絵は静止していますが、その「過去」や「未来」を見るものに想像させる力に満ちています。

そうした意味で、ブリューゲルの絵は非常に「絵本的」だと感じました。

 

的確な言い方ではないかもしれませんが、ブリューゲルのような絵は、私のような素人にとってはある意味で「やさしい」のです。

手法や技術や歴史的背景について無知な者でも、彼の絵に描かれた「物語」は容易に感じることができます。

 

芸術的な「眼」というものは、浴びるほどの芸術鑑賞の蓄積によって涵養されるのだと思います。

そういう豊かな「眼」を持つ人なら、何気ない風景画からでも、そこに深い物語を読むことができるのでしょう。

 

けれど、それは鈍った感性にとってはただの景色と変わりないかもしれません。

「絵本的な絵」は、そういう未熟な感性に対しても、能動的に語り掛け、想像力を喚起してくれます。

その積み重ねが、「肥えた」眼を育てるのではないでしょうか。

 

やっぱり絵本は芸術作品なのです。

子どもが幼い頃から芸術に触れさせようと思っても、美術館に何度も足を運ぶのはなかなか大変ですが、絵本をたくさん読み聞かせることは、やろうと思えば誰でもやれることです。

どうぞ、子どもには読み聞かせを。

 

結局絵本の話になってしまいました。

 

最後に、国立国際美術館さんに一言いいたいのですが。

「バベルの塔」実物の前はすごい行列で、それは仕方ないとしても、係員さんたちがひっきりなしに「歩いてください」と急かすのはあんまり気分のいいものじゃないです。

 

だって、それを観るためにチケット買って入館してるんだから、じっくり見せて欲しい。

それができないなら、いっそ入場規制してほしい。

 

チラ見するだけなら、結局ミーハー的な意味で「本物見た」という満足感以外に得るものはないと思います。

 

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【絵本の紹介】「11ぴきのねことあほうどり」【181冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

「11ぴきのねこ」シリーズで知られる絵本作家・馬場のぼるさんが生前に描いたスケッチやアイディアを記したノートなどが大量に残されていることが発見され、ニュースになりました。

 

それら創作資料の中には、「11ぴきのねこ」に関する構想や考察も多く含まれていたそうです。

「猫の歴史」について書かれたページには、猫がいつ日本に来たのか、どんな模様の猫が多かったのか、など、文献を調べてわかったことが実に詳細に記述されていました。

 

あの独特のフォルムの「11ぴきのねこ」が、けっして適当に描いたわけではなく、膨大な情報と知識に基いて描かれていることがわかります。

たかが子どもの本、と絵本を侮る人には理解できない真摯な仕事ぶり。

 

今回は馬場さんへの敬意を込めて、「11ぴきのねことあほうどり」を紹介します。

作・絵:馬場のぼる

出版社:こぐま社

発行日:1972年11月10日

 

シリーズ第一作については、以前の記事をご覧ください。

≫絵本の紹介「11ぴきのねこ」

 

大ヒットとなった「11ぴきのねこ」。

ぜひ続編を、と読者や編集者に熱望され、構想に取り掛かったものの、完成までに実に5年を要した苦労作。

 

馬場さんが最初に思い描いたのは、「11ぴきのねこがあほうどりの背に乗って空を飛んでいる」カットだったそうです。

しかし、そこに行き着くまでが出てこない。

 

最終的には表紙のように、11ぴきは気球に乗ることになりました。

 

前作ではいつも腹を空かせたノラネコだった11ぴき。

なんと今作では商売をしています。

11ぴきのねこのコロッケ屋さんは大繁盛。

結構楽しそうに働いています。

売れ残りのコロッケも食べられて、お腹も満足そう。

 

……が、毎日毎日コロッケばかり食べているうちに、11ぴきは、

もう コロッケはあきたよ

おいしい とりのまるやきが たべたいねえ

と言い出します。

 

前回は魚で、今回は鳥というわけです。

とりのまるやき」を思い浮かべている11ぴきの前に、一羽のあほうどりが現れ、コロッケをせがみます。

11ぴきは舌なめずりをしながら、あほうどりをもてなします。

このあほうどり、「3」までしか数えられない上に、11ぴきの下心にも気づかず、

ホー しあわせ、わたしはもう しんでもいい

などと隙だらけなセリフを吐きます。

 

さすが、捕まえ易すぎて絶滅危惧種になったといわれるあほうどり。

前回の巨大魚とはえらい違いです。

 

このあほうどりも11ぴきの胃袋に収まってしまうのか……と思ったら、あほうどりは故郷に兄弟がいることを明かします。

その数、「3ばと 3ばと 3ばと 2わ」。

つまり、「11ぴき」!

 

11ぴきはあほうどりの兄弟にもコロッケをご馳走すると言って、気球に乗り込みます。

やってきた南の島で、11ぴきはあほうどりの兄弟を紹介されますが……。

だんだん大きくなるあほうどり。

最後の「11わあっ」は、入り口を破壊してしまうほどの巨大さ。

 

11ぴきは「とりのまるやき」にありつくどころか、あほうどりたちのためにひたすらコロッケを作り続けるハメになってしまうのでした。

 

★      ★      ★

 

映画などでも、ヒット作が出ればすぐにシリーズ化の流れになりますが、どの世界でも二番煎じは難しいもの。

1作目の出来が良ければ良いほど、2作目でそれをさらに超えるのが困難になります。

設定だけを受け継ぎ、かえって自由な発想を制限され、ほとんどの場合、シリーズ2作目は駄作となりがちです。

 

馬場さんがそうした難しさに正面から向き合ったからこそ、この「11ぴきのねことあほうどり」は完成までに5年もかかったのでしょう。

こぐま社の創業者である佐藤英和さんと馬場さんは何度も打ち合わせを繰り返し、悩み抜き、苦しみ抜いて、もう「11ぴき」はやめようという話にまでなったそうです。

 

そうした日々の末に馬場さんは「だんだん大きくなる」というアイディアを閃き、数を数えられないあほうどりと組み合わせて、あの越えがたい「11ぴきのねこ」のラストシーンに勝るとも劣らぬクライマックスに辿り着いたのです。

うちの息子も、「11わあっ」のシーンが大好きです(このページを書き写して壁に飾るほど)。

 

どうせ子ども用の本なんだから」そこまで悩まなくてもいいじゃない、という大人もいるでしょう。

 

けれど、馬場さんは子どもの本だから「こそ」、一切の手抜きや妥協を認められなかったのです。

大人相手なら騙せるんだけどねえ。子どもは騙せないからなあ

生前、馬場さんはそんな風に語られていたそうです。

 

子どもの本を作ること、子どもを楽しませることの難しさを誰よりも知っていた馬場さん。

その一方で、本当に面白いものを作れば、子どもは必ずそれを選んでくれるのだということも知っていた馬場さん。

 

誕生から50年経った今でも、馬場さんが生み出した「11ぴき」は子どもに支持され続けています。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

あほうどりの無警戒度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「11ぴきのねことあほうどり

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