【絵本の紹介】「変なお茶会」【223冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介する絵本は「永遠の天才少年(村上春樹・談)」佐々木マキさんによる「変なお茶会」です。

作・絵:佐々木マキ

出版社:絵本館

発行日:1979年9月

 

タイトルそのまんま、本当に変な絵本です。

物語の筋はナンセンスそのもの、登場するキャラクターたちはどれもみんな嬉しくなるくらいエキセントリック。

そして、そんな奇妙な人々を乗せる、これまた風変りな乗り物の数々。

 

もともとは雑誌「母の友」1979年1月号の付録絵本だったそうですが、単行本化への要望が多く寄せられ、めでたく一冊の絵本となったわけです。

ヨコハマ」に住む立派なヒゲの紳士のもとに届いた招待状。

文面は古めかしく、そしてところどころ間違った日本語。

 

読んでもなんだか意味不明なんですが、これは毎年恒例の催し物への招待状らしい。

Mr.カメタロウは「電気自転車」で「トランスバール」(トランシルバニア?)へ赴きます。

 

お茶会に招かれた他の面々は、「ライプールの理髪師スミラ君」「ナントの公証人デュブウ夫妻」「アントワープの靴屋ホッホ兄弟」「ダブリンの外科医ワイルド先生」「デンバーの勇敢なお針子ミニー嬢」などなど。

彼らはそれぞれゾウや飛行「器」、馬気球(?)、ローラースケートなどの珍妙な乗り物に乗って目的地に向かいます。

わけわかんない内容ながら、子どもたちにも人気なのは、この個性豊かな乗り物絵が最高に楽しいからでしょう。

こうして我々はトランスバールの城の前で 再会を喜びおうたのだ

古風な文章が怪しさを増すのに一役買っています。

 

集まってきた彼らは暗い森の先にあるテーブルへと案内されます。

そこに月が昇り、岩山から「天然のココア」が湧きだします。

彼らはそのココアを堪能し、また来年を楽しみに帰路につきます。

 

★      ★      ★

 

作品に登場するおかしな乗り物は、明治の古いマッチに描かれた図案が元ネタのようです。

下島正夫の「マッチラベル」に収録されています。

 

こんな乗り物に乗ってみたい

こんなのがあったらなあ

などと、乗り物を空想する楽しさは、子どもの頃に誰もが経験したのではないでしょうか。

 

動力とか構造とか、子どもなりに色々と考えるんですが、今思えばああいうのは多少無理がある方が面白いような気がします。

 

また、山からココアが湧くというアイディアは、稲垣足穂さんの短編幻想小説「ココア山奇談」がモチーフになっているそうです。

私はこの小説を知らなかったので、どんな物語かと読んでみたのですが、全然この絵本とは違う話でした。

 

やっぱりこんな変な話は、佐々木さんにしか描けないように思います。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

乗ってみたいのと、天然ココア飲んでみたい度:☆☆☆☆☆

 

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「逃げるは恥だが・・・・・・」【産後うつの対処法】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

これまで、色々と自分自身の育児について書いてきました。

読んで下さった方はわかるでしょうけれど、私と妻は育児に対し、結構高い理想を持っています。

ゆえに、ハードです。

 

子どもが生まれる前に夫婦でいくつかの基本方針を決めたのですが、そのほんの一例として、

 

・絵本の読み聞かせは、いつでも、何冊でも、何回繰り返しても、子どもが満足するまで。

・いつも傍にいて、ずっと話しかけてあげる。

・怒らない・イライラしない・急かさない。

・否定的な言葉を聞かせない。

・子どもがやりたがることは可能な限りやらせてあげる。

 

などがありました。

で、これを100%実践できているかと言えば、もちろんそんなわけはなく、まあいいとこ70%程度でしょう。

私は楽観的で落ち込まない性格ですので、「ま、少しずつできるようになればいいだろ」と考えることができますが、妻の方は(本人は否定してますが)完璧主義的なところがあり、できない自分(と私)を許せないことがあります。

 

息子が生まれてから、昼夜問わない授乳による疲労と睡眠不足もあり、妻は気分の波が激しくなり、塞ぎ込んだりイライラしたりすることが増えました。

 

そんな精神状態で上記のような「理想的な親」として振る舞えるはずもなく、息子に対してカッとなって叱ってしまったり、遊びに十分付き合ってやれなかったり、そのせいで余計に自己嫌悪に陥るという悪循環。

 

病院で診断されたわけではないのですが、妻はいわゆる「産後うつ」状態でした。

 

産後うつについては様々な研究が続いていますが、「マタニティブルー」とは分けられるようです。

出産直後、体調変化やホルモンバランスの乱れなどで精神不安定に陥るのがマタニティブルー。

これは一過性のものである場合が多いようです。

 

出産から数週間後〜数か月後に発症するのが産後うつ。

育児に対する不安、重圧、孤独、さらに肉体的疲労などが原因となって引き起こされる病です。

マタニティブルーと違って怖いのは、長期化する可能性があること。

 

上で、妻は産後うつ「でした」と過去形で書いていますが、実を言うといまだに完治したわけではありません。

今でも、時々は爆発しそうな瞬間があるそうです。

 

やっと最近になって「自分はおかしかった」と自覚できるようになったところです。

私たちは周囲に頼りにできる親族もいませんし、そもそも頼る気もありませんでした。

この「何もかも全部自分たちでやろう」という気持ちが、そもそも危ないのですが……。

 

核家族化が進んだ現代、妻が頼れるのは夫だけ……という家庭も多いでしょう。

ですから仕事が忙しくとも、夫はできる限り妻をフォローしなくてはなりません。

 

でも、男だってそう強いわけではありません。

ずっとイライラしている妻に不満をぶつけられる日々に疲れて、今度は夫の方が「つらい」「死にたい」などと言い出すケースもあるようです。

 

こうなると夫婦共倒れの危険すらあります。

夫婦が倒れたら子どもも倒れてしまいます。

 

かくいう私も、妻に負の感情をぶつけられ続けた一人です。

「仕事から帰ったら、家に不機嫌な人がいる」という状況がどれだけ辛いものか、よくわかります。

 

けれども、泣き言を言うのはプライドが許さないし、そもそもこういう状況も覚悟して子どもを持とうと決心したわけだし、私は努めて明るく元気に振る舞いました。

特に、子どもに対して不機嫌な態度を取ったことは(ほとんど)ありませんでした。

 

……しかし、体は正直です。

息子が1歳半ごろに、私は甲状腺機能亢進症という病気に罹り、体重が10キロ以上激減しました。

当時はあんまり忙しくて、人から指摘されるまで自分の異常に気付きませんでした。

 

もちろん、これが育児や妻のストレスが原因かどうかはわかりません。

しかし、妻の産後うつが収まってくると、私の病気も完治したのですから、おそらく関係してるんだろうと思います。

 

以上のような経験を踏まえて、「産後うつの妻に対し、夫はどうフォローすべきか」という問題について、私なりに考えた方法は、

妻の機嫌が悪くなってきたら、夫はとにかく子どもを連れて家から脱出する

というものです。

三十六計逃げるに如かず。

 

家事を手伝うとか、話を聞いてあげるとか、色々と方法はありますし、それでうまく行くなら問題はないですが、そもそも育児に疲れた女性が一番に望むことは「一人になりたい」だそうです。

一人にしてあげましょう。

 

夫の方は、普段仕事しているなら、子どもといる時間は妻より少ないだろうし、たまに一日中子どもと一緒にいても、そこまで精神的に参ることも少ないと思います。

だから夫は常に子どもを連れて即座に出かけられる準備(私は「家出セット」と呼んでいます)を整えておき、妻の様子を見計らって外出(逃走)することを薦めます。

 

こうすれば、夫の方も妻のイライラをぶつけられることもなく、夫婦仲も破壊されず、子どもに悪影響を与えることもないというわけです。

 

目下のところ私が望むのは、幼児を連れて一日中遊べる無料の施設を増やしてほしいということです。

 

 

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【絵本の紹介】「あな」【222冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は日本を代表する詩人・谷川俊太郎さんとイラストレーターの和田誠さんのタッグによる、一癖も二癖もある絵本「あな」を紹介します。

作:谷川俊太郎

絵:和田誠

出版社:福音館書店

発行日:1983年3月5日(こどものとも傑作集)

 

谷川さんに関しては、知らない人の方が少ないでしょう。

現代日本において「詩人」という肩書を持ち、詩を「生業」としている人物と言えば、もう彼以外には思いつけないくらいです。

 

絵本との係わりも深く、「フレデリック」などの海外絵本の翻訳の他、自身が文を担当した作品も多くあります。

そして、3回にわたる結婚・離婚のうち、最初の妻は「かばくん」などを手掛けた絵本作家・岸田衿子さん。

そして3人目の妻は「100万回生きたねこ」の作者・佐野洋子さんなのですね。

 

≫絵本の紹介「フレデリック」

≫絵本の紹介「かばくん」

≫絵本の紹介「100万回生きたねこ」

 

絵を担当する和田さんも、これまた有名なイラストレーター。

何かと話題の雑誌「週刊文春」の表紙は40年にわたって彼が担当しています。

イラストだけでなく、エッセイや映画など、幅広い分野でその才能を発揮しています。

 

そんな二人が作った絵本ですから、一筋縄では行きません。

まず、横に見て縦開き、という構成からして異色です。

 

見開き画面の下3分の2を茶一色として、地面の断面図を描いているのですね。

にちようびの あさ、なにも することがなかったので、ひろしは あなを ほりはじめた

なんで? とも思うし、そういうこともあるか、とも思ったり。

 

ひろし少年は淡々とした表情で、スコップを手に深い穴を掘っていきます。

母親、妹、友だち(広島カープファン)、父親が次々とやってきて色んなことを言いますが、ひろしは取り合わず、黙々と掘り続けます。

やがて自分がすっぽり地面の中に隠れるくらいの深さに到達したとき、ひろしはスコップを置き、初めて満足げな微笑を浮かべます。

これは ぼくの あなだ

 

母親たちがまた一通り登場して、短い会話を交わします。

ひろしは穴の中に座り続け、日が暮れるころに穴から出てきます。

これは ぼくの あなだ

 

もう一度そう思ったひろしは、スコップを使って今度は穴を埋めにかかります。

最後は、扉絵と同じく、元の平らな地面のカットで終わります。

 

★      ★      ★

 

全編通して同じ横視点の構図で物語は進行しますが、地中を掘り進む芋虫や空の色など、随所の変化を楽しめます。

また、一見するとよくわからなかった表紙の絵が、内容を読むことで、穴の中から空を見上げるひろしの視点なのだと判明します。

裏表紙は外から覗いた穴の中です。

 

さて、内容については例によって様々な解釈が可能です。

 

「穴を掘る」理由は、おそらくはひろし本人にもわかっていない(訳知り顔の父親にも、たぶんわかっていない)。

その割に、ひろしは汗をかき、手に豆ができるほどに頑張ってスコップを振るいます。

 

普通に考えれば、彼の労力の先には「無」しかない。

穴を掘ることで報酬がもらえるわけでも、誰かに認められるわけでもない。

でも、それ故にひろしの努力は純粋です。

その純粋さを守るために、ひろしは妹の手伝いや「おいけに しようよ」という提案を拒絶します。

さらには、最後に穴を埋めることで、ひろしの「無償の行為」は完全化されるのです。

 

現代社会では、「無」に向かっての行為など理解されないばかりか、下手をすると憎悪の対象にすらなります。

「コスパ」という言葉が表しているように、どんな行為にも「費用対効果」をまず考えることが常識となっているからです。

 

それ自体は別に悪いことではありませんが、あまりにもそうした思考に慣れすぎると、自分の中にある純粋な衝動を感じ取れなくなります。

「何の役に立つのか」という疑問を立てる前にただ行動する、その純粋さの先にあるものが、

あなのなかから みる そらは、いつもより もっと あおく もっと たかく おもえた

という光景です。

 

これは、見ようと思って見られるものではありません。

見返りや期待や打算を飛び越えて行動した者だけが辿り着くことのできる視座なのです。

 

これは、子育てに関しても当てはまることです。

子どもの教育に熱心な親は大勢いますが、彼らは将来的に子どもが思うように育たなかった時、後悔したり恨んだりしないでしょうか。

 

けれども、本当に見返りを期待せずに子どものために行動した者は、最終的には子どもに左右されることのない、自分の人生を手に入れるはずだと思うのです。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

穴だけに深い度:☆☆☆☆☆

 

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