【絵本の紹介】「ぼく、だんごむし」【235冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

子どもの頃、虫は好きでしたか?

カブトムシ、クワガタ、セミ、トンボ……。

 

そういう大御所に比べれば目立たないけれど、子どもに人気のある虫と言えば、だんごむしではないでしょうか。

割と簡単に発見できて、観察してて面白い。

見た目もあんまり気持ち悪くなくて、触りやすいし。

 

しかし、その生態については意外と知られていません。

かくいう私も、この絵本を読んで初めて知ったことがたくさんありました。

ぼく、だんごむし」です。

作:得田之久

絵:たかはしきよし

出版社:福音館書店

発行日:2005年4月15日(かがくのとも傑作)

 

作者の得田さんは昆虫少年として幼児期を過ごし、大学時代に昆虫を描き始め、虫に関する絵本を多数発表しています。

どれも深みがあって、大人でも「へえ」と面白く読める作品ばかりです。

 

得田さんは自分でも絵を描きますが、この「ぼく、だんごむし」では、たかはしさんに絵を任せています。

色鮮やかなコラージュで描かれた虫の絵は程よくリアルで美しく、虫嫌いの人にも読み易いと思います。

文はだんごむしくんの一人称で、自己紹介的に語られます。

林や草むらより、町中のほうが棲みやすいというだんごむし。

 

その理由は、彼らのえさ。

枯れた植物や虫の死骸に加え、人間の出す新聞紙や段ボール、コンクリートや石まで食べるのです。

だから、人間の暮らしているところのほうが棲みよいのですね。

敵に襲われたら、その名の通り、体をボールみたいに丸めて身を守ります。

これは有名。

 

でも、脱皮した抜け殻を食べたり、白っぽい赤ちゃんを産むことなどはあまり知られていないのではないでしょうか。

この図はちょっとキモチワルイですが。

そして、意外と盲点なのが、だんごむしが実は昆虫ではないということ。

そう言われたら、足の数が違いますね。

 

なんと、彼らは「かにや えびの なかま」の甲殻類。

水にも強いのです。

 

★      ★      ★

 

いかに自分が何にも知らないかを痛感する一冊でした。

だんごむしのあっぱれな食欲、生命力。

 

単に面白がって虫遊びをするところで終わる子どもと、飽くなき探究心を発揮して、深い科学知識を求める子どもの分水嶺はどこにあるのでしょう。

これは結構大事なところのような気がします。

 

ある程度のところで「まあいいか」と納得するか、とことん調べて、考え抜くか。

わからないことや疑問に感じたことを、そのままにしておいて平気な人と、そうでない人。

そういう姿勢の違いが、その後の人生の様々な場面で、大きな差になるのかもしれません。

 

「すぐに調べる」ことが習慣となっているかどうか、そして「調べる方法」を知っているかどうか。

子どものうちに、「調べて納得する」経験を何度も積んでおくことは、非常に重要だと思います。

 

それをサポートする周囲の大人の役割も大きいでしょう。

子どもの知識欲や探究心に火がついている状態を見逃さず、的確に知的な成功体験をさせてやることが求められます。

 

我が身を振り返ればわかると思いますが、子どもが内面にそうした炎を宿す時間はとても短いものです。

その「旬」を逃してしまえば、もう一度点火することは難しくなります。

けれども、どの子どもにも一度は必ず、その「旬」は訪れるはずです。

 

どんなに忙しくとも、子どもの発する質問には真摯に答えてやりたいものです。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

目からウロコ度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「はるにれ」【224冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

たまには写真絵本の紹介を。

1979年に「こどものとも」に発表された「はるにれ」です。

写真:姉崎一馬

出版社:福音館書店

発行日:1981年11月10日

 

絵本そのものが、とても自由度の高いメディアではありますが、写真「絵本」とは何ぞや、と問われると定義づけに困ってしまいます。

文があって、物語性があって、絵の代わりに写真が用いられているものだけが写真絵本かといえば、決してそうではない。

この「はるにれ」は、全編通してテキストなし、イラストなし、最初から最後まで全部写真。

こういう写真絵本もあるのです。

 

それって「写真集」じゃないの。

と言われてしまうと、そうではない、とは言いにくい。

でも手に取って読んでみると、やっぱりこれは「絵本」なのだと思えてくるのですね。

北海道の草原に一本だけ立っている樹齢140年のはるにれの巨木。

 

カメラは近づいたり遠ざかったりしながら、ひたすらにこのはるにれを撮り続けます。

四季を通じて、表情を変えるはるにれ。

冬の寒さに耐え、雪原にすっくと立ち、春の日差しを浴び、夏には緑を生い繁らせ……。

深いもやの中に霞むカットや、満月を頭上に抱く幻想的なカット。

 

見続けていると、ファインダー越しにはるにれが語りかけてくるかのようです。

 

★      ★      ★

 

何故これが「絵本」なのか。

それはここには「物語」があるからだと思います。

 

この作品から自然の雄大さを感じるか、四季の美しさを感じるか、生命の強靭さを感じるかは、人それぞれでしょう。

その「それぞれ」の感受性に訴えかけるのは、この絵本に内包されている物語です。

 

一本の木を、ただ見ただけでは、意識にも上らないこと。

同じ木を、四季を通じて見続けることで、それを写真家の目を通して見ることで、我々の概念は新たに書き換えを要請されます。

 

子どもは、ある絵本を読む前と読んだ後とで、微妙に顔つきが変化していることがあります。

それは自身の概念が書き換えられ、自己変容を遂げていることの証です。

「物語」がそうさせるのです。

 

これはストーリーがあるとかないとかいう問題ではありません。

図鑑を読んでいたって、子どもはその瑞々しい感性でそこから壮大なスケールの物語を読み取ることがあります。

子どもは知識を増やすことに興奮しているのではありません。

自分を成長変化させる「物語」に出会えたことに興奮しているのです。

 

作者の姉崎さんは、日本の森や野生の樹木を撮り続けている写真家さんです。

この絵本の主人公であるはるにれは北海道中川郡豊頃町にあり、姉崎さんは4年かけてこの巨木の写真を撮影したそうです。

 

絵本の発行によって有名になり、現在では町のシンボルとなっているそうです。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆(文字がない分、読み聞かせるのは意外と難しい気もします)

自然への畏敬の念度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「はじめてのふゆ」【208冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

真冬の寒さが続いていますね。

都会で暮らす人間にとっては「寒い」で済む話かもしれませんが、自然の中に入り込めば、冬は生死に係わる過酷な季節です。

 

動物たちは様々な備えをし、時には驚くような知恵をもって、この季節を乗り越えます。

生命のもろさ・儚さと同時に、意外なほどの力強さを、彼らの姿から感じることができます。

 

今回紹介するのは「はじめてのふゆ」です。

作・絵:ロブ・ルイス

訳:ふなとよしこ

出版社:ほるぷ出版

発行日:1992年11月30日

 

可愛い絵で、あたたかみのある落ち着いた色使いが魅力的です。

生まれてすぐに母親を亡くし、「ちいさいのに ひとりぼっち」の、じねずみのヘンリエッタ。

孤独な設定ですが、ヘンリエッタからは悲壮感のようなものは感じられません。

 

冬を体験したことのないヘンリエッタは、秋の紅葉の美しさを楽しんでいます。

そんなヘンリエッタを心配して、仲間たちは冬に備えて食べ物を集めておくように忠告します。

 

ヘンリエッタは苦労して貯蔵庫を掘り、木の実や草の実を集め、安心して眠ります。

しかし雨が降ってくると食べ物置き場は浸水被害に遭い、せっかくの食べ物が全部流れてしまいます。

 

ヘンリエッタは雨漏りを直し、もう一度食べ物を集めてきます。

ところが、今度は虫たちが食べ物を食べてしまいます。

くたびれ果てたヘンリエッタを可哀そうに思った仲間たちが、食べ物集めを手伝ってくれます。

嬉しくなったヘンリエッタは、仲間たちとパーティーを開きます。

 

が、調子に乗って食べ過ぎたのか、またも食べ物は空っぽに。

外には雪が降り、もう木の実も草の実も残っていません。

どうしようもなく、ヘンリエッタは眠りにつきます。

 

そして目が覚めてみると……。

 

★      ★      ★

 

最後は「なんじゃそりゃ」と突っ込みたくなるような、突然のハッピーエンド。

でも、それがいい。

 

健気に苦労する身寄りのないヘンリエッタを、子どもは内心で応援し続けます。

中途半端な終わり方では、子どもの不安や心配を完全に吹き飛ばすことはできません。

大人には肩透かしでも、これくらい強引な方が子どもは「よかった」と安心できるのです。

 

「はじめてのふゆ」とは、幼い子どもがやがて必ず体験するであろう、人生の辛い時期、悲しい出来事を意味しています。

そんな時、どう対処すればよいのか、単一のマニュアルは存在しません。

 

でも、大人が子どもに伝えるべきことはひとつです。

それは「必ず、最後には幸せになれる」という無条件で力強いメッセージです。

 

生きて行く上で重要な意味を持つその確信は、特に幼い頃の物語体験によって培われるものです。

 

それにしても、ヘンリエッタの住居の素敵なこと。

よく見ると椅子は空き缶だし、暖炉にはクリップ、窓格子にはマッチ棒が使われていて、飾り棚にはコインが並んでいます。

 

これは亡くなったお母さんが作ったインテリアでしょうか。

近くに人間が住んでいることを思わせる、作者の遊び心です。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

ホームインテリアの趣味の良さ度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「ヒッコリーのきのみ」【201冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今年の秋は雨ばっかりでしたね。

あまり外にも出かけられないうちにだんだん寒くなってきて、もう秋が終わってしまう感が。

秋っぽい絵本を紹介できるのも今のうちかもしれません。

 

というわけで、今回は「ヒッコリーのきのみ」を取り上げます。

作:香山美子

絵:柿本幸造

出版社:ひさかたチャイルド

発行日:1985年11月

 

コラージュかと思うような、ふんわりとした毛束感のあるリスの絵。

そして暖かみのある赤。

 

柿本さんの絵は優しさと温もりのある色使いが魅力ですが、この赤や茶は、やっぱり「秋」の物語にこそ合いますね。

 

子りすのバビーが、ヒッコリーの木と交わした約束とは。

 

作者の香山さんは「シートン動物記」をもとにこのお話を書いたそうです。

自然界のルールの不思議さ、尊さ、強さ。

そんなものを感じさせてくれる、なかなかに深い話です。

 

森へヒッコリーの木の実を拾いに行ったバビー。

虫食いの実は避けて、大きい実、小さい実を拾います。

持ち帰った実を、お母さんといっしょに食べます。

残った実は、冬に備えて、地面の中に埋めて隠しておくことにします。

隠し場所をちゃんと覚えていられるか心配するバビーに、お母さんは、

それで いいのよ

と言います。

 

冬が過ぎ、春が来ます。

森に行くと、バビーが隠して忘れてしまったヒッコリーの実から、小さな芽が出ていたのでした。

お母さんは、

それが ヒッコリーの きと りすの やくそく

なのだと、バビーに教えます。

 

この小さな芽が、大きい木に育ち、そしてまたたくさんの実をつけてくれるのです。

 

★      ★      ★

 

柿本さんのイラストの、愛のあること。

バビーの膨らんだ頬とか、毛虫とか、可愛くないものが存在しない。

 

食べ物を地中に隠しておいて、忘れてしまうリスの習性を、単純に「馬鹿だなあ」と思っていましたが、この話を読んで、そこに込められた深い意味を知りました。

 

実際、クルミなどの中には、リスに運ばれることを前提としている種類もあるそうです。

共生とか共存とか、そういうものは本当は自然界にしかなくて、私たち人間が口にしても空疎なだけだと感じてしまいます。

 

自然の不思議さ、強さ、美しさを見ていると、いくら物質文明の中に生きている私たちでも、その背後にある叡智のようなものを感じずにはいられません。

その叡智こそが「神」と呼ばれるものかもしれません。

 

そう考えてみると、自然界の中で人間だけが、この叡智から離れようとしているのがわかります。

しかし、いくら本能を失おうとも、人間もまた自然の一部である事実は変わりません。

子どもを見ていれば、それがよくわかります。

 

人間が自然を破壊し、物質文明を突き進むことに、様々なところから警鐘を鳴らす人々がいます。

多かれ少なかれ、みんなが不安を抱いていることは確かでしょう。

 

私は別に、原始の生活に戻るべきだとは思いません。

戻ろうとしても戻れやしませんし。

ただ、考えること(それは人間にしかできないことです)を放棄すべきではないし、具体的な行動を惜しむべきではないと思います。

「このままの道」を進んでいくと、どうもやばいな、と感じるとすれば、それは人間に残された最後の「叡智」の声なのかもしれません。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

虫食い擬音の独特度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「14ひきのかぼちゃ」【194冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

もうすぐハロウィン。

すっかり国民的行事として定着した感がありますが、私が子どものころは、友だちの誰も知らないようなお祭りでした。

もともとは秋の収穫を祝う行事のはずなんですが、いつの間にかコスプレ祭りと認識されている気がします。

 

私がハロウィンを知っていたのは、スヌーピーの漫画『ピーナッツ』を読んでいたからで、そこにライナスがハロウィンの日にやってくる「かぼちゃ大王」なる存在を信じて、毎回かぼちゃ畑で待ちぼうけを食わされる、というお約束的エピソードがあるんですね。

アメリカではクリスマスと並んで子どもたちが楽しみにしているイベントのようです。

 

さて、今回紹介するのは「14ひきのかぼちゃ」です。

作・絵:いわむらかずお

出版社:童心社

発行日:1997年4月25日

 

突っ込まれる前に言っておきますが、かぼちゃ以外にハロウィンとの関連はありません。

スヌーピーも関係ありません。

無理矢理ハロウィンに繋げたかっただけ。

 

さて、久々に「14ひき」シリーズの登場となりました。

海外でも人気の高いいわむらさんの絵本。

過去記事と合わせてお読みください。

 

≫絵本の紹介「14ひきのひっこし」

≫絵本の紹介「14ひきのぴくにっく」

 

毎回美しい自然が描かれるシリーズですが、今回はおじいちゃんのかぼちゃの種を、みんなで植えて育てるというストーリー。

 

これは かぼちゃの たね、いのちの つぶだよ

と、大切そうに箱から種を取り出すおじいちゃんが印象的です。

種から芽が出るシーン。

まばゆい命の光が輝いているかのよう。

かぼちゃに「かぼちゃん」と名前を付け、みんなで世話をします。

嵐の日には、ずぶぬれになって守ります。

 

激しい嵐の場面の後には、静かな月夜の場面。

ゆっくりと育まれる命を感じさせます。

そしてついに実った、大きくて立派なかぼちゃ。

 

中身をくりぬいて、ずらりと並ぶかぼちゃ料理の数々。

苦労があったからこそ、収穫の喜びは大きい。

 

★      ★      ★

 

誰もが子どものころ、一度くらいは「種を植えてみた」経験があるのではないでしょうか。

私も公園に色んな種を埋めましたが、もちろん芽吹いたことは一度もありませんでした。

 

ただ埋めればいいってものじゃないですからね。

ちゃんとした知識と、そして根気が必要です。

私はそのどちらもない子どもで、ただ好奇心だけがありました。

 

でも、その好奇心がとても大切なのです。

その最初の衝動を大事に導き、真理に到達する喜びを与えてやるのが大人の務めだと思います。

正しく満たされた好奇心は、主体性につながります。

いずれ学校の授業でやるにしても、そこに主体性がなければ、それはただ言われたことをやっただけになります。

それでは生命の不思議さとか尊さを、心の深い部分に感じることはできないでしょう。

 

いずれ息子がそういうことに興味を持ちだした時に備えて、私も色々と勉強しておかなくてはと思っています。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆

おいしそう度:☆☆☆☆☆

 

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