【絵本の紹介】「サンタクロースと小人たち」【353冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

北欧の国フィンランドで、34歳の女性首相が就任しましたね。

閣僚の半分以上が女性、平均年齢47歳という、これぞ先進国という布陣。

 

やっぱり期待感が違いますよね。

日本の閣僚集合写真なんか見ても、狐狸妖怪の集会みたいでフレッシュさというものがないですものね。

 

フィンランドと言えば教育水準の高さが今や世界トップクラスであることでも有名で、私も大いに興味を持っています。

学費は無料、校風は自由、受験や宿題で生徒を縛るのではなく、主体的に学ぶことを重視する教育。

いちいち頷きたくなることばかりです。

こうやってちゃんと正しい方向で結果を出している国があるんだから、日本も学べばいいのに、ねえ……。

 

ま、もっともこうした教育で優れた人材がどんどん出てきてしまうと、既存の政府機関や支配階級にいる人々が残らず淘汰されてしまうことは火を見るより明らかですから、熱心になれないのも無理ないかもしれませんけどね。

 

教育について書き出すと熱くなってしまうので(そして日本の現状に嫌気が差してしまうので)、さっさと絵本紹介に移りましょう。

フィンランドで他にも有名なものと言えばオーロラ、そしてもちろんサンタクロース。

今回はフィンランドのクリスマス絵本「サンタクロースと小人たち」を紹介します。

作・絵:マウリ・クンナス

訳:稲垣晴美

出版社:偕成社

発行日:1982年

 

この絵本はサンタクロースの普段の生活、仕事ぶりを研究対象的に描いた作品です。

絵も話も非常に細かく、情報量が多いので、じっくりと読むとなかなか時間がかかります。

 

フィンランドの北外れ「コルバトントリ」山のふもとに、サンタクロースの村があります。

住んでいるのはサンタさんだけではなく、彼の奥さんと、何百人もの小人たちやトナカイ。

 

小人たちは世界中の子どもたちへプレゼントを用意する技能集団。

会社というのもイメージが違うし、昔の日本の大店とも違う。

村には子どものための学校もあって、将来的にサンタクロースを支えるための勉強をしているのです。

プレゼントを作ったり、地理を学んだり。

おもちゃ、印刷物、人形、楽器……。

プレゼントを作り、保管し、時には夏休みを取ったりしながら、クリスマスに備えます。

 

世界中の子どもたちの調査、プレゼントの梱包、ただプレゼントを配るという仕事にも、これだけたくさんの人が関わっていることを知ることができます。

いよいよクリスマスイブが来ます。

トナカイとそりという伝統的スタイルは崩しませんが、実は現地までは飛行機に乗っている様子。

小人たちも手分けして、一晩で世界中を回ります。

どう考えても時間が足りないのですが、そこは「クリスマスのまほう」ということらしいです。

 

ちゃんと行先に日本も含まれています。

全てのプレゼントを配り終えると、サンタさんと小人たちは村に帰り、自分たちのクリスマスを盛大に祝います。

 

★      ★      ★

 

サンタクロースの出身地はフィンランドの他にグリーンランド説や北極説もあるようですが、いずれにしましても寒い中大変だろうと思います。

しかしあの寒さがあるからこそ、クリスマスの灯が映えるとも言えます。

都会でのクリスマスも悪くはないですが、あの情緒は雪国特有のものですね。

 

いやあ、フィンランド、いいですね。

建築、家具、それに音楽も素敵だし、自然は豊かだし、前述した通り教育や福祉面でも高水準だし。

国民幸福度連続1位は伊達じゃない(ちなみに日本は58位で、年々順位を下げております。さもありなん)。

 

おまけに絵本まで可愛いなんて……。

本気で叶うなら移住して、息子にはフィンランドの義務教育を受けさせてやりたいです。

 

寒いのは苦手だけど。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

ヒゲだらけ度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「サンタクロースと小人たち

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

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【絵本の紹介】「ちいさいしょうぼうじどうしゃ」【281冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は古典名作シリーズ「スモールさんの絵本」より、「ちいさいしょうぼうじどうしゃ」を紹介します。

作・絵:ロイス・レンスキー

訳:渡辺茂男

出版社:福音館書店

発行日:1970年11月1日

 

主人公「スモールさん」が毎回色んな乗り物に乗ったり、色んな仕事に携わる様子を、簡潔で明快な文章と絵で描いたこのシリーズは、作者のレンスキーさんが息子のステファンの興味を満たすために作ったものだそうです。

 

だから、これらの作品はどれも、子どもの「あれ、なに?」「どうして?」に徹底的に真摯に答える構成になっています。

大人が読むと素っ気ない、あるいは少々くどいようにすら感じるテキストは、子どもの疑問の一つ一つを無視しない態度から来ています。

 

≫絵本の紹介「ちいさいじどうしゃ」

≫絵本の紹介「スモールさんののうじょう」

 

さて、今回はスモールさんはみんなの憧れ、消防士になって大活躍します。

ポンプ車の内容を紹介するカットはまるで図鑑。

子どもたちはこういうページが大好きです。

 

もちろん古い作品ですから、色々とレトロ感あります。

現代の消防車との違いを確認してみると面白いかもしれません。

この、滑り棒とか。

私も知らなかったもので「へえー」となりました。

 

ただ、今ではもう使われていないようです。

「一人ずつしか降りれない」「階段の方が早い」という切ない理由。

旧式ではあるものの、ポンプ車の機能は克明に描かれています。

スモールさんの迅速な指揮のもと、火は消され、そしてお約束の取り残された子どもを救出する場面も。

ほうすい やめえ!」と叫ぶスモールさんを、子どもたちは必ず真似たくなるでしょう。

 

★      ★      ★

 

スモールさんの絵本」は、復刻されてカラー版になったものと、この「ちいさいしょうぼうじどうしゃ」のように、当時のままの2色刷で刊行されているものがあります。

 

消防車の古さも加わって、地味で古い絵本に思えますが、子どもたちの受けは今も昔も変わりません。

ここから得られる知識が古いものであることも、何ら問題ではありません。

別にこの絵本の知識を一生持って行くわけではないですし。

 

大切なのは子どもたちの「知りたい」を満足させてやることであり、その最適な仕方について、この作者ほどに長じた人物は稀有な存在なのです。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

犬の活躍度:☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ちいさいしょうぼうじどうしゃ

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【絵本の紹介】「ペレのあたらしいふく」【244冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回はスウェーデンの古典名作絵本「ペレのあたらしいふく」を紹介しましょう。

作・絵:エリザ・ベスコフ

訳:小野寺百合子

出版社:福音館書店

発行日:1976年2月3日

 

古典も古典、1912年に描かれた作品です。

作者のベスコフさんは子どもの本に対するスウェーデン最高賞ニルス・ホルゲション賞を受賞されています。

 

今もって色あせない美しい絵と、仕事・労働に対する普遍的な内容で、時代も国境も超えて、現在も刊行され続けている絵本です。

 

羊飼いの少年ペレは、自分だけの羊を一匹持っていて、世話していました。

成長と共に上着が小さくなってきたペレは、羊の毛を刈り取り、それで新しい服を作ろうと考えます。

そこからペレはさまざまな大人のところへ出向き、服を作るために必要な仕事を頼みます。

大人たちはその代わりに、ペレに何がしかの仕事を依頼します。

 

こうしてペレは幼いながらも大人たちと契約を交わし、頼まれた仕事をし、対価として毛を梳いてもらったり、それを糸に紡いでもらったり、染粉を手に入れたりします。

最後にペレは仕立て屋さんに服を仕立ててもらいます。

出来上がった服にそでを通したペレは嬉しそうな表情で羊にお礼を言います。

 

★      ★      ★

 

スウェーデンの田園風景の美しいこと。

 

現代の子どもたちから見れば、ペレは随分と大人びています。

もちろんそこは時代でしょうけど、たった一着の服を手に入れるためのペレの行動力たるや。

一人で舟をこいで買い物には行くし、糸を染めるのは自分でやっちゃうし。

 

それだけに新しい服は彼にとって大変に価値あるものになるし、きっと大事にするはずです。

 

「労働」とは人間的な行為だとされています。

ということは、動物がエサを取ったり巣を作ったりするのは「労働」とは呼ばないということです。

 

何が違うかを考えてみると、人間の労働は本質的に利他的なものであるということが言えます。

他の誰かのためにする仕事が「労働」になるのではないでしょうか。

 

もしペレが、刈り取った毛を自分で梳いて糸に紡いで、布を織って服を仕立てたとすれば(そのために使用する道具も全部自分が作ったとすれば)、それは「労働」ではないのです。

それでは経済は回らないからです。

 

ペレが服を手に入れるためには、その仕事を誰かにやってもらわなければなりません。

その代わりに、彼は他の誰かの仕事を請け負うのです。

何だか迂遠な気がしますが、実際にはそうして分業したほうが効率はいいのです。

 

子どもがお手伝いをする時の最初の対価は「ありがとう」という感謝の言葉や、それに付随する承認の感情です。

それもまた、誰かから贈られることでしか手に入らないものです。

 

たとえ「自分のために働いている」つもりでも、人間である以上、そこには必ず利他的な行為が含まれており、それが労働ということなのでしょう。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

仕立て屋の子どもたちの可愛さ度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ペレのあたらしいふく

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【絵本の紹介】「スモールさんののうじょう」【218冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

若者が農業・漁業・林業などに興味を持たない時代が続き(かく言う私もその世代ですが)、人手不足が深刻になっています。

しかし、華やかな職業ばかりに人気が集中した時代は(現実の生活が苦しくなるにつれ)そろそろ終わりを告げ、「農業をやりたい」という若い人が、少しずつ出てきているらしいです。

 

凄まじい早さで盛衰を繰り返すネット時代の仕事に疲れ、文字通り地に足を付けた仕事をやって充実感を得たいという願望は理解できます。

でもまあ、実際にやってみるとなると、そりゃあもう大変な仕事でしょう。

いくら農業機械が進化したといっても。

 

それに、現実的にはお金の問題、家族の問題、周辺環境の問題、後継者の問題などが山積しています。

よほどの覚悟がないといい加減な気持ちではできません。

 

けれど、やっぱり必要な仕事です。

地方創生とかなんとか言ってますけど、政治家たちは誰も真面目に取り組んでいるようには思えません。

 

さて、今回紹介するのはそんな業界の頼もしい味方「スモールさんののうじょう」です。

作・絵:ロイス・レンスキー

訳:渡辺茂男

出版社:福音館書店

発行日:2005年3月20日

 

「スモールさん」の絵本、このブログで取り上げるのは「ちいさいじどうしゃ」以来、かなり久々の登場です。

 

≫絵本の紹介「ちいさいじどうしゃ」

 

「スモールさん」が毎回何かの運転士として活躍する「ちいさい〇〇」シリーズとはちょっと違い(やっぱり乗り物には乗りますけど)、今作では農場主としての仕事が描かれます。

家畜の世話。

トラクターで牧草地を掘り起こす。

収穫から販売まで、スモールさんは一人でこなします。

どんな超人的体力ですか。

しかもこの涼しげな顔。

 

レンスキーさんの淡々とした説明文はいつもの通りです。

読み聞かせる大人にしてみれば退屈ですらあるこの単調さ。

しかし、これが子どもたちには非常に好まれる文体なんですね。

 

子どものあくなき好奇心や、どんなことでも知りたいという欲求。

それは大人には到底及ばないほどの強さで、ほとんど渇望と呼んでいいくらいのものです。

 

その一つ一つに、丁寧な文と絵で答えてくれるのですから、子どもにとってこんなに真摯な作品もないわけです。

我々大人は、ついつい子どもの質問を適当にあしらったりしてしまいがちです。

レンスキーさんの絵本は、子どもの問いに正面から答えることの大切さを教えてくれます。

 

見返しには空から見た農場の全体図なるものも描かれ、スモールさんがどこでどう仕事をしているかまでがわかるようになっています。

 

それにしても、スモールさんの万能ぶりには毎回感心してしまいますね。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

スモールさんの多忙度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「スモールさんののうじょう

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

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【絵本の紹介】「ぼちぼちいこか」【191冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

最初の子は慎重派、などと聞きますが、我が家の息子も、小さな頃からちょっと臆病なところがありました。

公園の遊具、風船、花火、掃除機、ドライヤー……変なものを怖がります。

 

それだけでなく、根気がないというか、失敗を自分で許せないようなところもあります。

積み木遊びも、少しでも崩れるとやめてしまうし、絵を描いていても、線が上手く引けないと怒るし。

 

このまま行けば完璧主義者になってしまうんじゃないかと心配したり。

 

どうしても初めの子どもに対しては、親の方があれこれ心配するので(表には出さないように気を付けているつもりだったんですが)、その影響は免れないのかもしれません。

しかしその一方で、子どもには失敗を恐れず何事にも果敢にチャレンジして欲しいと願う親心もあったり、いずれにせよ期待される子どもは大変です。

 

そんな時、ふっと肩の力を抜いて、気持ちを入れ替えることのできる絵本を紹介します。

ぼちぼちいこか」です。

作:マイク・セイラ―

絵:ロバート・グロスマン

訳:今江祥智

出版社:偕成社

発行日:1980年7月

 

独特のタッチで描かれたカバくん。

このカバくんが、様々な職種に挑戦しては、ことごとく失敗するというお話。

 

失敗の理由は主に体重。

消防士になろうとして梯子が壊れ、船乗りになろうとしては船が沈み、パイロットになろうとしては飛行機が真っ二つ。

でも、カバくんは少しもめげずに、次々に新しいことに向かって行きます。

「自分には何が向いているのか」と悩む前に、とにかく行動。

失敗はどれもユーモラスですが、絵に加えて、今江さんの関西弁での訳文がこのカバくんにぴったりハマるんですね。

原文にはないシャレを盛り込んだりして、大いに遊んでいます。

一通り失敗した後で、初めてカバくんは立ち止まり、

どないしたら ええのんやろ

と呟きます。

 

でも、慌てず騒がず、

ここらで ちょっと ひとやすみ

と、ハンモックに寝そべります。

ま、ぼちぼち いこか―――と いうことや

 

★      ★      ★

 

就活で悩む学生さんにもオススメしたい一冊。

そう、人生は長い。

 

私は子どものころ、今江さんの児童文学が大好きでしたが、この絵本の訳文に関西弁を持ってくるのは流石だと感心します。

もう、関西弁じゃないカバくんが思い描けないくらい。

「ぼちぼち いこか」というセリフも、代替不能なニュアンスを持った言葉です。

 

最近になって、ようやく息子も少しずつ色んなことに手を出すようになってきました。

焦らずとも、子どもは必ず前に進もうとする生き物です。

 

子どもはもちろん、親も「ぼちぼち」行きましょうか。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

関西弁のマッチ度:☆☆☆☆☆

 

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