【絵本の紹介】「たなばたプールびらき」【411冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今日は七夕。

ということで七夕にちなんだ絵本を紹介しましょう。

たなばたプールびらき」です。

作:中川ひろたか

絵:村上康成

出版社:童心社

発行日:1997年6月8日

 

さつまのおいも」「おおきくなるっていうことは」など、全12冊の「ピーマン村の絵本たち」シリーズの一冊です。

ちょっととぼけたような、不思議で楽しい雰囲気の保育園での行事や四季を感じる絵本シリーズ。

 

七夕の日、おりひめとひこぼしは年に一度の天の川でのデート。

望遠鏡を取り出して「スターウォッチング」していると、地球の保育園の七夕飾りを見つけます。

短冊に書かれた願い事は「あまのがわで およいでみたい」。

 

その願いを叶えてあげようと二人は流れ星を地球に飛ばし、保育園の子どもたちを招待します。

子どもたちと園長先生は流れ星に乗って天の川へ。

園長先生は丁寧におりひめとひこぼしに挨拶とお礼をして、この日を園のプール開きとします。

まずは怪我のないように準備体操。

おてて ぷらぷら

あーし ぶらぶら

おくび ぐるぐる

おしり くねくね

それからみんなで楽しく泳ぎ、おりひめとひこぼしは華麗なシンクロナイズドスイミングを披露します。

ところどころあえて横文字を入れてくるセンスが好き。

 

★      ★      ★

 

梅雨時だから仕方ないかもしれませんけど、皮肉なことに七夕は毎年のように雨が降ってる気がしますね。

せっかくの年に一度のデートの日くらい、晴れてくれればいいのに……という気もしますが、考えてみれば天の川に雨は関係ないのかな。

 

今年は雨どころか豪雨災害の七夕となってしまい、被害に遭われた方の安否が心配です。

ただでさえコロナ禍で大変な時期に……。

 

今年の短冊にはコロナ収束を願った子どもたちも大勢いたことでしょう。

うちの子は砂遊びの次に水遊びが大好きで、一昨年までは夏と言えばプールか川遊びだったんですけど、それすらもコロナの影響で自由になりません。

 

去年の夏は我慢してもらった分、今年こそは好きなだけプールに連れて行ってあげたかったのですが、いまだ収束は見えず、ワクチンの供給も遅れている現状。

本当に辛いですね。

当たり前の日々がどれほどありがたいものか痛感します。

以前ならただほのぼのとして読んでいたこんな絵本すら、どこか胸が疼くような気持ちで読んでいる自分がいます。

 

作者の中川ひろたかさんは作詞作曲もこなす方で、この「ピーマン村の絵本たち」にちなんだ体操音楽CDというのも作られています。

私は持ってないんですけど、おそらくこの作品からは「おてて ぷらぷら」のリズミカルで可愛らしい体操の曲などが収録されているのでしょう。

機会があれば一度聴いてみたいです。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

「パイナっぷるアイス」食べたい度:☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「たなばたプールびらき

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

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【絵本の紹介】「ポインセチアはまほうの花」【397冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今年も本当にあとわずかですね(年々早くなるというお決まり文は悲しくなるので略)。

今回もクリスマスの絵本を紹介します。

ポインセチアはまほうの花」です。

作:ジョアンヌ・オッペンハイム

絵:ファビアン・ネグリン

訳:宇野和美

出版社:光村教育図書

発行日:2010年9月20日

 

副題は「メキシコのクリスマスのおはなし」。

世界各国にはそれぞれのクリスマス習慣がありますが、メキシコには「ポサダ」という一風変わった行事があります。

去年にもこの行事を描いたマリー・ホール・エッツさんの「クリスマスまであと九日」を紹介したので、そちらも併せてお読みいただければと思います。

 

≫絵本の紹介「クリスマスまであと九日」

 

上の記事でも解説していますけど、メキシコのクリスマスは12月上旬に始まり、新年6日まで続くという非常に長いイベントです。

ポサダというのはイエスを身籠ったマリアと夫のヨセフが聖地ベツレヘムを目指して旅をした、あの聖書のお話に基づく行事です。

子どもたちはポサダの前には「ピニャータ」(ピニャタ)というくす玉人形を買ってもらい、その中にお菓子やおもちゃを入れておき、お祭りの最後にこれを目隠しで叩き割るのです。

 

メキシコの子どもたちにとってはポサダはとても楽しみなイベントだと思われます。

主人公の「ファニータ」はクリスマスイブに市場で売られているピニャータを見て回りますが、ファニータの父親は失業中でお菓子やおもちゃを買うお金もありません。

友だちにポサダに誘われても、イエス様にお供えする贈り物が買えないのでは行くことができません。

 

そんな貧しい暮らしの中でも、ファニータの家族は仲睦まじく質素にクリスマスを祝います。

けれども真夜中前、教会へ行こうと母親に言われた時、とうとうファニータは泣き出してしまいます。

イエス様へ捧げるろうそくすら持たないで、とても教会へは入れないとファニータは思い詰めます。

 

教会の前で立ち止まり、中から聞こえる讃美歌を口ずさむうち、ファニータの目から涙がこぼれます。

その時、誰かがファニータを呼びます。

話しかけてきたのは天使の石像でした。

天使は自分の周りに生えている葉を摘んで持っていくように促します。

こんな雑草を、イエスさまに?

ファニータは戸惑いながらも、天使像に言われた通りにします。

どきどきしながら教会へ入っていくファニータを見て、人々の間から「きれいね」「すてきね」と声が上がります。

気が付くと、ファニータの手には真っ赤なポインセチアの花が抱えられていました。

 

この後、クリスマスになるとどこの家や教会でも、真っ赤なポインセチアが飾られるようになったと伝えられています。

 

★      ★      ★

 

作者のオッペンハイムさんは幼少期にメキシコに住んでおり、これはその経験をもとにした絵本です。

ポサダの楽しみや高揚感はメキシコで実際に過ごした人間にしかわからないのかもしれません。

 

ポインセチアの伝承についてはいくつかのバージョンが存在するようですが、「ものを贈る真心」という核は変わりません。

メキシコの人々が何を大事に思い、どんな感情を大切にしているかが表れているように感じます。

 

世界のクリスマス絵本を読んでみればみるほど、キリスト教圏の人々に自然に根付いている信仰心が実感できます。

そういう文化の中で育った子どもたちは当然のように神様・イエス様の存在を身近に感じており、畏怖や畏敬の念とともに成長することになります。

そしてそれは大人になってからの人間形成にも大きな影響を及ぼします。

 

それを時代遅れの精神と片づけるのは早計に思います。

神様が実存するかどうか、聖書の実話性がどうかというレベルの問題ではなく、宗教には人間が人間であるために必要な叡智が込められているのではないでしょうか。

しかしだからこそ、一方で宗教に端を発する争いはなくならないとも言えます。

 

私たちは妄信することや嘲笑し、目を逸らすことから自由になって、宗教というものを根本から直視しなければならないのです。

その時初めて人間の本質が見えてくるからです。

真に血の通った人間理解は、科学と宗教の間に橋を架けなければ実現しません。

 

クリスマス=サンタやプレゼントばかりではないと確認させてくれる絵本です。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

陰影の妙度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「クリスマスまであと九日」【354冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

師走真っ只中。

年々巡りは早くなるけれど、忙しさは増えて行くように感じます。

やることが多いのは幸せでもあるんですけどね。

 

さて、いよいよクリスマスが近づいてまいりました。

今日は16日、「クリスマスまであと九日」ですね。

作:マリー・ホール・エッツ&アウロラ・ラバスティダ

絵:マリー・ホール・エッツ

訳:田辺五十鈴

出版社:冨山房

発行日:1974年12月5日

 

エッツさん、しばらくぶりのご登場です。

これは1960年のコールデコット賞受賞作品で、メキシコのクリスマス習慣を描いた内容になっています。

 

代表作「もりのなか」をはじめ、エッツさんの作品は派手な色調を抑えたものが多いですが、この「クリスマスまであと九日」では、色鉛筆によるピンクや赤、黄色などの彩色が目を引きます。

もっとも、それでも全体としては落ち着いた画面にまとまっており、現代作品と比較すると地味な印象を持たれるかもしれません。

 

が、これは時代と言うよりも作者のスタイルでしょう。

淡いグレーの背景色は「ジルベルトとかぜ」に共通するものです。

物語後半ではこのグレーの濃淡の変化によって夜の時間を演出しています。

 

≫絵本の紹介「もりのなか」

≫絵本の紹介「ジルベルトとかぜ」

 

「クリスマスまであと九日」、副題は「セシのポサダの日」。

多くの人にとって聞いたことのない単語でしょうけど、「セシ」は主人公の少女の名前で、「ポサダ」とはメキシコのクリスマス行事です。

長ったらしい説明は後回しにして、とにかく読んでみましょう。

読み進めるうちにだんだんとメキシコの文化・生活・人情などが理解できるようになっています。

幼稚園に通うセシは、今年は自分のポサダをしてもらえるというので喜びます。

ポサダはクリスマスまでの九日間、毎晩続けて行われる特別な行事です。

 

セシは自分用の「ピニャタ」を買ってもらえるのかとそわそわしますが、母親は「いまに わかるわ」と教えてくれません。

「ピニャタ」というのは粘土の壺を中に入れた装飾品で、くす玉人形のようなもの。

この中にキャンディなどを入れておいて、お祭りのクライマックスで子どもたちが叩き割るのです。

 

セシは待ちきれない思いで毎日を過ごします。

ある日、ついに母親がピニャタを買いに「むかしからの メキシコのマーケット」にセシを連れて行きます。

色とりどりの素敵なピニャタにセシは目を奪われます。

ピニャタはセシに話しかけ、自分を選んでくれるよう頼みます。

小さな女の子の最初のポサダに選ばれたピニャタには素晴らしいことが起こるからです。

 

セシは綺麗な星をかたどったピニャタを選びます。

これは赤ん坊のイエス様の居場所を三賢者に教えたとされる星というわけです。

 

いよいよセシのポサダの日が来て、セシは星のピニャタの中にキャンディやレモン、オレンジなどを詰め込みます。

それをお父さんとお兄さんが庭の木に吊るしてくれます。

 

お祭りの最後に、子どもたちが目隠しをして棒でこれを叩き割るのです(スイカ割りと同じ要領ですね)が、セシはせっかくのピニャタを割られたくありません。

暗くなるとお客さんが集まり、メキシコの晴れ着に着替えたセシや子どもたちが行列を作り、歌いながら中庭を回ります。

最後にいよいよピニャタが割られる時が来ます。

セシは見てられなくて目を閉じます。

 

セシのピニャタが割られた時、空から本当の星がセシに話しかけます。

見てごらん!

わたしは いま、ほんとうの星に なったのよ!

 

セシはその輝く星を見上げ、「もう だれも、あの星をわることは できないわ!」「あの星は いつも あたしのものなのよ」と思うのでした。

 

★      ★      ★

 

メキシコのクリスマスは12月上旬から新年1月6日(主の公現日)にかけてほぼ一月通して行われる長いイベントです。

ポサダのみならず、物語の要所要所で描かれるメキシコの街並み、人々の暮らしや風俗人情も非常に興味深いものです。

もちろんここに描かれているのは60年くらい前のメキシコですが、ポサダは今でもちゃんと行われているようです。

 

また、セシの子どもらしい感情や行動もうまく捉えており、これはエッツさん一流の観察眼によるものでしょう。

エッツさんはこの絵本を描くにあたり、実際にメキシコまで足を運び、人々や街並みをスケッチしたそうです。

 

そうすることで、「頭の中でイメージしていたメキシコ」と「現実のメキシコ」との隙間を埋めることに成功し、現地メキシコからも高く評価される絵本が完成したのです。

というのは、当時アメリカで発行される子どもの本に描かれるメキシコは、アメリカ人の無知や偏見によって歪められた「メキシコ」であることが多く、メキシコの人々はそれに対し不満を抱いていたからです。

 

エッツさんが正しいメキシコの姿を伝えることに対し使命感を持っていたかどうかはわかりません。

ただ絵本作家として丁寧な仕事をした結果とも言えるかもしれません。

 

食べ物や音楽、ファッション、映画、アニメ、漫画、それに絵本。

他国への興味と理解、尊重心はそのほとんどが文化交流から始まります。

 

その影響力は政治的なプロパガンダよりも深く、遥かに根強い力を持っています。

独裁的な権力者が多様な文化を嫌うのは、それを心の底から恐れているからです。

 

昔の話をしているのではありません。

遠い国の話をしているのでもありません。

 

幼い頃から豊かな芸術体験をしておくことが重要なのは、何も文化資本を獲得するためだけではなく、偏見に曇らされない「物を見る目」を培うためです。

美術館やクラシック・コンサートに頻繁に足を運ぶことは大変でも、「毎日絵本を読む」ことくらいは何とかなるのではないでしょうか。

 

推奨年齢:6歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

クリスマスを大切に思う気持ち度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「しきしきむらのなつ」【260冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

もう聞き飽きたセリフでしょうけど、暑いですね。

ちょっとこれは殺人的ですね。

 

夏は暑いものとは言っても、これではせっかくの夏休みも、外で遊びづらいものがあります。

プールで熱中症になるくらいですからね。

ここまで酷暑が続くと、夏の風情もなにも感じるどころではなく、ただただクーラーの効いた部屋にこもるばかりになってしまいます。

 

せめて絵本の中で、「いい夏」を感じたいと思って、今回は四季を描いた詩の絵本「しきしきむら」シリーズより、「しきしきむらのなつ」を持ってきました。

作:木坂涼

絵:山村浩二

出版社:岩波書店

発行日:2005年4月26日

 

作者の木坂涼さん(女性)は、詩人・エッセイスト。

翻訳の仕事も多数こなされており、絵本の翻訳も手掛けています。

 

私が初めてこの人の作品を知ったのは、息子が0歳、まだ絵本を読み聞かせ始めたばかりのころです。

月刊絵本「ちいさなかがくのとも」に「とんとんとんおとがしますか」という木坂さんが文を書いた絵本があり、内容が非常に平易だったので息子にちょうどいいと思って読み聞かせたところ、大ウケしたのです。

 

文のリズムや効果的な擬音が、小さかった息子にも非常に心地よかったのでしょう。

当時一番リピート率の高い一冊でした。

 

この「しきしきむら」シリーズでも、それぞれの季節の風物詩をあれこれ登場させながら、その耳に馴染みやすい言葉と文のリズムは健在です。

山村浩二さんの絵も可愛らしく、光や影を感じさせるイラストから、夏のにおいが伝わってきます。

なつ なつ なつ

なつは まぶしい ちっかちか

おひさま てって ちっかちか

 

山村さんの他の作品「くだものだもの」のような可愛くてすっとぼけた味のキャラクターが、ここでも活躍しています。

テキストには説明はありませんが、「しきしきむら」を舞台に、キツネ(♂)、ネコ(♀)、カメ、カタツムリの仲良し4人組が主人公となって夏を満喫する様子が描かれており、絵からも様々な想像ができます。

なつ なつ なつ

くん くん くん

なつの においは どこにある?

カブトムシ、アブラゼミ、やきとうもろこし、スイカ、にわか雨、そして大きな入道雲。

なつ なつ なつ

みつけた みつけた

なつ みーっけ!

 

★      ★      ★

 

夏に限った話ではなく、季節の変化や情緒を感じるには、やっぱり都会は不向きですね。

私も子どもの頃はお盆には父の田舎で過ごした思い出があり、海や山、蚊取り線香にスイカといった私の「夏のイメージ」はそこで構築されています。

 

息子にはできるだけ自然の多いところへ連れて行って遊ばせてやりたいのですが、こう暑いと道中が危険です。

今度は台風が西日本に接近してますし。

今年の夏は優しくない感じですね。

 

ともかく体調に気を付けて、健康第一で乗り切りましょう。

 

推奨年齢:2歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

五感刺激度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「なつのおとずれ」【160冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

いよいよ夏休みが始まった子どもたちも多いでしょう。

海だ! 山だ!

というわけで、夏の始まりにぴったりの一冊を紹介します。

 

なつのおとずれ」です。

作・絵:かがくいひろし

出版社:PHP研究所

発行日:2008年6月4日

 

扉の向こうからこちらをのぞくソフトクリーム、スイカ、メロン、かき氷、扇風機……。

丸い目と短い手足をつけた独特の擬人化キャラクターたち。

背景には真っ青な空と入道雲、海と砂浜。

 

夏がやってくるワクワク感が伝わってきます。

 

かたつむりの天気予報士が梅雨明け間近であることを伝えると、おひさまが夏の風物詩たちを呼び出します。

よーい」「どーん

で駆け出すソフトクリームたち。

 

遠近法を用い、ユーモラスながら大迫力の画面を展開します。

浮袋や蚊取り線香なども加わり、「ながしそうめんの じっちゃん」のところへ辿り着くと、そこから一気に滑り出します。

行き先は「なつ」。

飛び出した先のおひさまの口に入って、

ぐもももももももももももも

と、縦書き文字でロケットのように打ち上げられ、青い空から地上へ舞い降ります。

眩しい陽光の下、夏の音がいっぱい。

 

★      ★      ★

 

溢れるユニークなアイディアと構成の妙、光を感じさせる明るい色彩のタッチ。

作者のかがくいさんは2005年「おもちのきもち」でデビューし、「だるまさん」三部作で大ブレイク。

絵本界を席巻し、大いに注目を集めました。

 

しかし2009年、すい臓がんのために急逝されます。

 

絵本作家としての活動期間はわずか4年。

あまりにも惜しい才能でした。

 

かがくいさんの絵本は「読み聞かせること」をいつも念頭に置いて作られていると思います。

ですから、声に出して読んでみるとテンポが良く、大人も楽しくなるような作品ばかりです。

 

かがくいさんは亡くなられましたが、残された作品はずっとずっと後の世代まで読み継がれるロングセラーになることでしょう。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

夏度:☆☆☆☆☆

 

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