【絵本の紹介】「ガラスめだまときんのつののヤギ」【175冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは海外の民話絵本なのですが、ベラルーシという、日本ではちょっと馴染みの薄い国の民話です。

それを「あの」スズキコージさんが挿絵担当しているのですが、彼の絵本としては初期のもので、これまた珍しくコラージュ(切り絵)の手法を用いています。

 

そういう珍しい要素が様々集まって化学変化を起こしたような作品なんですが、これが実にうまく調和して、良質な絵本に仕上がっております。

それがこの「ガラスめだまときんのつののヤギ」です。

作:ベラルーシ民話

訳:田中かな子

絵:スズキコージ

出版社:福音館書店

発行日:1988年5月31日

 

コラージュでもスズキさんの独特のタッチは健在です。

見てください、この表紙の堂々たるヤギの佇まい、目力。

 

ガラスめだま」と「きんのつの」を持つ、やたらカッコイイヤギで、その迫力はかの名作「3びきのやぎのがらがらどん」の大きいやぎを彷彿とさせます。

日本だとヤギって、大人しくて、弱々しくて、ちょっと頭悪い(手紙食べちゃったり)イメージが持たれているように感じますが、北欧やロシアの辺りでは、こういう猛々しいヤギが生息しているのでしょうか。

 

さて、一体どんなヤギなのかと、ワクワクしながら読んでみると……。

めっちゃヤクザもんです。

 

おばあさんが丹精込めて育てた麦畑を、我が物顔で踏み荒らし、おばあさんが、

でていけったら でていけっ! むぎばたけから でていけっ!

と怒鳴ると、逆に凄まじい啖呵を切り返します。

 

よけいなおせわだ、おいぼればあさん! おいらにゃ、ガラスめだまと きんのつのがある。ひとつきすれば、いちころさ!

 

おばあさんは泣きながら歩いて行きます。

そして、大きなクマと出会い、わけを話すと、クマはヤギを追い出してやろうと請け合います。

 

クマはヤギの前に立ち、「でていけったら でていけっ!」。

でも、ヤギが凄むと、口ほどにもないクマは逃走してしまいます。

 

以後、絵本の定型である「繰り返し」モードに突入。

次々と動物たちがヤギを追い出そうとしますが、みんなヤギの迫力に押されて逃げ出してしまいます。

 

このお話が面白いのは、登場する動物が、クマ→オオカミ→キツネ→ウサギとだんだん小さくなっていくこと。

また、ボキャブラリー豊かなヤギは、相手ごとに切れ味鋭い啖呵を切ります。

もじゃげのクマめ!

おんぼろおっぽのオオカミめ!

ずるギツネめ!

もぐもぐウサギめ!

と、読者を飽きさせません。

 

そして、最後に登場するのは小さな一匹のハチ。

ハチだけは啖呵など切らずに、黙ってヤギの鼻に一撃を喰らわせます。

勝負あり。

 

やっぱり喧嘩は口を利く前に先手必勝、ということでしょうか。

 

★      ★      ★

 

小さいものが大きいものをやっつける、定番と言えば定番の民話ですが、上記の通り、文も絵も独特で、非常にテンポよく読めます。

 

スズキさんのコラージュには、ちょっと変わった材料があれこれ使われていて、題字には毛羽立った紐(?)、おばあさんのスカートの柄には宇宙の写真、ところどころに英字新聞など。

 

それにしても、ほとんど神々しいまでに強そうだったヤギですが、実際には口だけだったのがなんとも。

その点、やはり絵本界の最強ヤギの座は「がらがらどん」に譲るしかないようです。

 

≫絵本の紹介「3びきのやぎのがらがらどん」

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

表紙と裏表紙の落差度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ガラスめだまときんのつののヤギ

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「100冊分の絵本の紹介記事一覧

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【絵本の紹介】「3びきのくま」【130冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は有名な童話「3びきのくま」を紹介します。

文:トルストイ

絵:バスネツォフ

訳:小笠原豊樹

出版社:福音館書店

発行日:1962年5月1日

 

もともとはイギリスの童話ですが、この福音館書店発行の絵本は、かの世界的大作家・トルストイさんが再話されています。

よって、3びきのくまにはそれぞれロシア名が付けられているのが特徴。

 

いちいち長ったらしくて重々しいんですが、それが面白いんですね。

バスネツォフさんの絵も相まって、異国情緒豊かな作品になっています。

くまはなんか目が怖くて、可愛くはない。

でも、どこかユーモラスです。

 

内容の方は今さらですが、再話者によって細部が違うので、ざっと紹介しておきます。

森で道に迷った女の子が、小さな家を見つけます。

この家は3匹のくまの家。

 

おとうさんぐまは「ミハイル・イワノビッチ

おかあさんぐまは「ナスターシャ・ペトローブナ

くまのこは「ミシュートカ

3びきが外出中なのをいいことに、女の子は家に入り、3つのお皿のスープを味見し、3つの椅子に腰かけ、3つのベッドに寝てみて、ちょうどよい大きさのミシュートカのベッドで眠ってしまいます。

やがて3びきが帰ってきて、侵入者の形跡に気が付きます。

最後にミシュートカが自分のベッドを占領している女の子を発見し、騒ぎ立てますが、女の子は窓から飛びだして逃げてしまいます。

 

★      ★      ★

 

誰でも知っているお話ですが、どこか釈然としない結末でもあります。

私は子どものころ、このお話に出てくる女の子が大嫌いでした。

 

勝手に人の家に上がり込み、何の躊躇もなくスープを盗み食らい、無法にも椅子を壊し、図々しくもベッドで眠る。

あまりにも傍若無人なふるまいではありませんか。

3びきの怒りは当然ですし、一番の被害者である子ぐまのショックと嘆きはいかばかりでしょう。

なのに、女の子は少々怖い思いはするものの、あっさりと逃亡に成功し、何の罰も受けません。

 

ということは、本質としてはこれは教訓的なお話ではないと言えます。

 

重要なのは女の子の行動の倫理性ではなく、法則性にあります。

つまり「3」の繰り返しです。

 

幼児向けお話における繰り返しの持つ意味については、「おおきなかぶ」の紹介で触れました。

 

≫絵本の紹介「おおきなかぶ」

 

「3」はグループの最小単位であり、他の様々な昔話や童話にも、たびたびキーワードとして登場します。

この「よくわからないお話」が、時代や国境を越えて読み継がれているのは、典型的な繰り返しの技法を確立しているからでしょう。

 

子どもはパターンを読み取り、結果を予測し、この世界を掴もうとします。

 

ちなみに、ですが。

イギリスでは女の子の名前は「ゴルディロックス」(金髪)。

常に自分に「ちょうどよいもの」を選ぶところから、宇宙における「生命居住可能領域」を指す「ゴルディロックスゾーン」という、中2が喜びそうな用語にもなっています。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

女の子の逃走能力度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「3びきのくま

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【絵本の紹介】「ながいかみのラプンツェル」【111冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回はグリム童話原作・「ながいかみのラプンツェル」を取り上げます。

原作:グリム童話

絵:フェリクス・ホフマン

訳:瀬田貞二

出版社:福音館書店

発行日:1970年4月30日

 

今ではディズニー版の方が遥かに有名になってしまいましたが、映画は原作とはかなり違いがあります。

原作そのものも、時代の要請に従って、何度も改編されている問題作です(性的描写が露骨だという、例の事情です)。

 

さらに、この絵本も、作者のホフマンさんが細部に変更を加えています。

 

ですので、「ラプンツェル」を知ってる人は数多くとも、どのヴァージョンを読んだかによって、それぞれの思い描くお話は様々だと思われます。

 

まずは、絵本の内容とポイントをざっと追ってみましょう。

 

あるところに、子どものいない夫婦が住んでいて、一人でも子どもが欲しいと願い暮らしていました。

隣の家には人から恐れられている魔女のゴーテルが住んでいて、その庭には立派な畑がありました。

 

ある時、おかみさんは、ゴーテルの庭のラプンツェル(レタスのような野菜)を食べたくてたまらなくなり、旦那さんに取ってきてくれるよう懇願します。

旦那は庭に忍び込んでラプンツェルを盗みますが、魔女に見つかってしまいます。

旦那さんが訳を話して謝ると、ゴーテルは好きなだけラプンツェルを持って行っていいが、もし次にまた来たら、これから生まれる子どもをよこすことを約束させます。

 

しかし、結局おかみさんはまたすぐにラプンツェルが欲しくて我慢できなくなり、再び旦那さんは魔女の庭に侵入。

もちろん見つかって、その後生まれた娘を連れ去られてしまいます。

ゴーテルは娘を人目につかない森の奥の塔で育てます。

ラプンツェルと名付けられた娘は「てんかいちの きりょうよし」に成長します。

 

けれども、ラプンツェルは塔から一歩も外へ出ることを許されません。

塔には階段もなく、ゴーテルが塔に入る時は、ラプンツェルの長い髪を梯子替わりに使うのでした。

 

そんなある時、森へ来た王子が、ラプンツェルの歌声を耳にし、心を奪われます。

王子は塔に近づき、ゴーテルが窓から垂らされた髪の毛を掴んで出入りするのを見て、同じように窓に向かって呼びかけ、侵入します。

初めて見る男性に、ラプンツェルは驚きますが、王子が若くて美しいのを見て、「このひとなら、ゴーテルばあさんよりも わたしを かわいがって くれるだろう」と考え、王子の愛を受け入れます。

 

何度か魔女の目を盗んで逢瀬を重ねるうちに、ラプンツェルはうっかりと、ゴーテルに

あなたを ひきあげるほうが、おうじさまを ひきあげるより おもいのですもの

と口を滑らせてしまいます。

 

ゴーテルは怒り、ラプンツェルの長い髪をばっさり切り取ってしまいます。

 

そして、やってきた王子を塔の下へ落とします。

王子は「いばらで りょうめを さしつぶしました」。

 

これを見たラプンツェルは塔から飛び降りますが、怪我一つ負わず、王子を見つけて抱きしめます。

ラプンツェルの涙が王子の目を治し、ふたりは王子の国へ帰って結婚します。

 

残された魔女は塔から降りることもできず、小さくしぼんでしまい、最後は大きな鳥にさらわれてしまうのでした。

 

★      ★      ★

 

一読しただけでは、釈然としないお話です。

登場人物はそれぞれ業が深く、単純に「いい人」「悪い人」が存在せず、勧善懲悪のストーリーでもありません。

 

・娘が奪われるのを知った上で、よそ様の畑の野菜を盗み食らう夫婦。

・何の目的かわからないけどラプンツェルをさらって、でも結構大事に育ててる魔女。

・でも、あっさりと初めて会った男になびいてしまう、チョロいラプンツェル。

・なんか情けない王子。

 

ディズニー映画は、上記の点をすべて納得のいく物語になるよう、変更しています。

 

なお、原作と絵本との違いで最も顕著なのは、「ラプンツェルが妊娠しないこと」「魔女の最後が描かれていること」の2点です。

 

原作では、ラプンツェルは王子と性行為を繰り返し、妊娠することによって密会を魔女に知られます。

絵本ではここを改編していますが、p24〜25のカットは、わりと如実に性的なものを暗示しています。

 

つまり、これは基本的に「性的な物語」なのです。

 

そのつもりで読み解くと、ラプンツェルの長い髪は「処女性」を示し、王子の失明は「去勢」を示していると推測できます。

 

そして物語のテーマは、「娘を支配する母親」です(これは「核」ですので、ディズニー映画においても継承されています)。

 

魔女ゴーテルがラプンツェルを幽閉し、人目に触れさせないのは、娘の若さと美しさへの嫉妬からです。

こういう感情は、現代でもないとは言えないでしょう。

 

老人は、常に若者に嫉妬を抱くものです。

ことに、若者同士の自由な性交を、老人は危惧します。

なぜなら、それは自分が若いころに欲しても手に入れられなかった自由であり、悦びであるからです。

 

妊娠の恐れとか、勉学の妨げとか、世間体とか、様々なもっともらしい理由の奥底には、そうした嫉妬の念があります。

 

グリム童話にたびたび「継母」という形で登場する母親たちは、実の母親の心のどこかに潜む、娘への嫉妬と支配欲を象徴していると考えられます。

それが「母親と娘」であるのは、単に女性の方がより性的に抑圧されているからです。

 

これだけ時代が流れても、いまだにその抑圧の連鎖は断ち切れていません。

 

しかし本当に、老人の世代が言うように、若者に自由な性交を許したら、人間は堕落するのでしょうか。

世間に蔓延る様々な病は、性的奔放ではなく、性的抑圧の結果ではないでしょうか。

 

青春を謳歌できなかった魂は、かつての自分である子ども世代に、呪いをかけ続けます。

「ラプンツェル」は、そうした母親の呪縛から逃れる娘の物語なのです。

 

そう読まないと、

この魔女、別にそんなに悪いことしてないんじゃないの

と思ってしまいがちです。

 

だからこそ、ホフマンさんが、わざわざ原作にない魔女の末路を描いて、

いんがおうほう、とうぜんのむくい

とまで書いているのではないでしょうか。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆☆

構成力と画力度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ながいかみのラプンツェル

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絵本の紹介「スーホの白い馬」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は小学校の教科書にも採用されていた「スーホの白い馬」(再話:大塚勇三、絵:赤羽末吉、福音館書店)を紹介したいと思います。

原作はモンゴルの民話。

モンゴルを舞台にした物語というものを、はじめて読んだのがこの絵本だという人も多いのではないでしょうか。

 

絵師の赤羽さんにとっては二作目の絵本で、「360度地平線」という、日本では見ることのできないモンゴルの大草原の風景を描きたいという熱意から生まれた作品です。

その広大な景色を表現するために、見開きヨコ60cm以上という、当時としては破格の大きさで出版されています。

 

実は、私はこの絵本を、まだ息子(3歳)には読み聞かせていません。

私は絵本の推奨年齢というものをさほど参考にしておりませんので、この絵本よりももっと字の多い話や、難しい言葉の出てくる話も読み聞かせてきました。

しかし、この絵本に関しては、もう少し息子の成長を観察してからにしようかと考えています。

その理由は後述します。

遊牧民の少年スーホは、ある日、生まれたばかりの仔馬が倒れているのを見つけ、連れて帰ります。

スーホが心を込めて世話をしたおかげで、仔馬は逞しくて美しい、立派な白い馬に成長します。

 

ある年の春、領主が娘の結婚相手を探すための競馬大会を開くという知らせが伝わってきます。

仲間に勧められて、スーホは白馬に乗って大会に出場します。

そして、見事に優勝します。

 

しかし、スーホが貧しい羊飼いであるとわかると、領主は娘と結婚させる約束を反故にし、そればかりか白馬をスーホから取り上げてしまいます。

抵抗したスーホはひどい目に遭わされ、友達に連れられてようやく家に帰りつきますが、その胸中は白馬を奪われた無念と悲しみでいっぱいでした。

 

白馬を手に入れた領主は、宴会の席で白馬を見せびらかそうとしますが、白馬は領主を振り落として脱走します。

たくさんの弓矢を射かけられながらも、白馬はスーホのもとへ走ります。

 

弱り切った状態でやっとスーホのところへ帰り着いた白馬でしたが、翌日には死んでしまいます。

 

悲しみに暮れるスーホの夢枕に白馬が現れ、話しかけます。

そんなに、かなしまないでください。それより、わたしのほねや、かわや、すじや、けを使って、がっきを作ってください

夢から覚めたスーホは、白馬に教えられた通りに楽器を作ります。

それが、今でもモンゴルにある、一番上が馬の頭の形をした「馬頭琴」という楽器でした。

スーホはどこへ行くにもこの馬頭琴を持っていき、白馬との思い出とともに、美しい音を奏でるのでした。

 

読んでもらえればわかると思いますが、情愛、哀惜、憤り……実に様々な感情を揺り起こす繊細なお話です。

これらの複雑な感情を、「悲しい」「かわいそう」という単純な記号に落とし込んで片付けてしまうと、このお話の最も重要な核となっているテーマを見落としてしまいます

それはすなわち、「命の連続性」というものです。

 

白馬は死にますが、白馬の魂は死なないのです。

白馬の「ほねや、かわや、すじや、け」を使って作られた馬頭琴には、白馬の魂が宿っています。

果てしない大草原に流れる馬頭琴の音色を想像するとき、子どもは確かに白馬の魂を感じ、そして「音にも命がある」ことを知るのです。

 

そのとき、子どもは自分を取り巻いている世界のすべてに命が宿っており、そして自分もその一部なのだという強烈な一体感を持つようになります。

別に宗教的な話ではなく、こういう認識は、科学的に見ても、人間の生命力に大きく影響します。

現実世界と想像の世界との「境界」を生きる子どもは、そうした断定的な認識を、わりとすんなり受け入れることができますが、適切な時期を逃してしまうと、大人になってからでは難しいものです。

何しろ目に見えるものではありませんから。

 

ただし、上記のようなことは、あくまでも子どもが自分で「気づいて、感じる」ことが重要で、間違っても大人が言葉で説明しようとしてはいけません。

それでは結局「記号的認識」にとどまってしまいます。

 

子どもに与える物語は、初めのうちはわかりやすい形のハッピーエンドであるべきです。

この「スーホの白い馬」のようなお話は、子どもの感情がある程度発達し、自分から物語の芯とでもいうべき部分を抽出できるようになってから読んであげたほうがいいかもしれません。

そう考えて、私は息子にこの絵本を読み聞かせる機会を伺っているのです(同じ理由で、「かぐや姫」や「浦島太郎」も、まだ読み聞かせていません)。

けれど、その時期は、たくさんの絵本を読み聞かせてあげていれば、そう待つこともなく自然に訪れると思っています。

 

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絵本の紹介 瀬田貞二・山田三郎「三びきのこぶた」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は海外の昔話絵本を紹介したいと思います。

瀬田貞二さん・山田三郎さんによる「三びきのこぶた」です。

誰もが、一度は聞いたことのあるおはなしですよね。

ただ、細部は訳者さんによってアレンジされていたりして、同じ話を扱っていても、それぞれの絵本によって違いは大きいです。

 

福音館書店が出版するこの絵本は、「三びきのやぎのがらがらどん」や「おおかみと七ひきのこやぎ」などの翻訳を手掛ける大御所・瀬田貞二さんによる、原作に極めて忠実なストーリーで構成されています。

つまり、おおかみが殺されるラストをはっきり書いているということです。

 

それに、山田三郎さんの絵も、表情豊かでありながらリアルな動物を描いており、けっして子どもに媚びた甘い絵本ではありません。

そのあたりは、同じ海外昔話の名作「おおかみと七ひきのこやぎ」と同様で、作者の、子どもに対する敬意や誠実さが感じられます。

 

≫過去記事 絵本の紹介 ホフマン「おおかみと七ひきのこやぎ」

 

少々残念な点を挙げるとすれば、この出だし。

おかあさんぶたは びんぼうで、こどもたちを そだてきれなくなって、じぶんで くらしていくように、三びきを よそにだしました

この冒頭部分を説明する絵がないんですね。

 

この文章だけでは、子どもたちを養い切れないお母さんぶたの切実な思いが正確に伝わってないような気がします。

これって、結構悲しい話だと思いません?

他の絵本では、この箇所を、単に「大きくなったんだから自立しなさい」と、ニートを叩き出すお母さんのように描いているものも多いです。

それを、わざわざ「貧困から、子どもを育てきれなくなる」という、苦渋の選択として描いたのだから、お母さんぶたの張り裂けんばかりの辛さを表現した絵があってもいいのではないでしょうか。

 

それはさておき、注目は三びきめのこぶたとおおかみの対決。

何度にもわたっての頭脳戦を繰り広げます。

知恵と勇気でおおかみと戦うこぶたには、単純に感心させられますし、勇気づけられます。

そしてついに、問題のラストシーン。

なんと、自分を食べようと狙い続けていたおおかみを、こぶたは逆に「ばんごはんに たべて」しまいます。

ちょっと衝撃ですね。

でも、こぶたが「それからさき ずっと しあわせに」暮らすためには、不安や心配の象徴としてのおおかみは、完全に退治される必要があるのです。

子どもがちゃんと納得のいくハッピーエンドとは、そういうことです。

 

「おおかみだって生きるために必死なんだから」とか、「だまし討ちにされて可哀そう」とか、そういう多角的な価値観を持ち出しても、幼い子どもは混乱するだけです。

子どもに媚びない、とか、子どもへの敬意、というのは、「子どもを大人のように扱う」ことではありません。

子どもはあくまで子どもです。

その「子ども」という存在を軽侮せず、大人の価値観や先入観を排し、一人の人間として尊重するように努めることが、真の意味での「子どもへの敬意」なのです。

 

この絵本の裏表紙には、なかなか衝撃的な絵が描かれていますが、それもまた、こぶたが幸せに暮らし、子々孫々まで栄えたというエピローグを伝えるカットだと思います。

ある意味ネタバレですから、お話を終えるまでは見せない方がいいかもしれませんね。

 

 

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