絵本に登場するお父さんたち

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

もうすぐ父の日ですね。

絵本には星の数ほどの「お母さん」が登場しますが、反して「お父さん」は実に少ない。

たまに登場しても空気だったり。

 

そこで、今回の企画を思いつきました。

「絵本界の父親」たちに光を当てるべく、私が好きな絵本の中のお父さんたちをピックアップしてみました。

 

まったくの個人的好みで選んだものですので、あしからず。

では、どうぞお付き合いください。

 

●「もりのなか」のお父さん

まずはマリー・ホール・エッツさんの古典名作「もりのなか」より、男の子のお父さん。

最後にちらっと登場するだけなのに、非常に深い印象を与え、「絵本のお父さん」と言えば必ず名前が(名前ないけど)挙がる方です。

 

男の子を空想世界から現実世界へ連れ戻すシンボルとして登場しますが、その際に男の子の空想を一切否定しない態度と、

また こんどまで まっててくれるよ

の名言が広く支持されています。

 

●ふわふわさん

続いて「ちいさなうさこちゃん」より、うさこちゃんの父親です。

ふわふわさん」は訳者の石井桃子さんのネーミング。

 

そしてその石井さんのオリジナリティあふれる訳文により、なかなか渋くて素敵なお父さんとなっています。

特に「うさこちゃんとうみ」でのうさこちゃんとの会話は名文です。

 

うさこちゃんの主体性を引き出すようにうまく誘導しています。

 

●だるまどん

大人気「だるまちゃん」シリーズより、だるまちゃんの父親、だるまどん。

一見コワモテですが、息子を溺愛している子煩悩なお父さんです。

だるまちゃんとてんぐちゃん」で、だるまちゃんが欲しがるうちわ、帽子、履物を次々に集めてきます。

 

お店でも開けそうなラインナップ。

でも、なかなかだるまちゃんのお気に召す品を用意することができません。

 

それどころか「鼻」と「花」を間違えて、だるまちゃんにえらく怒られてしまいます。

ごめん ごめん」と平謝りするだるまどんが切ないです。

 

●スモールさん

毎回色々な乗り物に乗るスモールさん。

スモールさんはおとうさん」で、彼にも家族があることがわかります。

 

いたって普通の良い父親のように描かれていますが、その裏では飛行機や機関車を操り、時には農夫、時には消防士と八面六臂の活躍をするスーパーお父さんであることを、果たして家族は知っているのでしょうか。

 

●ババール

ぞうのババール」シリーズより、主人公ババール。

 

ババールのこどもたち」で、妻のセレストとの間に三人の子どもを授かります。

主人公が父親になるというのは、絵本界では非常に珍しいこと。

 

結核を患い、余命いくばくもない作者のジャン・ド・ブリュノフさんが、ババールに自身の子どもたちへの想いを重ねて書いたと思われる、

あのこたちのいないくらし なんて とても かんがえられないよ

というババールのセリフに胸を打たれます。

 

●「ちらかしぼうや」のお父さん

ちらかしぼうや」は、絵本には珍しいことに母親が登場せず、父と子が描かれています。

これは非常に短い絵本ながら、私が子どもに対してどう接するべきかのお手本となった作品です。

 

お父さんが片付ける端から次々に散らかして行くぼうやを、叱りつけるかと思いきや、

いいとも、いいとも

もういちど、さいしょから はじめるさ

と、抱きしめる、最高に素敵なお父さん。

 

これを読んだ瞬間、こんな父親であろう、と誓った思い出があります。

 

●「トリゴラス」のお父さん

最後は長谷川集平さんの奇作「トリゴラス」に登場するお父ちゃん。

 

息子の果てしもない妄想と情念に対し、

あほか、おまえは

と切り捨てる、大阪弁のおとんです。

 

そんな しょうもないこと ごちゃごちゃゆわんと、はよねえ!

ごもっとも。

 

「もりのなか」の子どもに深い理解を示すお父さんとは正反対のように見えますが、子どもを空想から現実世界へ引き戻すという点では同じ役割を持っているのです。

物語においては、子どもにとって父親は構造的に「現実」のシンボルなのかもしれません。

 

★        ★        ★

以上、少ないですが個性的な面々を取り上げてみました。

 

長い間絵本は「母親と子ども」のものだとされてきました。

しかしその古い認識を打ち破り、これからの時代、「お父さん」はどんどん絵本に登場するでしょう。

 

どんな新しいタイプの「お父さん」が描かれるか、楽しみな気持ちで待っております。

 

 

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

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スズキコージ「コーベッコー」出版記念絵本原画展とサイン会に行ってきました。

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

自由(過ぎる)発想とダイナミックな描写、不思議なキャラクターで異彩を放つ絵本作家、スズキコージさん。

6年前から移り住んだ神戸を題材にした絵本「コーベッコー」出版を記念した原画展が神戸元町の「Gallery Vie」で開かれています。

≫「Gallery Vie」HP

 

期間は今月の28まで(入場無料・月曜休館)。

「コーベッコー」原画の他にも様々な作品展示やポストカードや絵本の販売も行っており、見ごたえ十分です。

 

 

「コーベッコー」というタイトルは、「神戸港」と風見鶏の鳴き声を掛け合わせたもの。

内容はまあ、さすがのスズキコージワールド。

 

風見鶏が「コーベッコー」と鳴くところから物語は始まり、「ロッコーざん」の湖に金星が落ちてきて、船に乗った金聖人「ヴィーナスカ」が、神戸の名所を巡ります。

何だかわけわからないけど、うちの息子には大ウケでした。

スズキさんは子どもの喜ぶツボを心得てらっしゃる。

 

私たちが原画展に行ったのは先日の土曜日で、この日はスズキさんのサイン会も行われていました。

初めてお会いするスズキさん。

何しろあんな絵本を描いてらっしゃる方ですから、内心ちょっと危ない人かも……と怖がっていたんですが、イメージと違い、実にダンディでかっこいいおじさんでした。

お店に向けてサインをもらいました。

スズキさんに「面白い名前だねえ」と言ってもらいました。

 

上の図は神戸の地をかたどったデザインで、一筆書きで出来てるのです。

ブルジオ語(そんな言語初めて知りました)で「コージ」とサインされています。

いいところなんですよー」と目を細めて言うスズキさん。

 

この一筆書きサインが非常に息子の興味を引いて、他の方がサインをもらっている間も、ずーっとスズキさんの手元を凝視していました。

あんまり近すぎて、紙に顔が当たるんじゃないかという距離まで接近するので制止したら、スズキさんは「構わないよ」と素敵な笑顔。

息子は帰ってからこのサインを真似た絵を何枚も描いていました。

 

原画の方はやっぱり凄い迫力で、何と言っても100号キャンバスに描かれた「コーベッコー」の裏表紙の画は圧巻でした。

入場無料ですので、お近くの方は是非どうぞ。

 

スズキさん、どうもありがとうございました。

これからも応援しております。

 

スズキさんの絵本紹介記事

≫絵本の紹介「ガッタンゴットン」

≫絵本の紹介「ガラスめだまときんのつののヤギ」

 

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【西宮市大谷記念美術館】「2017イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」へ行ってきました。

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

「バベルの塔」展に続きまして、今度は毎年恒例のボローニャ国際絵本原画展を見に行きました。

西宮市大谷記念美術館で開催中。

今週末まで。

例によって例のごとく、終了日間際のレビュー。

 

ボローニャ国際絵本原画展とは、イタリア・ボローニャで毎年行われる絵本原画のコンクールで入賞した作品を展示するもの。

コンクールは絵本の原画を5点1組にすれば誰でも応募できるので、毎回世界各国から多くのイラストレーターたちが参加しています。

もちろん、日本人も。

 

私はこの展覧会に行くのはこれが初めてになります。

夏休みも終わったというのに、多くの来館者。

なかなかの人気です。

 

今回は日本人6名を含む26か国75作家が入選を果たしたということで、すべてを見て回るのには結構時間がかかりました。

以下、個人的な感想。

 

絵本から原画展に行く時は非常にワクワクしますが、原画から入ると、また違った趣があります。

全体として、確かにすごく上手い。

そして、ハイセンスな印象です。

どっちかというと大人向け。

もちろん、子どもがじっと見入るような絵もあるんですけど、単純な楽しさよりも、深いメッセージ性のある作品が多い気がしました。

 

それ自体は全然悪いことではありませんが、これだけ世界中から色んな作家さんの作品を集めているにも拘わらず、展覧会全体にどことなく統一感のようなものがあるのですね。

審査員が意識的にそうしたのかどうかはわかりませんが、私はもっとカオスな展覧会を想像していました。

だって、絵本って物凄く自由度が高く、それゆえに作家の個性が発揮されやすいメディアだからです。

 

その割に、今回の入賞作品はどこか似た雰囲気のものが多い。

あと、コラージュ手法がやたら多い気がしました。

コラージュ好きですけどね。

 

見たこともないような大胆な表現技法とか、思わず力が抜けてしまうようなゆるーいイラストとか、「これが絵本?」と思ってしまうような実験的な作品とか、そういうのを期待してたんですけども。

 

もちろん、そういう作品も多く寄せられていたのかもしれませんが。

繰り返しますが、作品そのものはすごくハイレベルだと思いますし、面白いものもたくさんありました。

 

入選作家の他作品を含む絵本展示ブースもあり、私はそこにいた時間が一番長かったです。

原画もいいけど、やっぱり「絵本」の形で手に取ってみたい気持ちが強いらしいです。

 

 

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「100冊分の絵本の紹介記事一覧

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【絵本のひきだし】林明子原画展へ行ってきました。【ひろしま美術館】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

はじめてのおつかい」から40年。

子どものほっぺを描かせたら日本一。

絵本作家・林明子さんの原画展「絵本のひきだし」へ行ってきました。

公式HP:『絵本のひきだし 林明子原画展

 

全国巡回中で、今月の27日まで広島で開催されてました。

その、最終日に行ってきたのです。

 

最終日のレビューとか誰の役に立つんだよと文句が出そうですが、今後も鳥取、兵庫、宮城と巡回予定ですので、参考までに。

 

というか、大阪に住んでるんだから兵庫の伊丹市立美術館開催(11月)まで待てばいいものを、わざわざ広島まで足を運ぶという、早いのか遅いのかよくわからないレポート。

 

いいんです、林さんの絵本が好きだから。

でも、このひろしま美術館は建物自体も美しく、緑も多くて気持ちいいところです。

展示場まで林さん絵本の登場人物たちが案内してくれます。

あっちが原画展。こっちはフランス近代美術コレクション展示

 

チケット一枚で、ピカソやゴッホ、ドガやシャガールなどのコレクションも鑑賞できるのはお得(だから終わってからそういうこと言っても)。

 

中も広々としていて、ゆっくり見て回ったせいか、原画展だけでも1時間近くかかりました。

 

林さんについては、これまでもこのブログで何冊か作品を取り上げています。

とにかく緻密で写実的でありながら、温もりと柔らかさのある突出した画力が特徴。

特に女の子の絵の可愛さは尋常ではありません

 

林さんの絵本にはすべてモデルが存在するのは有名ですが、今回の展示会では、実際に絵を描く時に参考にしたスナップ写真集も見ることができました。

 

改めて凄いと思ったのは、ほんとに写真そのままに描いてるところ。

あの「あさえとちいさいいもうと」の、あさえがあやこに靴を履かせているカットとか。

 

また、モデルは人物だけに留まらず、私が一番好きな「こんとあき」の「こん」も、林さんは自ら作ったぬいぐるみを見て絵を描いていたそうです。

その実物も展示されてました。

手先も器用なんですね。

こんのぬいぐるみは、絵本版よりもモコモコした素材で作られてました。

 

「こんとあき」に関しては、絵コンテ風のラフスケッチも展示されてました。

完成時にはカットされているエピソードを垣間見ることができ、感動。

砂丘で、あきの膝の上に寝かされるこんのカットとか、電車で切符を無くしてしまうこんの話とか。

 

児童書の挿絵の仕事としては何と言っても角野栄子氏の「魔女の宅急便」が有名ですが、原画展では現在は絶版の「北海道の牧場で」(岡部彰・著)という本のイラストも展示されており、これが驚嘆すべき完成度。

 

ペン一本で描かれたモノクロ画なのですが、その精密さといったら。

牛の毛並み、筋肉の隆起、牛舎の藁の一本一本に至るまで、まあよくここまで細かく描けたなという感じ。

絵本とはまた違った、林さんの技量の高さを見ることができました。

これが絶版とはもったいない。

 

グッズ売り場の目玉は、「はじめてのおつかい」に出てきた牛乳パック型の容器に入ったミルクラスク(750円)。

つい買っちゃったけど、これ、普通に飾っててもなんだかわからんな。

 

会場入り口ではこの「みいちゃんの牛乳パック」(グッズとは別の仕様)を持って記念写真を撮れます。

……が、男一人で行った私は、牛乳パックを持って後ろの方に「撮ってください」という勇気がありませんでした。

 

ともかく、広島まで行った価値はある原画展でした(もう終わってます。しつこいけど)。

伊丹に巡回してきた際には、また行ってみたいです。

 

このひろしま美術館では、今後は佐々木マキさんの原画展が行われるそうです。

それも行きたい……。

また、美術館から歩いていける距離には、原爆ドームや平和記念資料館もあります。

いつでも子どもが絵本を読むことのできる、平和な世界でありますように。

 

 

 

ちなみに家に帰った私が色々見せた写真の中で、一番息子のハートを掴んだのは、「路面電車」の一枚だったそうな。

 

関連記事

≫絵本の紹介「はじめてのおつかい」

≫絵本の紹介「おつきさまこんばんは」

≫絵本の紹介「こんとあき」

≫絵本の紹介「あさえとちいさいいもうと」

 

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「エリック・カール展」に行ってきました。

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

美術館「えき」KYOTOで開催中のエリック・カール展へ行ってきました。

公式HP→「エリック・カール展

チケットは一般が当日800円、前売り600円。

安いと思います。

 

開催初日ということもあり、なかなかの混雑でしたが、美術館内は広々としており、展示物はひとつひとつ近くでじっくり見ることができました。

 

●エリック・カールさんについて

カールさんは御年88歳。

写真などで見る限り、まだまだお元気そうです。

 

彩色した紙を切り取り、貼り合わせることで絵にするコラージュ手法が特徴的。

鮮やかで明るい色彩感覚が多くのファンを生んでいますが、カールさん自身の少年時代は、ヒトラー率いるナチスの政権下にある抑圧的なドイツで過ごされています。

 

ヒトラーは(他の独裁者同様)芸術を恐れ、弾圧していましたが、カールさんの高校時代の美術教師はカールさんの才能を見抜き、こっそり彼を自宅に呼んで、ピカソやマティス、クレーなどの作品の複製を見せてくれたそうです。

その出会いは衝撃的であり、後のカールさんの作品に大きな影響を与えたと本人が語っています。

 

美術館内の展示物は、「くまさんくまさんなにみてるの?」などに始まる過去の作品の原画と、絵本の習作(ラフスケッチのようなもの)、それに立体作品や舞台美術、ダンボールなどを使った前衛的な美術作品「天使」シリーズなど。

絵本だけに留まらないアーティストとしてのカールさんの仕事を知ることができます。

 

●巨匠レオ・レオニさんや日本との関わり

個人的に嬉しかったのは、少数ながらもレオ・レオニさんの作品展示もあったこと。

レオニさんは駆け出し時代のカールさんに仕事を紹介するなど、カールさんとは浅からぬ縁のある先輩です。

カールさんの絵本におけるコラージュは、レオニさんの影響によるところが大きいと思われます。

また、カールさんは日本とも繋がりが深く、あの有名な「はらぺこあおむし」を出版するにあたっては、印刷・製本は日本で行われていたのですね。

 

当時のアメリカでは、穴の開いた絵本の印刷はコストの面で敬遠されたという事情があったのです。

あの世界的ロングセラー絵本の誕生に、日本も大きく関わっていたと思うと、さらに親近感が湧きますね。

 

●オリジナルグッズと今後の巡回予定

グッズ販売コーナーでは、公式図録の他、缶バッジ、トートバッグ、ポップアップカードなどが陳列、どれも可愛いものばかり。

「ARIGATO」「DAISUKI」などの文字が入っているものも多かったです。

 

ちなみに、美術館がある伊勢丹7階のフロアにも、エリック・カール関連グッズ売り場が設けられています。

内容は別です。

 

今後の展覧会の巡回は、岩手県盛岡市、福島県いわき市の予定です。

↑また買っちゃった。

目を閉じて眠っているverもありました。

 

エリック・カールさんの作品紹介記事↓

≫絵本の紹介「はらぺこあおむし」

≫絵本の紹介「くもさんおへんじどうしたの?」

 

レオ・レオニさんの作品紹介記事↓

≫絵本の紹介「スイミー」

≫絵本の紹介「シオドアとものいうきのこ」

 

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「100冊分の絵本の紹介記事一覧

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