【絵本の紹介】「なずずこのっぺ?」【470冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は「昆虫語」で描かれた前衛的絵本「なずずこのっぺ?」を紹介しましょう。

作・絵:カーソン・エリス

訳:アーサー・ビナード

出版社:フレーベル館

発行日:2017年11月

 

「なずずこのっぺ?」ってなに?

このタイトルだけで手に取って開かずにはいられませんよね。
最初に書いたように、これは造語であり昆虫たちが喋る「昆虫語」です。
この作品は地の文が一切なく、全編通してこの「昆虫語」による昆虫たちの会話だけで物語が進みます。
当然意味はわかりません。
けど、言葉の意味がわからないながらも絵を読むことで物語の意味はわかります。
そして物語の意味がわかれば、だんだんと昆虫語を理解できるようになってくるという構造になっているのです。
昆虫の子どもたちが地面から吹いた芽を囲み、「なずず このっぺ?」「わっぱど がららん」などと言い合っています。
「なずずこのっぺ?」は「なにこれ?」のような意味、「わっぱど がららん」は「わかんない」といったところでしょうか。
やがて子どもたちは「コロジン」という名のダンゴムシのおじさんに梯子を借り、伸びてくる芽に自分たちの秘密基地的なものを作り始めます。
ですが、そこに巨大な蜘蛛「ムクジャランカ」が巣を張り、「フンクレガ ぽしゃり…」と子どもたちはがっかり。

しかし次の瞬間ムクジャランカは鳥に捕食され、「フンクレガ」は再び子どもたちの遊び場に。

そしてだんだんと成長した芽は綺麗な花を咲かせます。

昆虫たちは集まって「ルンバボン!」「みりご めりご ルンバボン!」。

 

やがては花も枯れ、子どもたちも秘密基地に「じゃじゃこん」(おそらく別れの言葉)。

 

そして季節は巡り…。

 

★            ★            ★

 

絵を読むことによって物語を想像する「テキストなし」の絵本は色々とあるんですが、「昆虫語」のみで語るというのはなかなか実験的。

 

しかも全くのでたらめというわけではなく、同じフレーズが別の場面で使われていることによって、ちゃんと意味を想像できるように構成されているところがポイント高い。

もう一つ翻訳版で感心するのは訳者の言語センスです。

 

「フクレンガ」は「隠れ家」を想起できるし、「わっぱど がららん」は「わからない」、「ぽしゃり」が「潰れる、駄目になる」といった意味を伴っていることは語感にも合う感じがします。

 

訳者はアーサー・ビナードさん。

日本人ではないのに日本人より日本語センスあるんじゃないかと思ってしまいます。

実際日本で様々な絵本の翻訳や詩作を発表しており、「ドームがたり」というアメリカ人の立場で原爆について語るという難しい絵本も手掛けています。

以前このブログでも取り上げました。

 

≫絵本の紹介「ドームがたり」

 

ちなみに原題は「Du Iz Tak?」。

英語話者にはまた違った語感で伝わるんでしょうね。

これを翻訳(?)するというのはとても難しいながらも面白い作業だと思います。

 

カーソン・エリスさんのイラストも素敵で、昆虫たちの擬人化は可愛いし、ちゃんとそれぞれの生態に従って動いています。

冒頭に蛹となった幼虫が最後に羽化するシーンなど、絵の隅々まで読む醍醐味もあります。

 

さらにちなみにですが、邦訳版のタイトルデザインは森枝雄司さん。

こちらもなかなかのセンスあるレタリングをされてます。

細部にわたって何度も新しい発見がある、楽しい作品です。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

オリジナル言語を考えたくなる度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「なずずこのっぺ?

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

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【絵本の紹介】「ピーターのめがね」【468冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回はエズラ・ジャック・キーツさんの「ピーター」シリーズを取り上げましょう。

回を重ねるごとに少しずつ成長していく主人公の黒人少年。

久しぶりに会うピーターはどのくらい大きくなったでしょうか。

ピーターのめがね」です。

作・絵:エズラ・ジャック・キーツ

訳:きじまはじめ

出版社:偕成社

発行日:1975年11月

 

これまでに紹介したシリーズ作品は以下の通り。

 

≫絵本の紹介「ゆきのひ」

≫絵本の紹介「ピーターのくちぶえ」

≫絵本の紹介「ピーターのいす」

 

「ゆきのひ」で初登場した純粋であどけないピーターも、今作ではすっかり逞しいニューヨークの少年に。

いい感じの親友アーチ―も登場し、愛犬ウィリーも一緒に土管が埋まった空き地の隠れ家で遊んでいます。

 

アーチ―もこれまた可愛らしい黒人の少年ですが、眼鏡をかけ、ピーターより小柄で大人しいキャラクター。

ピーターは隠れ家の近くでバイク用のゴーグルを拾います。

素敵な宝物に二人は喜び、アーチ―の家へ移動しようとします。

が、そこに大きな子どもたちが現れ、ゴーグルを横取りしようと絡んできます。

ニューヨークこわい。

しかしピーターははっきりと拒否し、両手のげんこつを固めて大きな子たちに立ち向かう姿勢を見せます。

強くなったね…。

 

けれども一瞬の隙を衝かれ、ピーターは殴り倒されてしまいます。

道に転がったゴーグルをウィリーが咥えて逃走します。

大きな子たちはウィリーを追いかけ、ピーターはアーチ―と隠れ家で落ち合おうと約束してばらばらに逃げ出します。

ウィリーは必ず隠れ家に戻ってくると信じて。

二人は無事に隠れ家に辿り着き、息を殺して土管から様子を伺います。

ウィリーはいましたが、いじめっ子たちの姿も見えます。

 

そこでアーチ―が機転を利かせ、土管を伝声管にしてウィリーを呼び込みます。

ウィリーはゴーグルを咥えたまま、土管を通って来ます。

さらにピーターは土管をうまく利用して追手を陽動し、無事にアーチ―の家へと逃げ切ります。

二人は小さな勝利に笑い合うのでした。

 

★            ★            ★

 

キーツさんの作品から伝わる温かさは、どう言ったらいいのでしょう。

陳腐な言い回しでしかないけど、やっぱり深い愛情、でしょうか。

デビュー前から温めていた主人公ピーターに対してはもちろん、キャラクターのひとりひとり、舞台となるニューヨークの街並み、作品の隅から隅まで、そしてそれを読む読者に対しての愛情も感じずにはいられません。

 

あの小さかったピーターが、自分のプライドをかけて大きないじめっ子たちに立ち向かうまでに成長したのだと思うと感慨深いものがあります。

実際、作者の育ったニューヨークではこんな光景はよくあったのでしょう。

 

小さい子どもたちが自分で自分の身を守り、機転を利かせて危機を脱するシーンには共感しますし、そうした経験がさらに子どもたちを成長させるのだという気もします。

とはいえ、現代では殴ったら大問題ですよね。

今でも喧嘩くらいはあるのかもしれないけど、表立っての殴り合いよりももっと陰湿な攻撃から身を護る術も必要な世の中になってきているのを感じます。

 

どちらがいいとは言えませんけど。

 

推奨年齢:6歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

ピーターとアーチ―の名コンビ度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ピーターのめがね

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【絵本の紹介】「ボールのまじゅつしウィリー」【463冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

うちの息子は何でも最悪のケースを想像しがちで、それもまるで現実的でない内容を心配します。

それこそ天が落ちてきたらどうしようかというレベルの「杞憂」です。

本人もそれが無意味であることは自覚しつつも、思考の暴走を止められず、埒もない繰り言を言っては行動をためらいます。

 

もっとも、息子ほどわかりやすい形でないにしろ、内向的で恐怖心が強く、自己否定に走りがちな子どもは少なくないものです。

それはある意味で精神的に老成しているとも言えます。

大人は自分の願望として、子どもを天真爛漫で未来への希望に満ち、輝いている存在として捉えたがりますけど、子どもが冷静に自分のことを見つめるとすれば、社会的に未成熟で生きるスキルが足りない事実に不安を感じ、押しつぶされそうになったとしても不思議はありません。

 

今回はそんなナイーブで内気な子どもの内面を描いた「ボールのまじゅつしウィリー」を読んでいきます。

作・絵:アンソニー・ブラウン

訳:久山太市

出版社:評論社

発行日:1998年1月30日

 

この見事なまでの擬人化イラストですぐにわかりますけど、以前に紹介した「ウィリーとともだち」と同じシリーズです。

 

≫絵本の紹介「ウィリーとともだち」

 

アンソニーさんの手腕については上の記事で詳しく触れていますので、是非併せてお読みいただければと思います。

この作品の主人公は他作品の「ウィリー」とおそらく同一人物ですけど、物語的な繋がりは見られません。

 

核は内向的で優しく、神経質で弱いウィリーのキャラクターにあります。

ウィリーだけがチンパンジーで、周囲はみんなマッチョなゴリラとして描かれることにより、ウィリーの劣等感が浮き上がるのは他シリーズと同じ見事な構造ですね。

テキストを用いずともこれだけで表現が完成するのは絵本の特性を最大に活かしていると言えます。

 

ウィリーはサッカーが好きで、チームに所属し、毎週練習に通っていますが、一度も選手に選ばれたことがなく、パスさえ回してもらえません。

ある日、練習の帰り道でウィリーは不思議な男の子を見かけます。

その子は一人でボールを蹴っていましたが、いつの間にかウィリーは彼と練習を始めます。

やがて男の子はウィリーにサッカーシューズを手渡します。

そしてそのままいなくなってしまいます。

 

家に帰ったウィリーはもらった靴を磨き、次の練習に使います。

古ぼけたサッカーシューズを履いたウィリーは別人のような活躍を見せ、周囲を驚かせます。

そしてウィリーは次の試合の選手に選ばれます。

ウィリーは嬉しさでいっぱいになり、毎日練習に励みます。

めきめきと上達し、ウィリーはこれは魔法の靴なんだと信じます。

 

そして試合当日。

不安と緊張で寝付けない夜を過ごしたウィリーは、舞い上がって大切な魔法の靴を忘れて試合に来てしまいます。

真っ青になるウィリー。

試合が始まり、もはや考える暇もなくボールを蹴り出すウィリー。

すると魔法の靴がなくてもウィリーは右に左に相手をかわし、魔術師のようにボールを操って見事なゴールを決めます。

 

試合はウィリーの大活躍で勝利。

ウィリーは観客の大歓声を受け、幸せな気持ちで帰路につきます。

 

★            ★            ★

 

いや、画力は言うに及ばず、それを含めたキャラクター造形の秀逸さ。

絵本においてこの手の主人公を魅力的に描くというのは、なかなか凡庸な作家になせる業ではないです。

 

歩道の継ぎ目を踏まないように注意して歩く。

階段を一段一段数えながら上る。

きっかり4分間歯を磨き、トイレに行って、ベッドにジャンプ。

このルーティンをけっして変えないウィリー。

 

このあたり、うちの息子に通じるものがあります。

彼らは決められたルーティンを変えることが不安で仕方ないのです。

 

試合に遅れそうになって慌てて駆けていくシーンでは、歩道の継ぎ目を踏んでいるウィリーの足元が描かれるという演出の妙。

主人公と共に読者を不安にさせ、けれども結果的には練習通りの大活躍を見せ、ラストカットで幸せな気持ちで歩くウィリーは意識もせず歩道の継ぎ目を踏んでいます。

 

これは別にウィリーが心身ともにマッチョになったということではありません。

ウィリーはウィリーのままであり、おそらくこれからもルーティンを守って生活するだろうし、明日からはまた歩道の継ぎ目を気にするかもしれません。

でも、自分の中で確実に何かが変わったという実感は、ウィリーのようなタイプの子どもだからこそ、とてつもなく深い喜びとして心に根差しているはずです。

 

似たような子どもを持つ親として、そして自身も弱いタイプの子どもだった人間として、作者のこのエールには涙が出そうになるのです。

 

推奨年齢:7歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

謎の少年の正体が裏表紙でわかる仕掛けの憎さ度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ボールのまじゅつしウィリー

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【絵本の紹介】「リンドバーグ 空飛ぶネズミの大冒険」【458冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は2014年の発表と同時に世界中で翻訳され、大ブレイクした絵本を紹介します。

リンドバーグ 空飛ぶネズミの大冒険」です。

作・絵:トーベン・クールマン

訳:金原瑞人

出版社:ブロンズ新社

発行日:2015年4月25日

 

あえて擦れたような古本感がインパクト大な装丁。

かなり話題になったので見たことある人も多いでしょう。

 

作者のクールマンさんはドイツのハンブルク応用科学大学に在学中、卒業制作としてこの絵本を描いたのですが、これが瞬く間に大ヒット。

上述したように世界各国で翻訳出版され、世界的な絵本作家として輝かしいデビューを飾ったのです。

 

とにかく画力に圧倒されます。

ページ数が多く、テキストには漢字も使われていますが、文量はさほど多くなく、子どもにも難しくはありません。

迫力のある構図が多用され、一枚一枚のカットをじっくり見ながら読んでいくとなかなか時間はかかります。

 

物語は港町に住む一匹のネズミが、自作の飛行機で海を渡り、アメリカを目指すという内容。

ネズミにとって危険が多く、安心して暮らせない港町から、仲間がいる自由の国アメリカへ渡ろうと考えたネズミですが、船に乗り込もうとすると猫に追い回されてしまいます。

図書館が好きで、様々な知識を持っていたネズミは、飛行機を作って空を飛んでアメリカへ渡ることを思いつきます。

何度も失敗を重ね、飛行機を改良していきます。

そんなネズミの飛行実験が人間の目に留まり、ちょっとした話題になります。

そしてネズミをつけ狙うフクロウたちの目にも。

 

たくさんの危険に囲まれながら、諦めずに工夫と努力を積み重ね、ついにネズミは大空へと飛び立ちます。

ネズミは海を渡り、ニューヨークへ着陸します。

仲間たちに歓迎され、そして人間たちはこの飛行ネズミのニュースで湧きかえります。

 

そんな飛行ネズミのポスターを見て、一人の少年が自分もいつか空を飛びたいと心を躍らせます。

その少年こそ、のちの歴史的英雄となったチャールズ・リンドバーグでした。

 

★                   ★                  ★

 

突出した画力についてはすでに触れましたが、構図も上手い。

ネズミのような小さな動物の目線で大きな世界を描くというのは絵本ではよく使われる手法ですが、フクロウや猫の迫力は大人でも思わずドキドキしてしまうほど。

 

そしてそんな小さく弱いネズミが知恵と勇気と不屈の精神で不可能を可能に変えるストーリー、歴史上の人物をモチーフにして、実際の航空史に興味を持たせる構成、細部まで描きこまれた飛行機の構造など、様々な要素が詰まっているところがこの作品の魅力であり、世界20か国以上で翻訳されたのも頷けます。

 

作者はこの大成功の後も精力的に制作活動を続け、「アームストロング」「エジソン」「アインシュタイン」などの歴史上の偉人をモデルにしたネズミの物語シリーズを次々に発表しています。

少しずつシリーズ同士の関連なども示唆されているので、そこもシリーズ通して読む楽しみとなっています。

 

推奨年齢:小学校低学年〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

絵の美しさ度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「オペラハウスのなかまたち」【453冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は今の子どもたちには馴染みが薄いかもしれない本格オペラを題材にした絵本を紹介します。

「オペラハウスのなかまたち」です。

作・絵:リディア&ドン・フリーマン

訳:やましたはるお

出版社:ブックローン出版

発行日:2008年10月10日

 

くまのコールテンくん」などで知られるドン・フリーマンさんと、妻のリディアさんによる共作絵本です。

 

≫絵本の紹介「くまのコールテンくん」

 

作者一流の躍動感あふれる絵の魅力が最大限に発揮された作品で、巨大なオペラハウスを舞台に、迫力ある構図が次々描かれて読者を引き込みます。

ページをめくると音楽が聴こえてくるようで、本当にオペラを観劇している気分になります。

まあ、私は実際にオペラを見に行ったことないんですけど。

 

ニューヨークはメトロポリタン・オペラハウス。

その屋根裏部屋に住む白ネズミ「マエストロ・ペトリーニ」一家。

ペトリーニの仕事はステージの裏方プロンプター氏の楽譜めくり。

オペラのステージにはこういうプロンプター・ボックスという観客からは見えない場所があって、プロンプター氏はそこから歌い手に合図を出したりしているらしいです。

 

ペトリーニは自分もオペラの大ファンで、休みの日には家族とオペラの劇を演じます。

みんなのお気に入りはモーツァルトの「魔笛」。

 

三人の子どもたちの希望もあり、ある日ペトリーニは家族をオペラハウスへ連れて行きます。

子どもたちにとってはじめての本物のオペラ鑑賞です。

出し物はもちろん「魔笛」。

家族はたくさんの観客に紛れ込んで席を陣取り、ペトリーニはいつものようにプロンプター・ボックスへ。

しかし、今日は音楽の魔力に引き込まれ過ぎたのか、舞台で鳥刺し役が笛を吹きならして動物たちが踊り狂う場面で、思わずペトリーニは仕事を忘れ、舞台に飛び出して演者と一緒に踊り出してしまいます。

 

幸い観客たちは小さなネズミには気づいていません。

しかし、やはりオペラハウスに住む音楽嫌いの猫のメフィストがペトリーニを見つけ、襲い掛かります。

二匹は舞台を駆け回り、ついにペトリーニはメフィストに捕らえられます。

あわやというところで、メフィストにも音楽の魔力が。

なんとメフィストとペトリーニは一緒に踊り出してしまいます。

 

オペラは無事に終わりますが、ペトリーニはプロンプター氏からこっぴどく叱られ、厳重注意を受けます。

魔法の解けたペトリーニは謝り、仕事を失わずに済みます。

家族はペトリーニの演技を拍手喝采でほめたたえ、その後、メフィストとペトリーニは大の仲良しになるのでした。

 

★                   ★                  ★

 

インターネット文化の発達で、いわゆる伝統的な芸能文化も手軽に動画で楽しめるようにはなりました。

でも、やっぱり実際に舞台へ足を運んで鑑賞することで得られる感動や経験は動画には代えられないですし、その文化がこれからも生き残るためにも、生の場は必要だと思います。

 

私自身も無教養で、オペラを楽しんだことはありませんが、それでもこの絵本を読むと一度は本物を観劇してみたいという想いにかられます。

考えてみれば私の場合、落語や浪曲も興味のきっかけは絵本でしたね。

本当に絵本からは様々なものを得られます。

 

私の息子も音楽は好きです。

本人は音痴ですが、いたって気にせずによく大きな声で歌ったりBGMをハミングしたりしています。

 

かといってオペラやコンサートに連れて行くには少々落ち着きがなく、なかなかその機会はありません。

この間初めて映画館に連れて行ったのですが、クライマックスシーンで耐え切れずに興奮して叫んでしまいましたし…。

 

息子とオペラ鑑賞できるのはいつでしょうね。

楽しみにしています。

 

推奨年齢:6歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

オペラを見たくなる度: ☆☆☆☆☆

 

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