【絵本の紹介】「きょだいなきょだいな」【230冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は「大きいことはいいことだ」な絵本、「きょだいなきょだいな」を紹介します。

作:長谷川摂子

絵:降矢なな

出版社:福音館書店

発行日:1994年8月20日(こどものとも傑作集)

 

元保育士の長谷川さんと、降矢さんによる共作。

降矢さんはスロヴァキア在住の絵本作家さん。

チェコスロヴァキアとか、日本ではマイナーな国かもしれませんが、実は知る人ぞ知る「絵本大国」なのです。

 

おしゃれで可愛い絵本がたくさんあって、コレクターの方も多いそうです。

日本では「もぐらくん」シリーズが有名。

 

さて、この「きょだいなきょだいな」は、空想力をどこまでも広げていく開放感に満ちた絵本です。

 

あったとさ あったとさ

ひろい のっぱら どまんなか

きょだいな ピアノが あったとさ

 

リズミカルな繰り返し文と共に、巨大な何かが次々と登場して、100人からの子どもたちが思う存分遊びまくる、という爽快な内容。

巨大ピアノの次は巨大せっけん。

電話にトイレットペーパーに桃、泡立て器に扇風機……。

 

何でもありのようで、実はどこの家庭にもあって、なおかつ子どもが遊びたがる(そして制止されてしまう)ものばかり。

長谷川さんのチョイスは実に的確です。

電話からはおばけが出てきたりして、ちょっと怖がらせ要素を含んでいるところも、子どもを引き付ける魅力なのです。

 

こうやって次々と「あったとさ」をやってるうちに、子どもたちは「こんなのは?」「これも大きかったら……」と、どんどん自分で想像力を駆使していくようになります。

100人の子ども+きつねくんの、それぞれの遊びっぷりや表情などを見るのも楽しみです。

よくよく見ると、色んな性格の子がいることも見えてきます。

 

最後は巨大扇風機で飛ばされて、お母さんのところへ帰って行きます。

 

★      ★      ★

 

子どもの空想力は果てしなく、自由で縛られない・・・などと言いますが、それはちょっと単純な見方だと思います。

空想力というものは、「子どもである」だけで無限に湧き上がってくるような力ではありません。

 

あまり真剣に考えている教育者は少ないように思いますが、空想力は訓練して適切に伸ばすべき種類の能力です。

訓練というのはもちろん遊びの中にあります。

 

まだ知識や経験が絶対的に不足している幼児に向かって、「さあ、自由に発想してごらん」と言ったって、困惑させるだけです。

こんな遊びがあるよ

こんなものがあったら面白いだろうね

と、まずは年長者たちが示してやることで、子どもたちの想像力は刺激され、活動を始めます。

その場合も、最初は真似・模倣から入り、単純な組み合わせに移り、そして自分だけの発想へと結びつけて行きます。

アイディアには「出し方」があるのです。

 

こういう力は、幼児期のうちに可能な限り伸ばしてやることが必要です。

大人になってからだと、なかなか難しいものです。

何をやればいいかわからないという方は、まずは絵本をたくさん読んであげるだけでも十分に効果があると思います。

 

長谷川さんと降矢さんの共作絵本では、「めっきらもっきらどおんどん」を、以前の記事で取り上げました。

≫絵本の紹介「めっきらもっきらどおんどん」

 

「きょだいなきょだいな」とは毛色の違う絵本に思われるかもしれませんが、私はこれらは実は似通った作品だと思っています。

それは子どもがその空想力を行使して異世界で遊び、そして最後は母親のもとへ戻ってくる、という形式を採用している点です。

 

すなわち「行きて帰りし物語」で、長谷川さんはこの話型を好んでいるようです。

同じ降矢さんとの共作絵本「おっきょちゃんとかっぱ」などもこの形式の物語です。

 

それはおそらく、「かいじゅうたちのいるところ」(モーリス・センダック作)の影響が大きいのではないかと思われます。

読み比べてみると面白いですよ。

≫絵本の紹介「かいじゅうたちのいるところ」

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

黒電話だけはさすがにもうないだろうな度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「きょだいなきょだいな

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

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【絵本の紹介】「ゆきだるま」【205冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのはブリッグズさんの「ゆきだるま」です。

作・絵:レイモンド・ブリッグズ

出版社:評論社

発行日:1978年10月10日

 

原題は「The Snowman」で、「スノーマン」というタイトルでの愛蔵版も出版されていますが、内容は同じです。

アニメーション作品にもなっているので、「スノーマン」の方が耳馴染みがあるかもしれません。

 

この作品の大きな特徴は一切テキストがないこと。

かと言って必ずしも幼児向け絵本というわけではなく、細かいコマ割りで進行するストーリーを追うには、それなりの読解力を要します(別に難しいものではありませんが)。

 

そして内容は、大人もホロッとさせられる、切なくて温かい物語です。

 

ある朝、主人公の少年が目を覚ますと、外は一面の雪。

少年は喜んで外へ飛び出し、雪だるま(スノーマン)を作ります。

 

なかなか大きな苦労作が完成し、少年は家に帰ってからも、外に立っているスノーマンを気にし続けます。

そして夜。

 

スノーマンが気になって寝付けない少年が外を見ると、なんとスノーマンが動き出します。

イギリスらしく、礼儀正しいスノーマン。

でも、家にある色んなものを珍しがる姿はコミカルで可愛らしい。

少年とスノーマンは一緒に遊び、食事をし、すっかり仲良くなります。

そして外に出ると、スノーマンは少年の手を引いて空へ飛び立ちます。

 

何とも夢に溢れたシーンです。

夜明け前に、二人は帰ってきます。

そして少年は部屋に戻り、元通り外に立っているスノーマンを気にかけつつも、疲れて眠り込んでしまいます。

 

やがて日が昇り、目を覚ました少年は朝ごはんも食べずに外へ飛び出します。

そこには……。

 

★      ★      ★

 

色鉛筆画が実にいい味を出しています。

ところで、この「スノーマン」もそうですが、海外の雪だるまって、日本のものと違うことに気づいてますか?

 

何が違うって、「足がある」こと。

海外の雪だるまは三段重ねが一般的で、目を石炭、鼻をニンジンもしくはミカンなどで作るのです。

日本の雪だるまはつまり「だるま」で、普通は足がないので二段なんですね。

 

作者のブリッグズさんの他の作品としては、「さむがりやのサンタ」などが有名で、心温まるお話を描くイメージですが、大人向けの、わりとブラックな作品も多数発表しています。

 

雪だるま、私は人生で一回もまともに作った記憶がありません。

生まれ育った大阪では、滅多に雪が降らないし、積もらないんですよね。

 

子どもの頃は待ち望んでいた雪ですが、大人になってからはもう、そうではありません。

寒いし。

 

でも、息子が生まれてからは、また雪を待っている自分がいます。

息子はまだ積雪を見たことがないので、きっと喜んで遊ぶでしょう。

そう思って、冬になると空を見上げるようになりました。

 

もし積もったら、大きい雪だるまを作って父親らしいところを見せたいと思っております。

自信はありませんが。

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ゆきだるま

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【絵本の紹介】「急行「北極号」」【203冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

早いもので、今年も終わりが見えてきました。

そろそろクリスマス絵本も取り上げていきたいと思います。

 

今回は「急行「北極号」」を紹介しましょう。

作・絵:クリス・ヴァン・オールズバーグ

訳:村上春樹

出版社:あすなろ書房

発行日:2003年11月10日

 

ジュマンジ」と同じく、映画化もされたオールズバーグさんの傑作絵本。

 

≫絵本の紹介「ジュマンジ」

≫絵本の紹介「魔術師ガザージ氏の庭で」

 

私は観ていませんが、映画版のタイトルは原題の「ポーラーエクスプレス」です。

確かに、オールズバーグさんの絵本はどれも映画映えしそうな作品ばかりで、特にこの「北極号」の幻想的シーンの数々を映像化してみたいと思う製作者側の気持ちは理解できます。

 

これまでこのブログで紹介したオールズバーグさんの絵本はどちらもモノクロ作品でしたが、今回はカラー彩色。

抑えた色調ながらも、効果的な美しさを放っています。

凍てつく夜空に舞う雪。

そして光。

 

オオカミのうろつく森の中を一直線に走る「北極号」の印象的なことといったら。

私は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を連想しました。

 

どこか不可解さを残す結末の多いオールズバーグさんの絵本ですが、この作品では、実に心温まるハッピーエンドが描かれています。

 

クリスマスイブの夜中、サンタを信じて鈴の音を待つ少年が体験した、奇跡の物語。

突然家の前に停車した汽車「北極号」に、少年は乗り込みます。

中にはたくさんのパジャマ姿のままの子どもたち。

汽車は北極点を目指して、北へとひた走ります。

 

到着した北極点は大きな町。

ここの工場で、世界中の子どもたちへのプレゼントが作られており、「北極号」に乗った子どもたちの中から、サンタがプレゼント第一号を渡す子どもを選ぶのだと車掌が説明します。

町の真ん中に集まった小人たち。

そしてサンタが姿を現し、少年はプレゼント第一号を渡す相手に選ばれます。

 

何が欲しいかを尋ねられて、少年は、サンタのそりについている銀の鈴が欲しいと言います。

サンタはそれを少年に手渡してくれます。

 

しかし、帰りの汽車の中で少年は、ポケットに穴が開いていて、鈴をなくしてしまったことに気づきます。

がっかりする少年。

でも家に送り届けられ、次の日のクリスマスの朝、妹のサラとともにプレゼントの包みを開けて行くと……。

 

★      ★      ★

 

ラストのページで、小さな鈴のカットとともに、印象的に語られるメッセージ。

サンタの鈴の音は、子どもには聴こえる。

けれど、周りの友達も、妹も、大人になるにつれ、その音を聴くことができなくなっていきます。

しかし、主人公はすっかり大人になってしまった今でも、その音を聴くことができるのです。

 

子どもの頃に持っていた純真さ、物事をありのまま見る目。

そういうものは大人になるにつれ失われていきます。

そうなれば、もう聴こえないもの。

この物語で「鈴の音」と表現されているものは、実は私たちの過ごす日々の中に、たくさん存在しているのではないでしょうか。

 

子どもには見えるもの、聞こえるもの、感知されるもの。

それは確かに存在するのだけれど、知識を身に付けることでそうしたものを否定するようになると、もう感じ取れなくなります。

「大人になる」ことは、そういう意味では「退化」とも言えます。

 

人類の進化を、一人の人間の成熟過程として見てみると、やはり昔の人々のほうが、「目には見えないもの」を感じ取る能力が発達していたように思われます。

それらを迷信や妄信といっしょにして、価値のない幻想だと嘲笑うことは簡単です。

しかし、太古の人々は、現代の科学がいまだに説明できないような文明を残してもいるのです。

 

科学の発展は素晴らしいことだと思います。

でも、だからといって「感性」の領域を軽視する必要はないのです。

子どもの持つ感性を残したまま成長すること。

人類の進化の仕方についても、同じことが言えるのではないでしょうか。

 

大切なものは何なのか。

大人の心にこそ、深いメッセージを残す絵本です。

 

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【絵本の紹介】「かようびのよる」【197冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今日は火曜日。

ハロウィンとは関係ありませんが、不思議で怪しい気分を呼び起こしてくれる絵本を紹介しましょう。

かようびのよる」。

作・絵:デヴィッド・ウィーズナー

訳:当麻ゆか

出版社:福武書店

発行日:1992年1月20日

 

毎回「衝撃的」と評される作品を発表し続ける奇才・ウィーズナーさん。

これは彼の最初のコールデコット賞受賞作品です。

 

「最初の」というのは、ウィーズナーさんはこの絵本界最高の賞を三度も受賞しているのです。

これはかなり凄いことです。

 

彼の作品は概して文字が少なく、絵の力のみで物語を構成することが多いのですが、この「かようびのよる」も、テキストは最低限に削られています。

かようび、よる8時ごろ・・・

という一文だけが印象的に差し込まれ、あとは読者自身がここで起こる不思議な現象の「目撃者」となります。

そのワクワク感がたまりません。

突然、カエルが乗った蓮の葉が宙に浮きあがり、無数のカエルたちが空中飛行を始めます。

 

これはカエルたち自身の意思とは無関係らしく、カエルたちも驚いた表情を見せます。

が、すぐにこの空中遊泳を楽しみ始めます。

 

そのカエルたちのユーモラスなこと。

民家の庭の洗濯物の中に突っ込み、シーツをマントにしてスーパーマン気取り。

さらに家の中に侵入し、居眠りしているおばあさんの前で、テレビを鑑賞。

リモコンは舌で操作。

 

犬に見つかって吠えられるも、数の力で逆に追いかけ回します。

しかし、夜明けが近づくにつれ、魔法の力は弱まり……。

蓮の葉は浮遊力を失い、カエルたちは次々に落下し、すみかに帰って行きます。

 

朝が来て、地元の警察やマスコミが街じゅうに散らばった蓮の葉を調べ、この不可思議な現象に首をひねります。

そして、また次の火曜日……。

 

★      ★      ★

 

本文にはありませんが、カバーの袖部分に書かれた「この本にしるしたできごとは、とある町でかようびのよるほんとうにおきたことである」という文句が、読者の想像力をさらに刺激します。

 

で、こうした出来事は本当にあったのです。

突然に上空から魚やカエルなどが降ってくる事例は過去にいくつも報告されており、日本でも2009年にオタマジャクシが降っています。

これらはファフロツキーズ(日本では怪雨)と呼ばれ、竜巻や鳥、飛行機などが原因ではないかと考えられていますが、はっきりしたことはわかっていません。

 

そういう事実は脇においても、ウィーズナーさんの描写のリアリティは、読む者に「本当にあるかも」と思わせるに十分な力を持っています。

ウィーズナーさんはとにかく細部までの圧倒的なリアリティにこだわりを見せます。

それは絵の写実性とは別領域の問題です。

 

映画などでも、せっかく素敵なストーリーや設定があっても、ちょっとした「リアリティの欠如」が目に付くと、とたんに冷めてしまい、物語に入り込めないということがあります。

「どうせフィクションだから」では済まされない。

 

それは子どもも同じことです。

彼らはある意味では大人以上に合理的思考をします。

物語が「ありえるか、ありえないか」が重要なのではありません。

大切なのは「納得感」です。

 

ところで、この物語の中で唯一のカエルの目撃者となる男性ですが、写真で見たウィーズナーさんにそっくりなんですね。

あれはやっぱり、作者本人なのでしょう。

私たちは絵本を読むことで、作者と共に秘密を分け合う存在になるのです。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

どうしてもジョジョを思い出す度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「かようびのよる

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【絵本の紹介】「なみにきをつけて、シャーリー」【174冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は久しぶりにジョン・バーニンガムさんの絵本を取り上げます。

なみにきをつけて、シャーリー」です。

作・絵:ジョン・バーニンガム

訳:辺見まさなお

出版社:ほるぷ出版

発行日:1978年9月10日

 

イギリスを代表する人気絵本作家のバーニンガムさん。

奥さんは同じ絵本作家のヘレン・オクセンバリーさん。

 

≫クシュラの奇跡(「ガンピーさんのふなあそび」紹介)

≫絵本の紹介「ボルカ はねなしガチョウのぼうけん」

 

毎回実験的な絵本作りを試みるバーニンガムさん。

この作品でも、変わった趣向を凝らしています。

 

最初と最後のページを除き、全編が右と左のページで、まったく違う世界を描いているのです。

両親と海へ行ったシャーリーは、海賊と宝を巡っての大冒険を空想します。

両親は浜辺に腰かけ、娘にくどくどと小言を言い続けます。

 

シャーリーと両親、それに犬が海辺にやってくる冒頭。

みずが つめたくて とても およげないわよ

と母親が言っているところを見ると、少々時季外れのようです。

たぶん、シャーリーがどうしても行きたいとねだったんでしょう。

 

両親は折り畳み式の椅子に腰かけ、新聞を読んだり、編み物をしたり。

シャーリーは波打ち際に立ち、すでに空想の世界へ入り込んでいます。

母親はシャーリーに対し、あれこれ口を出さずにはいられません。

靴を汚さないように、石を投げないように、飲み物はいらないの? 等々。

一方のシャーリーは、すっかり自分の世界に入っています。

シャーリーの想像世界の中では、彼女は犬を連れてボートで海賊船に乗り込み、海賊どもを相手に大立ち回りを繰り広げ、宝の地図を奪って脱出し、ついに宝の島を探し出し、財宝を手に入れるのです。

 

★      ★      ★

 

文章の(いい意味での)素っ気なさはいつも通り、というか、母親のセリフのみ。

ですので、読む側が想像力を働かせなければ、この絵本は読めません。

バーニンガムさんは度々こういう手法を用います。

 

何を言われても上の空のような子どもと、何かを言わずにはおれない親。

誰もが思い当る光景ではないでしょうか。

 

しかし、バーニンガムさんは何も、シャーリーの両親を「子どもに無理解な、ひどい親」として描いているわけではありません。

ただ、「そういうものだ」ということを、両者の見ている世界の対比によって際立たせているのです。

 

子どもと大人との間には、こうした「溝」が存在するのだということ。

その「溝」を認識できれば、子どもに対してイライラしたり、「どうしてわからないの!」とキレてしまうことも減るんじゃないでしょうか。

 

それに、注意深く読んでみると、シャーリーは決して母親を無視しているわけではありません。

母親のセリフが、彼女の空想世界に、何らかの波紋を投げかけています。

あたらしいくつを きたないタールで よごしちゃだめよ

と言われると、次のシーンではシャーリーは(現実とは違い)真っ黒な靴を履いています。

いぬを ぶったりしちゃ だめよ

と言われると、犬が海賊に噛みつき、活躍します。

いそがないと おそくなっちゃうわ

と聞くと、空想世界は真っ暗な夜に変化します。

 

子どもが、現実と空想の「境界」を漂うように生きるというのは、こういうことでしょう。

親から見れば、全然こちらの話を聞いていないように見える子どもは、こんな形で「聞いている」のです。

だから、「お母さんの話を聞いてるの!?」と怒鳴られると、たいていの子どもは憮然とした表情になるんでしょうね。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆☆

犬はどこ行ったの度:☆☆☆☆☆

 

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