【絵本の紹介】「ひ・み・つ」【152冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今日は7月7日。

ということで、七夕にぴったりの一冊を紹介しましょう。

 

田畑精一さん作、「ひ・み・つ」です。

作・絵:田畑精一

出版社:童心社

発行日:2004年5月30日

 

田畑さんは人形劇団で活動後、古田足日さんとの出会いを経て、絵本作りの仕事に入っていきました。

代表作は古田さんとの合作「おしいれのぼうけん」。

神沢利子さんとの合作「キミちゃんとかっぱのはなし」など。

 

≫絵本の紹介「おしいれのぼうけん」

 

自分で文も担当した作品では「さっちゃんのまほうのて」「さくら」など、障害や戦争といったディープなテーマに正面から向き合っています。

 

が、この「ひ・み・つ」はいたって明るく、心温まる物語です。

 

主人公のゆうき少年は、七夕の日に80歳の誕生日を迎える「しんばあちゃん」に、欲しいものは何か、手紙で尋ねます。

おばあちゃんは、ゆうきの笑顔があれば何にもいらないけれど、本当は一つだけ欲しいものがあるの、と返事を書きます。

 

ひ・み・つ だよ!

と前置きしてから、その願いを打ち明けます。

 

それは、40年前に亡くなったおじいさんとダンスを踊ること。

さあ、ゆうきは大好きなおばあちゃんの願いを叶えようと、大奮闘を始めます。

どうやったら天国のおじいちゃんに会えるだろう。

 

お母さんに相談しようにも、おばあちゃんに「ひみつだよ」と言われているので、話すわけにはいきません。

 

友達にアドバイスをもらって、去年の劇で使った魔法使いの帽子(しんばあちゃんが作ってくれたものです)をかぶり、願いを唱えると……。

 

突然、猫や犬が話しかけてきます。

 

彼らに従い、お宮の森へ行き、ふくろうじいさんに会います。

天国に行くことはできないけれど、七夕の夜に織姫様と彦星様に願いをかければ、その願いは天国へも届くはずだと教えられ、ゆうきは友達と一緒に七夕祭りの準備に取り掛かります。

 

そして、七夕の夜。

眠りについたしんばあちゃんの前に、おじいさんが現れます。

二人は若返った姿で、星たちの演奏に合わせて、ダンスを踊ります。

 

★      ★      ★

 

七夕って、実は雨が多い季節なんですよね。

だからこそ、織姫・彦星の逢瀬がより儚く、ロマンチックに思えるのかもしれません。

 

それにしても、少女のように可愛くて素敵なおばあちゃんですね。

そして、おばあちゃんの秘密の願いを叶えようと、一生懸命なゆうきの健気さにも心を打たれます。

 

勇気、友情、大切な人への想い……様々なものが詰まった絵本です。

ラストの、ダンスシーンの幸せそうなこと。

 

田畑さんの色彩豊かな絵も魅力的。

最終ページの、ポケットに手を突っ込んで立つゆうきの顔からは、何かを成し遂げた子どもの、静かな自信と成長が感じられます。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

ロマンチックばあちゃん度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ひ・み・つ

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「100冊分の絵本の紹介記事一覧

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

絵本の買取依頼もお待ちしております。

 

〒578−0981

大阪府東大阪市島之内2−12−43

URL:http://ehonizm.com/

E-Mail:book@ehonizm.com

絵本の紹介「おまえうまそうだな」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは宮西達也さんの「ティラノサウルスシリーズ」の一作「おまえうまそうだな」です。

作・絵:宮西達也

出版社:ポプラ社

発行日:2003年3月

 

アニメ化もされた人気作。

ぐーん、と一気に描いたような力強い線。

子どもが描いたような(もちろんわざとでしょうけど)、荒々しくて単純な絵で、主人公が恐竜。

 

一見すると、比較的小さな子向けの作品なのかと思えますが、実は感涙必至のドラマなんですね。

 

宮西さんは多数の作品を手掛ける人気作家ですが、「愛」や「情」をテーマにした作品を得意としていて、そのほとんどは、大人が読んでも(むしろ大人の方が)泣けるお話ばかりです。

 

一方で、子どもの喜ぶツボもしっかり押さえています。

恐竜の他にも、ウルトラマンやトラックなど、全体に男の子向けの題材の作品が多いようです。

 

さて、内容に入りましょう。

 

むかし むかし おおむかし

それこそ恐竜時代の大昔。

 

アンキロサウルスの赤ちゃんが孵化します。

周囲に親の姿はなく、心細くて泣いているアンキロサウルスの前に、恐ろしげなティラノサウルスが現れ、

ひひひひ……おまえ うまそうだな

そう言って飛びかかろうとした時、なんとアンキロサウルスはティラノサウルスに抱き着き、

おとうさーん!

 

面食らうティラノサウルスに、アンキロサウルスは

ぼくの なまえ、よんだでしょ

『おまえ うまそうだな』って。ぼくの なまえ ウマソウなんでしょ

 

という、「ルドルフとイッパイアッテナ」的勘違いにより、ティラノサウルスを父親と認識するのです。

 

なんとなく気を削がれたティラノサウルスは、そのままウマソウと暮らし始めます。

自分を父親と信じ込み、無邪気でまっすぐな信頼と愛情を寄せてくるウマソウに、次第に情が芽生えてゆくティラノサウルス。

 

外敵からウマソウを守ったり、戦う術を教えたりするようになります。

 

しかし、この関係の切ないところは、一方のティラノサウルスは、自分は決してウマソウの本当の親ではないことを知っている点。

彼にとってウマソウが大事な存在になればなるほど、いつかは別れなければならないと思うようになっていくのです。

 

そしてついにある夜、ティラノサウルスはウマソウにさようならを告げます。

当然ウマソウは泣いて拒否します。

 

いやだー! いやだー! ぜったい いやだー!

ぼく、おとうさんみたいに なりたいんだ。おとうさんと ぜったい いっしょに いる!

 

ウマソウ、おれみたいに なったら だめなんだ

それでも離れようとしないウマソウに、ティラノサウルスは、

あそこの やままで きょうそうしよう

おまえが おれに かったら、ずーっと いっしょに いてやる

 

ウマソウはその言葉を信じ、走り出します。

ティラノサウルスはその場を動かず、ウマソウの後ろ姿をじっと見守ります。

 

そして、ウマソウの走って行った先には―――

 

★      ★      ★

 

もちろん、私も号泣しました。

 

ただ、ティラノサウルスの心情の変化を、幼い子どもに理解できるかどうかは微妙だと思います。

案の定、うちの息子(3歳)も、このラストシーンにはきょとんとした様子でした。

 

古典絵本には、この手の「泣ける」物語というのはほとんど見られません。

現在は大人向けに、感動・感涙を誘う絵本がたくさん出版されるようになりました。

 

それは絵本の多様化が進んだ結果で、それ自体は喜ばしいことだと思います。

けれど、いくら絵本が進化しようとも、子どもの成長速度は変わりません。

 

うちの息子は早い時期からの読み聞かせによって、2歳以前には文章を読めるようになり、語彙も豊富で、知力レベルでは同年代の子に比べて進んでいると言えます。

でも、情緒のレベルに関しては、さほど他の子と違いはありません。

 

子どもの情緒はそんな急激に発達するものではなく、人生経験を伴って、あくまで緩やかに成長するものです

そして、そうでなくてはならないと思います。

 

絵本を選ぶ際、「最初のうちは、わかりやすい形のハッピーエンドを」というのは、そのためです。

 

かといって、小さな子にこの絵本を見せてはいけないということではありません。

前述したとおり、たとえ物語の繊細な感情が理解できなくても、この絵本には子どもが喜ぶ要素がたくさん含まれています。

ただそれを楽しむだけでも構わないのです。

 

読み聞かせる側は、そのことを理解し、けっして子どもを感動させようなどとは気負わないことです。

 

いつか子どもが懐かしさから、ふとこの絵本を手に取るようなことがあれば、その時に「ああ、あのころ読んでもらったこの絵本は、本当はこんなお話だったんだ」と、もっと深く感動できるはずです。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

孫悟飯とピッコロさんを思い出す度:☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「おまえうまそうだな

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

絵本の買取依頼もお待ちしております。

 

〒578−0981

大阪府東大阪市島之内2−12−43

URL:http://ehonizm.com/

E-Mail:book@ehonizm.com

絵本の紹介「ハナミズキのみち」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

明日で東日本大震災から6年。

 

亡くなった人々の無念、残された人々の悲嘆、そうした想いは悲しいことに年々風化していきます。

私には、それらを語る言葉がありません。

 

代わりに、震災から生まれた絵本を紹介します。

ハナミズキのみち」。

文:淺沼ミキ子

絵:黒井健

出版社:金の星社

発行日:2013年5月

 

著者の淺沼(あさぬま)さんは、絵本作家ではありません。

岩手県陸前高田市の観光協会に勤める方です。

 

淺沼さんは2011年3月11日、震災による津波で、当時25歳だった息子の健(たける)さんを亡くしました。

 

消防団員だった健さんは、震災直後、高校生らを避難場所の市民会館へ誘導していました。

淺沼さんはこの姿を目撃しています。

 

人々を守ろうとする息子の姿に、誇りと頼もしさを感じ、その場を離れ、自身も自宅へ避難しました。

しかし、それが息子を見る最後の機会でした。

 

津波の巨大さは人々の想像をはるかに超え、避難場所の市民会館ごと押し流してしまったのです。

 

息子を失った淺沼さんは、悲しみのあまり眠れない夜が続き、呼吸困難に陥ることもありました。

 

何をしていても涙がこぼれる。

そんな日々が続きました。

 

けれどもある日、浅沼さんの夢枕に健さんが現れ、そしてはっきり聞こえる声で言ったそうです。

 

いつまでも悲しまないで。それより、もう誰も津波で亡くならないように、高台への避難路に、目印にハナミズキを植えて

 

淺沼さんは「ハナミズキのみちの会」を立ち上げ、多くの賛同者とともに、海から高台へ続く避難路の道沿いに、ハナミズキを植える活動を始めました。

 

もう誰も悲しまないように。

 

悲しみや辛さから目を背けるのではなく、それらを受け止めた上で、自分のやるべきこと、できることを、どんなに小さなことからでも始める。

それが本当の「前向き」な態度であり、「生き直す強さ」だと思います。

 

私の想いを受けてください

 

―――ハナミズキの花言葉です。

 

推奨年齢:6歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ハナミズキのみち

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

絵本の買取依頼もお待ちしております。

 

〒578−0981

大阪府東大阪市島之内2−12−43

URL:http://ehonizm.com/

E-Mail:book@ehonizm.com

絵本の紹介「ゆずちゃん」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

阪神・淡路大震災から、今日で22年も経つのですね。

 

「あの日」を描いた絵本、「ゆずちゃん」を紹介しましょう。

作:肥田美代子

絵:石倉欣二

出版社:ポプラ社

発行日:1995年5月

 

小学生の男の子・たいち少年の目線で、震災で亡くなったゆずちゃんという女の子(あとがきからすると実在したようです)のことが語られています。

 

隣の席のゆずちゃんは、かけっこは早いけど、跳び箱は苦手。

歌はうまいけど、算数は嫌い。

将来の夢は、風船屋さん。

 

よく笑うゆずちゃんに、たいちは時々意地悪をしてしまうけれど、内心では好感を抱いています。

 

しかし、震災の日、ゆずちゃんは倒壊した家の下敷きになって死んでしまいます。

ゆずちゃんの死を、受け入れられないたいち少年。

ゆずちゃんとのお別れの日、みんなが、ゆずちゃんの好きだった風船を空に飛ばします。

ゆずちゃん、―――ふうせん、みえるか

 

★    ★    ★

 

親しい人間との、突然の、永久の別れ。

正直、子どもに読み聞かせるのは辛い絵本です。

 

震災の日、中学生だった私は大阪市内の自宅で寝ていました。

生まれて初めての大きな揺れを経験しましたが、家の中がめちゃめちゃになった程度で、家族の誰にも怪我一つありませんでした。

 

そのせいか、あまり事の重大さを認識していませんでした。

怖いとも何とも思わず、ちょっとした非日常体験をした程度に感じていたのです。

本当に精神年齢の幼い、想像力も乏しい子どもだったんですね。

 

ですが、ほんの近くにある神戸では、比較にならないほどの甚大な被害が出ており、私と同じくらいの年齢の子どもたちも大勢亡くなっていたのです。

同級生の中にも、親類を亡くした子がいました。

 

当然のように生きていること。

それ自体が、実はとてつもない確率の幸運であることを、私たちは忘れがちです。

 

明日起きるかもしれない地震、災害、事故。

私がそれらを本当に怖いと感じたのは、子どもが生まれてからでした。

最悪の光景を、想像せずにはいられないからです。

そしてその度に、今してやれるだけのことをしてやっているか―――と自問するのです。

 

推奨年齢:6歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

 

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

絵本の買取依頼もお待ちしております。

 

絵本専門の古本屋 えほにずむ

〒578-0981

大阪府東大阪市島之内2-12-43

URL:http://ehonizm.com

E-Mail:book@ehonizm.com

絵本の紹介「ビロードうさぎ」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

12回にわたって更新してきたクリスマス絵本特集も、今回で最終回となります。

※ショップでのご注文は随時承っております。本日(12/21)中のご注文で、クリスマスに間に合う発送が可能です。

 

さて、最終回はやっぱり古典的ロングセラーを紹介しましょう。

ビロードうさぎ」(文:マージェリィ・ウィリアムズ、絵:ウィリアム・ニコルソン、訳:石井桃子、童話館出版)です。

この作品が発表されたのは1922年ですから、実に一世紀近く前のことで、それから現在に至るまで読み継がれている名作絵本です。

今回紹介しているのは、岩波子どもの本シリーズ「スザンナのお人形・ビロードうさぎ」(初版1953年)の中の「ビロードうさぎ」を新しく翻訳し直し、2002年に童話館より出版されたものです。

挿し絵は原書のものを再現しています。

 

ちょっと字が多く、話も長めですが、大人が読んでも感動できる美しい絵と訳文です。

 

ある年のクリスマスに「ぼうや」に贈られた、木綿のビロードでできたおもちゃのうさぎ。

しかし、ほかの高価なおもちゃたちは、ビロードうさぎを見下し、馬鹿にしていました。

高価なおもちゃたちは自分のことを「ほんとうのもの」だと思っていたのです。

けれども、ビロードうさぎは、そもそも「ほんとうのうさぎ」というものさえ知らなかったのです。

そんなわけで、ビロードうさぎはおもちゃたちの中で、肩身の狭い思いをしていました。

 

ある時、ビロードうさぎは仲良しの木馬に聞いてみます。

ほんとうのものって、どんなもの?

 

年を取った木馬は、こんな答えを返します。

ほんとうのものというのは、からだがどんなふうにできているか、ということではないんだよ

わたしたちの心とからだに、なにかがおこるってことなのだ

 

誰かが長い間、芯から可愛がったおもちゃは、ほんとうのものになれるのだ、と木馬は言います。

 

それからしばらくして、ビロードうさぎはぼうやと一緒にベッドで寝るようになります。

ぼうやはビロードうさぎをとても可愛がり、大事にしてくれました。

ビロードうさぎは、自分は「ほんとうのうさぎ」になれたのだと喜んでいました。

 

けれど、ある日、ビロードうさぎは外で本物のうさぎに出会います。

自分が彼らのように自由に跳び回れないことに、ビロードうさぎはショックを受けます。

ビロードうさぎは、ぼうやにとってだけ「ほんとうのうさぎ」であればいいと思うようになります。

長い時が過ぎ、毛が抜け落ち、みすぼらしくなっても、ぼうやは変わらずにビロードうさぎを愛してくれました。

 

しかし、ある時、ぼうやは病気になり、高熱でうなされます。

医者や大人たちは、ぼうやの身辺を消毒し、本やおもちゃはみんな焼いてしまうことにします。

ぼうやが大事にしていたビロードうさぎも、

それこそ、猩紅熱のバイキンの巣だ! すぐに焼いてしまわなくちゃいけない

と、医者の指示によって、ぼうやから引き離され、袋に入れられてトリ小屋の後ろに放り出されてしまいました。

 

幸せだった日々を思い出し、今の境遇を思って、ビロードうさぎが涙を流したとき、奇跡が起こります。

ビロードうさぎの涙が落ちたところから花が咲き、「子ども部屋の妖精」が現れます。

これからは、あなたは、だれが見てもほんとうのうさぎになるのです

 

そう告げられ、連れて行かれた森で、ビロードうさぎは、自分のからだがすっかり変わっていることに気が付きます。

他の野うさぎの仲間たちと同じように、自由に跳んだり跳ねたりできるようになっていたのです。

 

こうして、ビロードうさぎはついに「ほんとうのうさぎ」になることができたのでした。

 

 

―――とても深い話です。

「ほんとうのもの」とは、何を指すのでしょう。

長い間読み継がれる名作というものはすべからくそうですが、単一の解釈というものに嵌め込まれません。

ですから、私も自由に、自分なりの解釈をしてみようと思います。

 

「おもちゃたち」は、われわれそのものです。

いかに自分の見た目や富や能力を誇っても、しょせんは「おもちゃ」であり、様々なものに縛られ、自分の意思で生きることのできない不自由な存在です。

 

「ほんとうのもの」になるということの意味は、「精神が解放され、自由な存在になる」ことです。

 

木馬は「いちど、ほんとうの馬になってしまうと、もう、もとにはもどらないんだ。ずっと、ほんとうの馬でいるのさ」と言います。

「精神の自由」という光を獲得したものは、たとえ肉体や境遇がどうあろうとも、「自分自身の生」を生きることができるのだという意味でしょう。

 

仏教的に言えば「解脱」ですが、これは別に肉体を捨てて魂的世界へ行くことを意味しているわけではありません。

現に、ビロードうさぎは最後に「ほんもののうさぎ」として、ちゃんとぼうやと同じ世界を生きています。

ビロードうさぎはこれから新たな存在として、「自分自身の生」を生きるのです。

 

「ほんもの」になったうさぎが、これからこの世界ですることは何でしょう。

それはきっと、自分がぼうやにしてもらったように、他の誰かを「ほんとうのもの」にすることでしょう。

 

「おもちゃたち」を「ほんとうのもの」にするのは、持ち主の心の底からの「愛」です。

「精神の自由」=「自分自身の生」を獲得するためには、他者からの無償の愛が必要なのです。

誰かに心から愛されること。

自分自身を心から愛すること。

そうした後に初めて、ひとは誰かを愛することができるようになります。

 

愛による「正の連鎖」は、憎悪による「負の連鎖」よりも遥かに構築が難しく、時間もかかります(いかなる時も、創造よりも破壊のほうがたやすいものです)。

しかし、「ほんとう」の自分に行き着く道は、「正」の中にしかありません。

 

私は、「ビロードうさぎ」を、そんな「愛による精神の成長」の童話として捉えました。

子どもたちは、どんなふうにこの絵本を読み、何を受け取るでしょうか。

 

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

絵本の買取依頼もお待ちしております。

 

絵本専門の古本屋 えほにずむ

〒578-0981

大阪府東大阪市島之内2-12-43

URL:http://ehonizm.com

E-Mail:book@ehonizm.com