【絵本の紹介】「魔術師ガザージ氏の庭で」【166冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は「魔術師ガザージ氏の庭で」を紹介します。

作・絵:クリス・バン・オールスバーグ

訳:辺見まさなお

出版社:ほるぷ出版

発行日:1981年2月15日

 

オールスバーグさんの絵本を取り上げるのは初めてですね。

彼を知らない方でも、映画化された「ジュマンジ」や「急行『北極号』」ならピンとくるかもしれません。

 

クリス・バン・オールスバーグさん(現在では『ヴァン・オールズバーグ』と表記されることの方が多いですが、ここではこの作品での表記に従います)は、絵・文、ともに非常に独特な作品を多く発表し、既成の「絵本」の枠組みを越え出て、年齢を特定しない読者層を掴みました。

 

作品の多くはモノクロームで、陰影やアングルを計算して効果的に使い、一枚一枚のカットが細部まで描き込まれています。

この「魔術師ガザージ氏の庭で」は、オールスバーグさんの処女作であり、発表直後から大変話題を呼んだ作品です。

 

現在はあすなろ書房から村上春樹さんの翻訳による新版(タイトルも変更され、『魔術師アブドゥル・ガサツィの庭園』となっています)が刊行されています。

 

さて、その内容ですが、とても不思議な気分になる物語です。

アラン少年は、ヘスター嬢に犬のフリッツの面倒を頼まれます。

 

午後の散歩に出かけたアランは、橋むこうの立札に、

ぜったいに、どんなわけがあっても、このさきの庭にいぬをいれてはいけない!

引退した魔術師アブドゥル・ガザージ

と記してあるのを見ます。

 

アランは引き返そうとしますが、フリッツは行儀の悪い犬で、首輪を切って門の中に駆け出してしまいます。

アランは慌ててフリッツを追いかけます。

 

ここのカットが、実に凄い。

不安を煽るような構図、何かを暗示するようなポーズを取る彫刻。

 

読者は、否応なしに非日常の門をくぐることになります。

 

犬を追って彷徨った末に、アランは大邸宅に辿り着き、そこでガザージ氏と対面します。

怪しげな風貌、不気味な佇まいのガザージ氏。

事情を説明し、犬を返してもらえるよう頼むアランを、ガザージ氏は芝生へ案内します。

そこにはひと群れのあひるがいました。

 

犬が大嫌いだというガザージ氏は、一羽のあひるを示し、

これがきみのフリッツだよ

と告げます。

 

アランはフリッツをもとの姿に戻してもらえるよう頼みますが、ガザージ氏は、この呪文はいつ解けるか自分にもわからない、と冷たく突き放します。

悲しみのうちに、あひるに変えられたフリッツを抱いて帰路につくアラン。

その途中、あひるのフリッツは、アランの帽子をくわえて飛び去ってしまいます。

 

重い気持ちでヘスター嬢の家に戻ると、アランはヘスター嬢に今日の出来事を打ち明けます。

すると、台所から犬の姿のフリッツが現れます。

驚くアランに、ヘスター嬢は笑いながら、あなたはガザージ氏にまんまと騙されたのだと言います。

 

アランは馬鹿馬鹿しいやら悔しいやらで、二度とこんな騙され方はしないぞ、と決心して、自分の家に帰って行きました。

 

しかし、その後でフリッツが口にくわえていたのは……。

 

★      ★      ★

 

オールスバーグさんの作品内容の特徴として、結末がはっきりしない「オープンエンド」であることが挙げられます。

それが、前述の絵の効果と相まって、現実と幻想の境界が曖昧な、それでいて怪しい美しさのある独自世界を構築しています。

 

アランはガザージ氏の庭の門を通り抜けた時に、足場のしっかりした現実世界から、不思議で不気味な幻想世界へ迷い込んでしまいます。

そこでガザージ氏に出会い、魔法をかけられたような気分になるのは、読者も同じです。

 

元の姿のフリッツを見て、見知った現実に帰って来たのだと、アランとともに読者も安心します。

しかし実はガザージ氏の魔法は、この日常世界に小さな「ひずみ」を残していることを、ラストシーンは暗示しています。

 

この落ち着かなさは、読者の心そのものに奇妙な爪痕を残します。

そしてその「魔法」の正体は、計算され尽くした絵の力であり、この絵本の作者こそが「魔術師」であることに気づかされるのです。

 

推奨年齢:8歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

魔術的絵度:☆☆☆☆☆

 

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