【絵本の紹介】「旅の絵本」【245冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

子どもが生まれるとできなくなることがたくさんあります。

旅行もそのひとつで、なかなか遠出はできないし、思い切って行っても苦労のほうが多くて、心からは楽しめなかったり。

 

もっと若いうちに色んなところを旅行しておくべきだったかとも思います。

子どもの頃には家族旅行で海外に行ったこともありますが、当時は勉強不足でなんの予備知識も持ち合わせてなかったので、ただ漫然と親について行っただけの旅で、今にして思えばもったいない話です。

 

やっぱり旅は主体的なものであるべきだし、最低旅行地の歴史や文化は予習しておくべきでしょう。

今回は安野光雅さんの「旅の絵本」を紹介します。

作・絵:安野光雅

出版社:福音館書店

発行日:1977年4月15日

 

絵本界の重鎮・安野光雅さん。

このブログでもたびたび取り上げています。

 

この「旅の絵本」は字のない絵本です。

世界中で愛され、36年をかけて全8作が描きあげられています。

 

この第一作では中部ヨーロッパの美しい自然と町並みが舞台になっています。

テキストはないものの、登場する人物たちは実に生き生きと躍動し、それぞれの物語を雄弁に語っています。

克明な絵の美しさはもちろん、登場人物を詳細に観察していくことで見えてくるストーリーとユーモアが、この絵本を何度でも楽しめる作品にしています。

 

そして、実はこの絵本の中には、お馴染みの民話や童話をモチーフにしたイラストが多数隠されているんです。

上の画面の左下、化け物みたいなカブを引っこ抜こうと奮戦するおじいさん、おばあさん、娘。

これは明らかにかの「おおきなかぶ」の名場面。

今度は左上、赤ずきんちゃんとオオカミが描かれています。

 

他にも「おだんごぱん」や「ブレーメンの音楽隊」っぽいキャラクターも多数出演。

またミレーの「落穂ひろい」をモチーフにしたような一幕や、女の人の行水を覗こうとする男や、騙し絵っぽい輪投げ遊び、発見は尽きません。

ぜひ、自分で探してみて欲しいです。

 

たぶん、私には気づかないようなところにも様々なモチーフが隠れていると思います。

もっと色んなことを知っていれば、理解できること、楽しめることがたくさんあるのに……と考えてみると、これは旅をする時の楽しみ方にも通じることですね。

 

作品から、いつも静かな知性を感じさせる安野さん。

「旅の絵本」は、そんな安野さんの深甚なる眼差しに同化して世界中を旅しているような心地よい気分を味合わさせてもらえるシリーズです。

 

最後に、安野さんの「あとがき」から、素敵な一節を引用させてもらいます。

 

人間は迷ったとき必ず何かを見つけることができるものです。私は、見聞をひろめるためではなく、迷うために旅に出たのでした。そして、私は、この絵本のような、一つの世界を見つけました

 

いつか、こういう本物の旅をしてみたいものです。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

旅心を誘われる度:☆☆☆☆☆

 

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