【絵本の紹介】「こすずめのぼうけん」【247冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

人混みなどで、ほんの一瞬でも目を離すといなくなる子ども。

一体あの短時間で、どんな動きをして視界から消えてしまうのか、ほとんど手品みたいな気がします。

 

我が家の息子もしょっちゅう姿を消しますが、幸いにして全部すぐに捕獲成功し、迷子になったことはありません。

隠れて行動観察していると、最初は勝手気ままに歩いたり立ち止まったりしていますが、親の姿が見えないことに気づくと、突然あらぬ方向へ猛ダッシュしたりします。

なるほど、こうやって迷子になるのか。

 

私自身はデパートやら動物園で何度も迷子になる子どもでした。

親切な人に迷子センターに連れて行かれる時に、妙な屈辱感を覚えた記憶があります。

 

私の親はさほど心配した様子もなく「またか」という感じで迎えに来たものですが、親になった今、もし息子が本当に迷子になったらと想像すると、私なら半狂乱になる気がします。

それだけ時代が(気分的に)物騒になったのかもしれません。

 

今回紹介するのは「こすずめのぼうけん」です。

作:ルース・エインズワース

絵:堀内誠一

訳:石井桃子

出版社:福音館書店

発行日:1977年4月1日(こどものとも傑作集)

 

これは、イギリスの児童作家エインズワースさんの物語に、堀内さんが絵を付け、石井さんが翻訳して絵本にした作品です。

翼をぱたぱたさせることができるようになったこすずめに、おかあさんすずめが飛び方を教えます。

 

まずは巣から見える石垣まで飛ぶ稽古をしますが、初めての飛翔に成功したこすずめは、

ぼく、これなら、あの いしがきの てっぺんより、もっと とおくへ とんでいける

と考え、

せかいじゅうを みて こられる

とまで思い、そのまま石垣を飛び越えて行ってしまいます。

しかし調子に乗って飛んでいたのは初めだけで、羽が痛くなってきてしまうこすずめ。

どこかで休ませてもらおうと、色んな鳥の巣に入れてもらおうとしますが、からすやふくろうたちは「ちゅん、ちゅん、ちゅんってきり いえない」こすずめを、「なかまじゃない」と、拒みます。

 

くたびれ果てたこすずめが地面の上を歩いていると、おかあさんすずめが迎えに来てくれます。

暗がりでお母さんだとは気づかないこすずめは、

ぼく、あなたの なかまでしょうか?

と切ない問いを発します。

おかあさんすずめはこすずめを背中に乗せて巣に戻ります。

ラストの安心感と美しい情景が心に響きます。

★      ★      ★

 

主人公が一人で外の世界を冒険し、様々な経験をし、最後は母親のもとへ帰って安心して眠る。

子どものための物語の、一つの型とも呼ぶべき構成の作品です。

 

奇をてらうような展開や表現はありませんが、自立心や冒険心の芽生え始めた子どもたちは、このこすずめに共感し、同化して物語に入って行けるでしょう。

何気なく、色々な鳥たちの巣作りの習性などを知ることもできます。

 

堀内さんはこの作品を絵本化するにあたり、イギリスの農村風景の地形の断面図まで事前に制作したそうです。

横長のページを効果的に使い、広々とした風土や情景、鳥たちの生活感までがリアルに伝わってきます。

夕暮れ時の色使いは特に美しいですね。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

おかあさんすずめが割と冷静度:☆☆☆☆☆

 

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