2017.02.06 Monday
絵本の紹介「はなをくんくん」
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
立春を迎え、暦の上では春になったわけですが、まだまだ寒いですね。
今日は春を心から待ち望むこの季節にぴったりの一冊を紹介しましょう。
ルース・クラウス作、「はなをくんくん」です。
文:ルース・クラウス
絵:マーク・シーモント
訳:きじま はじめ
出版社:福音館書店
発行日:1967年3月20日
原題は「THE HAPPY DAY」。
春の幸せを描いた傑作古典ですが、白黒絵本は地味に映るため、手に取られない方も多いかもしれません。
印刷技術やコストとの戦いでもあった時代の絵本は、片面のみカラー印刷であったり、原画の色を再現できなかったり、様々な苦労があったようです。
が、この「はなをくんくん」は、あえて白黒を強みとした点で、実験的かつ革新的な作品なんです。
雪に閉じ込められた冬の森。
厳しい寒さの中、地面の下や木の中で眠る動物たち。
その暗く、冷たく、重い冬の描写が、白黒のタッチによって上手く表現されています。
ふと、ねずみやくま、りすやかたつむりまでが、「はなをくんくん」させて、起き出します。
そして、一斉に駆け出します。
大勢が向かって行った先には―――
一輪の、小さな黄色い花が。
「うわあい!」
「ゆきのなかに おはなが ひとつ さいているぞ!」
みんなが嬉しそうに騒ぎます。
★ ★ ★
そう、全編白黒の構成の中に、たった一色の黄色を、効果的に使ったのです。
これはクラウスさんとシーモントさん、どちらのアイディアでしょうね。
あるいは、先にこの黄色い花のアイディアが先にあって、絵本が出来上がったのかもしれません(おそらく、そうでしょう)。
春を待ちわびる気持ち、そして小さな「最初の春」を見つけた時の喜び。
それは人間も動物も変わりません。
シーモントさんの描く動物たちの表情豊かなこと。
非常に躍動的で、こちらの心まで弾んで踊り出しそうになります。
木島さんの訳も素敵なんですが、「やまねずみ」にわざわざ「ウッドチャック」とルビを振るなら、最後まで「ウッドチャック」で通して欲しかったような。
子どもに読み聞かせていて、「ん?」と怪訝な顔をされます。
ま、細かいことですが。
推奨年齢:3歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆
かたつむりが苦手な人はちょっと注意度:☆
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