絵本の紹介「ねずみのおいしゃさま」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は「ねずみのおいしゃさま」を紹介します。

作:中川正文

絵:山脇百合子

出版社:福音館書店

発行日:1977年4月1日

 

ぐりとぐら」の山脇さんの絵に惹かれて手に取る方も多いのではないでしょうか。

彼女独特の「橙色のねずみ」のお医者さんのお話。

 

内容も「ぐりとぐら」に負けず劣らず、のんびりしたものです。

ある冬の夜、「ねずみのおいしゃさま」の家に電話がかかってきます。

お医者さまの自宅は、いかにも田舎に一軒しかない診療所といった佇まい。

 

りすのぼうやが風邪を引いて熱を出しているというので、往診に出かけます。

こんやは おおゆきですよ。だいじょうぶですか

と心配する奥さんに、

ゆきぐらい なんでもないさ。よなかに でかけるのも、いしゃの しごとだよ

と、カッコイイことを言ってスクーターにまたがるお医者さま。

 

このシーンまでは、親切で、自分の仕事に誇りを持った、熱意溢れるドクターの物語かと思ってたんですがね……。

すぐに雪だるまみたいになり、スクーターも動かなくなってしまうと、

これなら、さっき でんわで ことわれば、よかった

たすけてくれ!

と、あっさり音を上げるお医者さま。

 

あれ? なんか、かっこ悪くなってきたぞ。

 

しかも、冬眠中のかえるさんの家に逃げ込むと、そのままぐっすり眠り込んでしまいます。

え? りすのぼうやは? 仕事はいいの?

 

結局朝になってから、お医者さまはのんびりと起き出し、やっとぼうやのことを思い出して(今さら)急いでりすさんの家に駆けつけます。

 

が、ぼうやは一晩ですっかり熱も引いて元気になっていて、結局のところ何にもせずに、お医者さまは帰ります。

で、最後は自分が風邪を引いて熱を出すという、まったくいいところのないお医者さまなのでした。

 

★     ★     ★

 

現代の、スーパードクターばかりが登場する医療ドラマに慣れている大人は、色々と突っ込みを入れたくなるでしょう。

私も何度も「おい!」と呟きながら読みました。

 

人はいいし、親切だけれども、ここまで何の役にも立たないお医者さまを主人公に持ってくるというのは、ある意味絵本にしかできないとも言えます。

 

でもまあ、肩肘を張らずに読んでみれば、この物語の何とも言えない緩やかな時間の流れや、のんびりした時代の暮らしぶりのようなものが伝わってきます。

 

ちなみに、この絵本がはじめて発表されたのは「こどものとも」1957年2月号。

そのときは、永井保さんが挿絵を担当していました。

 

単行本化はされていないようで、現在では入手困難になっています。

もし永井さん版の「ねずみのおいしゃさま」をお持ちで、当店にお売りくださる方がいれば、ご連絡を。

私も現物を読んだことがないので、商品にせずに自分の本棚に収めてしまうかもしれませんが。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆

お医者さまのマイペース度:☆☆☆☆☆

 

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

絵本の買取依頼もお待ちしております。

 

〒578−0981

大阪府東大阪市島之内2−12−43

URL:http://ehonizm.com/

E-Mail:book@ehonizm.com

絵本の紹介「こんとあき」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

現在、我が家の絵本棚には1200冊以上の絵本が並んでいます。

それだけの数があると、何度でも読んでもらえる絵本も絞られてきます(もちろん、選考者は息子です)。

 

今回紹介する「こんとあき」は、そんな熾烈なレギュラー争いを勝ち抜いた一冊です。

作・絵:林明子

出版社:福音館書店

発行日:1989年6月30日

 

林さんの絵本を紹介するのはこれで3度目ですが、彼女の作品の中では私自身もこれが一番のお気に入りです。

相変わらず、絵が上手い。

 

特に、子どもの表情と、肌の質感がたまりません。

ほっぺたを触りたくなります。

 

内容としては、女の子とぬいぐるみの友情物語、という体裁ではありますが、その中に実に様々な要素が詰め込まれていて、しかもそれが無理なく絶妙に調和されており、何層にも深みのある絵本となっています。

 

おばあちゃんに赤ちゃんのおもりを頼まれて「さきゅうまち」からやってきた、きつねのぬいぐるみの「こん」。

あき」というのが赤ちゃんの名前。

ふたりはいつでもいっしょに遊んで、あきはだんだん大きくなり、こんはだんだん古くなります。

ある日、とうとうこんの腕がほころびてしまいます。

だいじょうぶ、だいじょうぶ

さきゅうまちに かえって、おばあちゃんに なおしてもらってくる

と、出かけようとするこんに、あきはついて行くことにします。

こんとあきは特急列車に乗り、「さきゅうえき」に向かいます。

途中で弁当を買いに行ったこんがドアにしっぽを挟まれるトラブルに遭いながらも、ふたりは「さきゅうえき」に到着します。

 

ちょっとだけ砂丘を見たい、とあきが言い、ふたりは砂丘に足跡をつけます。

そこでもトラブルが起こり、こんは野良犬にくわえられ、連れ去られてしまいます。

 

あきはどうにか砂に埋められたこんを見つけ出し、背中におぶって、おばあちゃんのうちへ向かいます。

こんは小さな声で「だいじょうぶ、だいじょうぶ」としか言わなくなってしまいます。

とうとうおばあちゃんのうちに辿り着いたあきは、おばあちゃんの胸に飛び込んで、

おばあちゃん、こんを なおして!

と懇願します。

 

おばあちゃんはふたりを家に入れ、こんのあちこちをしっかり縫い付け、仕上げにお風呂に入れて、「できたてのように きれいな きつね」にしてくれます。

 

★     ★     ★

 

息子はいろいろな絵本のキャラクターになりきりますが、この絵本では必ず「こん」になります(私は「あき」にされます)。

いつもあきの先に立って彼女をリードする、ちょっと背伸びしたようなこんが、子どもの目にもとても魅力的に映るのだと思います。

 

逆に、親の目から読むと、各ページごとのあきの表情の変化が胸に響きます。

表紙の、こんを見る優しい顔。

汽車の席で、こんの帰りを待つ不安げな顔。

こんといっしょにお弁当を食べている時の無防備な顔。

砂丘で犬に遭遇した時の怯えた顔。

 

そして何よりも、砂に埋まったこんを抱き上げた時の顔と、見開きでこんをおぶって砂の山を下って行く姿は、何度見ても涙が出そうになります。

 

設定は一風変わっていますが、これは王道の「冒険成長物語」です。

あきの成長は、「行間を読む」ような仕方で「絵を読む」ことで伝わってきます。

 

さらに、この絵本を味わい深いものにしているのは、いつもの林さんの遊び心。

駅や汽車に登場する人物をよく見ると、林さんの他の作品からの友情出演があったり、なぜかチャップリンがいたり、「不思議の国のアリス」や「ピーターラビット」のキャラクターがいたり。

 

それに、「さきゅう」はどう見ても鳥取砂丘。

あげどんべんとう」(レシピが存在します)にも鳥取名物の豆腐入りちくわが入っています。

林さんのご両親(表紙の優しそうな老夫婦のモデルらしいです)が鳥取県出身ということで、いわば「ご当地絵本」としての側面も持っているんです。

 

まだまだ語りたいことはいろいろありますが、きりがないのでこのへんで。

とにかく、読んだことのない方は一度読んでみてください。

 

ラストの「よかった!」を読むとき、いつも子どもと心が一つになれます。

幸せになれる絵本です。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

こんの存在感度:☆☆☆☆☆

 

林明子さんの他の作品記事

≫絵本の紹介「はじめてのおつかい」

≫絵本の紹介「おつきさまこんばんは」

 

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絵本をどう選ぶか。そして、どう読んであげるか。

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

ほぼ毎日、息子に絵本を読み聞かせています。

もういちいち数えていませんけど、家の本棚にある絵本は、そろそろ1200冊を超えたと思います。

 

≫3歳までに絵本を1000冊読み聞かせたら

 

よく尋ねられるのは、

どんな絵本を読んであげればいいんですか?

ということと、

どれくらいの頻度で読んであげればいいんですか?

ということです。

 

けれども、この二つとも、なかなかその場でさっと簡潔に答えにくい質問なんです。

いや、答えるのは簡単なんですが、その理由まできちっと説明しようと思うと、ちょっと時間がかかる。

子どもに関わることですから、いい加減なこと言えませんし、変な方向に受け取られても困ります。

 

今回は、それらについて、普段考えてることを記事にしてみます。

ちょっと長いですよ。

まず、結論だけを先に言えば、

「とにかく何でもいいから、片っ端から、ジャンルにこだわらず、いつでも、何度でも読んであげてください」

ということです。

 

こういうことを言うと、

いや、絵本にも良し悪しがある。悪い絵本はかえって有害であり、子どもには良い絵本だけを読ませるべきである

という意見が出てきます。

 

おっしゃることはわかります。

けど、それは10冊なら10冊と、厳選して絵本を与える場合の話です。

そしてたとえ非常に絵本に精通した人間が厳選したとしても、たった10冊では、子どもが本当に求めている一冊に出会えるとは限らないのです。

 

なぜなら、大人と同様、子どももひとりひとり違います。

私の息子がある絵本が大好きだからといって、他の家の子が同じものを気に入るかどうかはわかりません。

考えてみれば当たり前の話ですよね。

 

どんな芸術的な名作だって、万人に受け入れられるわけではありません。

逆に、世間的には駄作とされている作品でも、ある人間にとっては、大変な感動を与えることだってあります。

 

それはその人のパーソナリティの問題で、他人がとやかく言うことではありません。

こんなことは、大人に対しては当然だと思う人でも、子どもに対しては同じように考えられない場合が多いようです。

 

その理由は、「子どもの好みや性格は形成途上にあり、周囲の大人が与えるものによって左右されるため、大人には良いものを選別して与える責務がある」という考えに基いていると思われます。

でも、それって、「検閲」ですよね?

 

子どもの性格が環境によって大きく影響を受けるのは確かだと思います。

しかし、重要なのは日常的に接する大人の人間性―――子どもに対する理解と寛容さが備わっているかどうか、端的に言ってしまえば「愛があるかどうか」です(偏執的な愛ではなくて)。

 

はっきり言えば、両親が真実の愛に溢れたひとであれば、本や漫画なんて、どんなアブナイものを読んでいようが、子どもの人格が捻じ曲がるようなことはありません(自分自身のことを振り返ってみてください)。

 

ましてや絵本というものは、成功・失敗はあったとしても、大前提として「子どものために」作られたものです。

子どもに「悪い」と言えるほどの影響を与えたりするでしょうか。

 

もし、そんなことがあるとすれば、それは書物の内容の良否よりも、偏りに問題があると思います。

色んなジャンル、色んなスタイル、色んな作家の本を読むことで、(世間の大人が好んで口にするところの)「広い視野を持った」人間に育つのではないでしょうか。

あと、もうひとつ言っておきたいのですが、いくら大人が頭を悩ませて絵本を選んだところで、小さな赤ちゃんならいざ知らず、子どもは自分が読みたくないものは絶対に読みません。

どんなに名作とされる絵本でも、絶対に。

これは自分の読み聞かせ経験から、確信を込めて言えます。

 

本来、子どもは心と行動が分裂していません。

「嫌なものは嫌」なのです。

それを大人が力づくで言うことを聞かせれば(それでも絶対に折れないあっぱれな子どももいますが)、それが精神病の第一歩です。

 

もちろん、食べ物と同じで、自然な成長過程で、好みも変化します。

以前は嫌いだったものが食べられるようになるのと同様、読まなかった絵本を、ある日急に手に取ることもあります(これも自分の経験上、何度もありました)。

 

食べ物を例に出したのでついでに。

いくら好き嫌いのないようにと言っても、乳離れしたばかりの赤ちゃんに、とびきりスパイシーなものや固いものを与えはしないでしょう。

同じように、最初から字が多すぎる絵本や、情報量が多すぎる絵本を与えるのも避けた方がいいです。

それは偏りのない読書とは次元の違う話です。

 

以上のようなことを踏まえて、私たちは常に子どもを注意深く観察しなければなりません。

面倒なことです。

 

だから愛が必要なのです。

 

「厳選した絵本を」と唱える人の中には、「読んで無駄な絵本は読みたくない」という、「費用対効果」の考えがあるかもしれません。

もちろん、経済的な理由もあるでしょう。

でも、そんな人でも、絵本よりもずっと高額な知育教材を購入したり、幼児教室に通わせたりするのです。

 

絵本を毎日読むなんて、そんな手間暇がかかる割には何の役に立つのかよくわからないことより、確実に早く成果(?)が上がる教育に重きを置いているということでしょうか。

 

今までも何度か書きましたが、子どもにとって絵本を読んでもらうことは、愛情の確認作業でもあります。

近しい大人の体温や肉声を感じること。

時間を共有すること。

感情を共有すること。

「自分は愛されている」という確信を得ること。

それらは、絵本の内容以上に、子どもの成長にとって大切です。

 

愛というものは、単なるきれいごとではなくて、人間が成長する上で必要な要素だと思います。

そういう意味では、非常によくできたシステマティックな仕組みと言えるかもしれません。

 

だからこそ、たとえ子どもへの愛がなくとも、毎日絵本を読み聞かせているうちに愛を知る、という現象も起こりうるのでしょう。

これも、自分の経験ですが。

 

 

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絵本の紹介「おへそのひみつ」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は福音館書店の月刊科学絵本「かがくのとも」より、「おへそのひみつ」を紹介します。

作・絵:やぎゅうげんいちろう

出版社:福音館書店

発行日:2000年11月10日

 

著者の柳生弦一郎さんは、「おっぱいのひみつ」「あたまのなか」「かさぶたくん」などの、人体に関する科学絵本を多数作っています。

絵にインパクトがあるので、一目でそれとわかりますね。

「おへそ」ってなんだろう?

何にも使えないし、ほんとにただの飾りみたい。

 

そんな素朴な疑問に、丁寧にわかりやすく、なおかつコミカルに、ただし厳密な科学知識に基いて教えてくれます。

いざ「おへそ」について子どもに訊かれると、たいていの大人は困るのではないでしょうか。

 

なぜなら、「おへそ」を科学的に説明しようとすると、必然的に「赤ちゃんはどこから生まれるの?」という問いにぶつからざるを得ないからです。

 

この絵本は、そこから逃げたりごまかしたりせず、真摯に子どもに答えます。

自分の身体は、人間にとって最も身近な自然であり、謎です。

手の感覚を得た頃の赤ちゃんは、自分の手をじーっと見つめていたりします(話が逸れますが、子どもが自分の性器をいじり回すのは単に興味からであって、絶対に無理にやめさせるべきではありません)。

 

こういう根源的な疑問、不思議に思う気持ちに対し、大人は誠実・正直に答えてあげるべきです。

子どもが「なぜ?」「どうして?」と、ことあるごとに言い出したら、それは喜ぶべきことです。

 

もちろん、自分でもわからないことに関しては、素直に「わからない」と言い、あとで子どもと一緒に調べるといいでしょう。

その際には、できる限りインターネットではなく、本や辞典を繙いて欲しいものです。

それが、将来的に自主的な読書へと繋がりますから。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

おへそを取るかみなりさんが怖い度:☆☆

 

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絵本の紹介「しろくまちゃんのほっとけーき」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

みなさん、今日が何の日かご存知ですか?

今日、1月25日は「ホットケーキの日」なんです(何にでも記念日があるものですね)!

 

というわけで、必然的に(?)今回取り上げるのは「しろくまちゃんのほっとけーき」です。

絵:わかやま けん

出版社:こぐま社

発行日:1972年10月15日

 

「こぐまちゃん」シリーズのスピンオフ的作品でありながら、シリーズ中最も人気が高いというこの作品。

まさに「ホットケーキばかりか主役を食ってしまった」名脇役として絵本界に名高いしろくまちゃん。

 

内容は至ってシンプルで、しろくまちゃんがお母さんとホットケーキを焼き、友達のこぐまちゃんと一緒に食す、というストーリー。

卵を落として割ってしまったり、ボウルの中身をはね散らかしたりといった描写に、子どもが真似をすると苦情も寄せられたとか。

いいじゃないですか、割ったって汚したって、それも子どもにとっては必要なんだから。

単純化された造形、太い線の輪郭、いくつかの色の組み合わせによる鮮やかな色彩は、シリーズ通しての特徴であり、「ちいさなうさこちゃん」シリーズの生みの親・ディック・ブルーナの影響を受けていることは以前の記事で触れました。

 

こむぎこ おさとう ふくらしこ こなは ふわふわ ぼーるは ごとごと だれか ぼーるを おさえてて

このあたりのリズム感は本当に素晴らしいと思います。

このシーンでは見ている子どもが、無意識に絵の中のボウルに向かって手を指し伸ばすしぐさを見せることがあります。

画面に、手伝ってくれるはずのお母さんがいないことも計算のうちでしょう。

 

しかし、この絵本の最大の見どころは、やはり見開きでホットケーキを焼くシーン。

ぽたあん」「どろどろ」「ぴちぴちぴち」「ぷつぷつ」「やけたかな」「まあだまだ」「しゅっ」「ぺたん」「ふくふく」「くんくん」「ぽいっ」「はい できあがり

 

こんな単純化された線と色と言葉で、これほど雄弁にホットケーキの焼けるさまを説明した絵が、他にあるでしょうか。

子どもたちはこのページを食い入るように、いつまでも見つめます。

私もいつまでも見ていられます。

本当に美しいです。

さあ、今日はみんなでホットケーキを焼きましょう。

 

けれども、この大ロングセラーを手掛けたこぐま社の佐藤英和さんは、どうしてこの絵本がそこまで子どもに人気なのか、本当のところはわからないと言っておられます。

子どもの絵本を見る目は確かですが、その法則を大人が発見しようとするのは至難です。

子どもは批評をしませんからね(読むか、読まないかという行動で示すだけで)。

実際、似たような絵で似たような作品を作ったとて、必ずしもロングセラーになるわけではないでしょう。

 

私は、上で述べたような要素がいくつも重なり合って、絵本が唯一無二の芸術作品となったとき、子どもの心を掴むのだと思っています。

それは本当に難しく、磨かれた感性と、注意深さと、根気とを必要とされる作業です。

 

しかし何よりも重要なのは、子どもに対する誠実さであり、敬意だと思います。

流行を追いかけることに慣れた大人が、気安く作ったような絵本が、たとえ一時は子どもの気を引いたとしても、長い間選ばれ続けるということは、けっしてありえないのです。

 

関連記事≫絵本の紹介「こぐまちゃんおはよう」

≫絵本の紹介「ちいさなうさこちゃん

 

推奨年齢:2歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

ホットケーキ食べたい度:☆☆☆☆☆

 

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