2017.01.31 Tuesday
絵本の紹介「ねずみのおいしゃさま」
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回は「ねずみのおいしゃさま」を紹介します。
作:中川正文
絵:山脇百合子
出版社:福音館書店
発行日:1977年4月1日
「ぐりとぐら」の山脇さんの絵に惹かれて手に取る方も多いのではないでしょうか。
彼女独特の「橙色のねずみ」のお医者さんのお話。
内容も「ぐりとぐら」に負けず劣らず、のんびりしたものです。
ある冬の夜、「ねずみのおいしゃさま」の家に電話がかかってきます。
お医者さまの自宅は、いかにも田舎に一軒しかない診療所といった佇まい。
りすのぼうやが風邪を引いて熱を出しているというので、往診に出かけます。
「こんやは おおゆきですよ。だいじょうぶですか」
と心配する奥さんに、
「ゆきぐらい なんでもないさ。よなかに でかけるのも、いしゃの しごとだよ」
と、カッコイイことを言ってスクーターにまたがるお医者さま。
このシーンまでは、親切で、自分の仕事に誇りを持った、熱意溢れるドクターの物語かと思ってたんですがね……。
すぐに雪だるまみたいになり、スクーターも動かなくなってしまうと、
「これなら、さっき でんわで ことわれば、よかった」
「たすけてくれ!」
と、あっさり音を上げるお医者さま。
あれ? なんか、かっこ悪くなってきたぞ。
しかも、冬眠中のかえるさんの家に逃げ込むと、そのままぐっすり眠り込んでしまいます。
え? りすのぼうやは? 仕事はいいの?
結局朝になってから、お医者さまはのんびりと起き出し、やっとぼうやのことを思い出して(今さら)急いでりすさんの家に駆けつけます。
が、ぼうやは一晩ですっかり熱も引いて元気になっていて、結局のところ何にもせずに、お医者さまは帰ります。
で、最後は自分が風邪を引いて熱を出すという、まったくいいところのないお医者さまなのでした。
★ ★ ★
現代の、スーパードクターばかりが登場する医療ドラマに慣れている大人は、色々と突っ込みを入れたくなるでしょう。
私も何度も「おい!」と呟きながら読みました。
人はいいし、親切だけれども、ここまで何の役にも立たないお医者さまを主人公に持ってくるというのは、ある意味絵本にしかできないとも言えます。
でもまあ、肩肘を張らずに読んでみれば、この物語の何とも言えない緩やかな時間の流れや、のんびりした時代の暮らしぶりのようなものが伝わってきます。
ちなみに、この絵本がはじめて発表されたのは「こどものとも」1957年2月号。
そのときは、永井保さんが挿絵を担当していました。
単行本化はされていないようで、現在では入手困難になっています。
もし永井さん版の「ねずみのおいしゃさま」をお持ちで、当店にお売りくださる方がいれば、ご連絡を。
私も現物を読んだことがないので、商品にせずに自分の本棚に収めてしまうかもしれませんが。
推奨年齢:3歳〜
読み聞かせ難易度:☆
お医者さまのマイペース度:☆☆☆☆☆
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