100冊分の絵本紹介記事の一覧

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

 

これまでの絵本紹介記事を、タイトルと作家名で並べてみました。

気になる作品があれば、ぜひ読んでみてください。

 

↓      ↓      ↓

 

いないいないばあ」 松谷みよ子・瀬川康夫(「読み聞かせはいつから?」で紹介)

ガンピーさんのふなあそび」 ジョン・バーニンガム(「クシュラの奇跡」で紹介)

三びきのやぎのがらがらどん」 マーシャ・ブラウン

いたずらきかんしゃちゅうちゅう」 バージニア・リー・バートン

ももたろう」 松居直・赤羽末吉

おおかみと七ひきのこやぎ」 フェリクス・ホフマン

じごくのそうべえ」 たじまゆきひこ

ちいさいじどうしゃ」ロイス・レンスキー

はらぺこあおむし」 エリック・カール

ぐりとぐら」 中川李枝子・ 大村百合子

とらっくとらっくとらっく」 渡辺茂男・山本忠敬

もりのなか」 マリー・ホール・エッツ

おおきなかぶ」 トルストイ・佐藤忠良

ぞうのババール」 ジャン・ド・ブリュノフ

こぐまちゃんおはよう」 わかやまけん

おやすみなさいおつきさま」 マーガレット・ワイズ・ブラウン、クレメント・ハード

かいじゅうたちのいるところ」 モーリス・センダック

あんぱんまん」 やなせたかし

きんぎょがにげた」 五味太郎

三びきのこぶた」 瀬田貞二・山田三郎

てぶくろ」 エウゲーニー・M・ラチョフ 

だるまちゃんとてんぐちゃん」 加古里子

ノンタンぶらんこのせて」 キヨノサチコ

14ひきのひっこし」 いわむらかずお

みんなうんち」 五味太郎

キャベツくん」 長新太

ねないこだれだ」 せなけいこ

はじめてのおつかい」 筒井頼子・林明子

くれよんのくろくん」 なかやみわ

のろまなローラー」 小出正吾・山本忠敬

しろいうさぎとくろいうさぎ」 ガース・ウイリアムズ

ぞうくんのさんぽ」 なかのひろたか

ねずみくんのチョッキ」 なかえよしを・上野紀子

スーホの白い馬」 大塚勇三・赤羽末吉

ぐるんぱのようちえん」 西内ミナミ・堀内誠一

おしいれのぼうけん」 古田足日・田畑精一

ぶたたぬききつねねこ」 馬場のぼる

うずらちゃんのかくれんぼ」 きもとももこ

あくたれラルフ」 ジャック・ガントス、ニコール・ルーベル

ノンタン!サンタクロースだよ」 キヨノサチコ

リサとガスパールのクリスマス」 アン・グットマン、ゲオルグ・ハレンスレーベン

あのね、サンタの国ではね・・・」 嘉納純子・黒井健

しんかんくんのクリスマス」 のぶみ

ぐりとぐらのおきゃくさま」 中川李枝子・山脇百合子

まどから おくりもの」 五味太郎

サンタおじさんのいねむり」 ルイーズ・ファチオ、柿本幸造

アンパンマンのサンタクロース」 やなせたかし

コロちゃんのクリスマス」 エリック・ヒル

パオちゃんのクリスマス」 なかがわみちこ

ふゆのよるのおくりもの」 芭蕉みどり

ビロードうさぎ」 マージェリィ・ウィリアムズ、ウィリアム・ニコルソン

ピヨピヨスーパーマーケット」 工藤ノリコ

ひこうじょうのじどうしゃ」 山本忠敬

はけたよはけたよ」 神沢利子・西巻茅子

おつきさまこんばんは」 林明子

チョコレートパン」 長新太

ゆずちゃん」 肥田美代子・石倉欣二

はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー」 バージニア・リー・バートン

わにがわになる」 多田ヒロシ

なんのいろ ふゆ」 ビーゲンセン・永井郁子

かず」 安野光雅

しろくまちゃんのほっとけーき」 わかやまけん

おへそのひみつ」 柳生弦一郎

こんとあき」 林明子

ねずみのおいしゃさま」 中川正文・山脇百合子

飼育係長」 よしながこうたく

ティッチ」 パット・ハッチンス

はなをくんくん」 ルース・クラウス、マーク・シーモント

ねずみのさかなつり」 山下明生・いわむらかずお

スイミー ちいさなかしこいさかなのはなし」 レオ・レオニ

みんなでぬくぬく」 エルザ・ドヴェルノア、ミシェル・ゲー

がたんごとんがたんごとん」 安西水丸

おさるのジョージ チョコレートこうじょうへいく」 M&H.A.レイ

かおかおどんなかお」 柳原良平

ボルカ はねなしガチョウのぼうけん」 ジョン・バーニンガム

ぞうのたまごのたまごやき」 寺村輝夫・長新太

ちいさなうさこちゃん」 ディック・ブルーナ

どろんこハリー」 ジーン・ジオン、マーガレット・ブロイ・グレアム

ノラネコぐんだん パンこうじょう」 工藤ノリコ

だいくとおにろく」 松居直・赤羽末吉

たしざん」 まついのりこ

葉っぱのフレディ ―いのちの旅ー」 レオ・バスカーリア、島田光雄

わたしとあそんで」 マリー・ホール・エッツ

おやすみなさいフランシス」 ラッセル・ホーバン、ガース・ウィリアムズ

ババールのしんこんりょこう」 ジャン・ド・ブリュノフ

しずかなおはなし」 サムイル・マルシャーク、ウラジミル・レーベデフ

よあけ」 ユリー・シュルヴィッツ

あいうえおうさま」 寺村輝夫・和歌山静子

ハナミズキのみち」 淺沼ミキ子・黒井健

あかちゃんのうた」 松谷みよ子・岩崎ちひろ

さんまいのおふだ」 水沢謙一・梶山俊夫

いちご」 平山和子

かしこいビル」 ウィリアム・ニコルソン

オリビア」 イアン・ファルコナー

かもさんおとおり」 ロバート・マックロスキー

ねむいねむいねずみ」 佐々木マキ

ぼく おかあさんのこと・・・」 酒井駒子

おまえうまそうだな」 宮西達也

おおきな木」 シェル・シルヴァスタイン

ピーターラビットのおはなし」 ビアトリクス・ポター

 

★      ★      ★

 

これからも、まだまだ色んな絵本を紹介していきます。

ショップの方もよろしくお願いします。

 

 

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

絵本の買取依頼もお待ちしております。

 

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絵本の紹介【100冊目】「ピーターラビットのおはなし」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回はついに100冊目の絵本紹介です。

取り上げるのは、世界的名作「ピーターラビットの絵本」シリーズから、その記念すべき第一作「ピーターラビットのおはなし」です。

作・絵:ビアトリクス・ポター

訳:石井桃子

出版社:福音館書店

発行日:2002年10月1日(新装版)

 

先日、「ピーターラビット展」へ行ってきました。

その時の記事で、ビアトリクス・ポターさんの生涯などを紹介しておりますので、そちらも併せてご覧ください。

 

≫「ピーターラビット展」に行ってきました。

 

上の記事でも触れていますが、私がこのシリーズを読んだのは息子が生まれてからなんです。

読み聞かせするには、サイズが小さいし(縦15×横11程度の絵本です)、文が多くて、どちらかというと自分で読むための絵本という印象を受けます。

 

でも、試しに息子に読んでみたところ、あっという間に「お気に入りの本」扱いになり、特にこの第一作は何度でも繰り返してリクエストするようになりました。

 

そして私自身も、ピーターと、彼を取り巻く世界の虜になってしまいました。

 

この小さな絵本が、どうして36か国語に訳され、4500万部も売れたのか。

大人・子どもを問わず、読む者を惹きつけて離さないその魅力の源は何なのか。

 

私は、それは「リアリティとファンタジーの、究極の結合」にあると思います。

 

まずは、内容をざっと見てみましょう。

おおきなモミの木の下の家に住む、子ウサギのピーター。

父親はすでに亡く、母親と、3匹の妹たちと暮らしています。

 

ある朝、お母さんが買い物に出掛ける際、子どもたちを集めて言います。

おひゃくしょうのマグレガーさんとこの はたけにだけは いっちゃいけませんよ

そして、ピーター達の父親は、マグレガーさんの奥さんに「にくのパイ」にされてしまったという、読者にとってわりと衝撃の事件を語ります。

 

でも、いたずらっ子のピーターはそんなお母さんの言いつけなど聞いちゃいません。

それは絵からすでに読み取れます(妹たちはお母さんの方を向いているのに、ピーターは反対を向いています)。

 

果たして、お母さんがいなくなるやいなや、ピーターはマグレガーさんの畑に侵入し、手当たり次第に野菜を盗み食いします。

食べ過ぎで胸が悪くなったピーターは、パセリを探しに行く途中、マグレガーさんにぱったり遭遇してしまいます。

何しろ捕まったら「にくのパイ」ですから、ここの逃走劇は本当に命がけです。

ピーターは必死に逃げ、途中で上着も靴も無くし、やっとの思いで森の家に辿り着きます。

 

その晩、ピーターはお腹を壊し、お母さんに薬を飲まされ、ベッドに寝ていなければなりませんでした。

 

★      ★      ★

 

「ピーターラビットの絵本」がネット上で「実は怖い!?」などと噂されるのは、「にくのパイ」に代表される、「食べられエピソード」にあると思います。

 

このシリーズにおいて、人間や動物たちは共存してはいても、「みんななかよし」の甘い幻想世界の住人ではないのです。

 

ひげのサムエルに、だんごにされそうになる子猫のトム。

フロプシーの子どもたちをかどわかして食べようとするアナグマ・トミー。

ふくろうのブラウンじいさまに皮を剝がれそうになるりすのナトキン。

人間たちは、ぶたを労働力として使い、時にはベーコンにしてしまいます。

 

しかしその一方で、動物たちは服を着たり脱いだりし、後ろ足で立って歩き、商売をして生計を立て、言葉を解します。

これらの「空想」は、上記の「甘くない現実」の上に構築されるがゆえに、圧倒的なリアリティを生じさせます。

 

リアリティとファンタジーの究極の結合」とは、こうした点です。

 

それは絵の表現においても顕著です。

 

ピーターはある絵では人間の男の子にしか見えません。

しかし、他のカットでは、うさぎそのものとして描かれています。

驚嘆すべきは、それらに何の矛盾も感じないという点です。

 

これは死んだうさぎを解剖して骨格まで調べたというポターさんの精緻な画力によるものですが、ピーターが後ろ足で立つ姿も、

「もしうさぎが靴を履いて後ろ足で立ったとすれば、こういう姿勢になるはずだ」

という、冷静な観察と分析のもとに描かれているから、無理を生じないのです。

 

また、シリーズ通して描かれる美しい自然や建物は、ポターさんが生活した湖水地方やヒルトップ農場の風景を再現したものです。

 

こうした特徴ゆえに、頭の固い大人たちの中からは、子どもがこのお話を読むことで「現実と空想の区別がつかなくなる」という批難の声が上がるかもしれません(現に、当時からそうした批判は多かったようです)。

 

そういう大人たちは、不幸な子ども時代を送ったがゆえに健全な想像力を育てられなかった哀れな人々ですから、そっとしておきましょう。

ただ、将来ある子どもたちの害とならないよう、引っ込んでいて欲しいと願うばかりです。

 

現実と空想は対立するものではありません。

それらは相互補完の関係にあります。

 

子どもはその卓越した想像力を行使して、真実を理解します。

空想は現実の理解を助け、現実は空想を育てるのです。

 

こんなことは、いちいち説明するまでもなく、子どもの成長を見ていればわかることです。

 

磨き抜かれた想像力は、透徹した現実的観察力となる。

 

これが真実であることは、作者の人物像が何よりも雄弁に物語っています。

 

ポターさんの子ども時代はけっして幸福なものとは言えず、厳格な両親のもとで、牢獄に繋がれたような毎日を送っていました。

同年代の友達も作れず、自由に外出もできず。

 

そんな中で、少女を孤独から救ったのは想像力でした。

彼女はその類稀なる力で、動物と会話し、自然と触れ合い、自分だけの―――そしてやがて「ピーターラビットのおはなし」に繋がる世界を創造していったのです。

 

ポターさんが若いころに記した暗号日記が残され、解読されていますが、その中には、「実際に」彼女が動物たちと会話していたらしい記述が認められます。

私は、彼女が本当に動物たちの言葉を聴くことができたのだとしても驚きませんが、こうした「空想」を逞しくしていった結果、彼女は現実世界から遊離した、ふわふわと地に足のつかない人間になったでしょうか?

 

ポターさんほど多くの研究者の対象となった絵本作家は稀ですが、それは彼女が単に世界的名作の作者であるというだけではなく、極めて優れた経営手腕を持った女性だったからです。

 

もともとは知り合いの息子に向けて作った「ピーターラビットのおはなし」を絵本化しようと、ポターさんは自ら出版社と交渉し、断られると自費出版に踏み切り、たちまち人気作家となります。

彼女が凄いのは、シリーズの絵本・ぬいぐるみ・おもちゃなどに関する版権をすべて押さえていたこと(弁護士の夫の力もあるでしょうけど)。

そしてその収益をもとに、農場経営や自然保護などの活動に取り組んだのです。

 

これらの現実的生活力や認識力・分析力は、現実と空想を結び付ける想像力を源としているとは言えないでしょうか。

 

もうひとつ、私が気に入っている点は、ポターさんの語り口です。

ピーターは親の言いつけを聞かなかったために散々な目に遭いますが、作者の抑制的な文章によって、それは少しも教訓的な話になっていません。

 

ただ、大人が考えるほどに甘くも平和でもない「子どもの世界」を、完全な形で描いた絵本に巡り会えたことが、子どもにとってどれほど心強い「生きる力」となるかは、想像に難くないのです。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆☆

現実と空想の絶妙な配合度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ピーターラビットのおはなし

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

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絵本の紹介「おおきな木」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは、「おおきな木」です。

作・絵:シェル・シルヴァスタイン

訳:本田錦一郎

出版社:篠崎書林

発行日:1976年11月20日

 

多くの人に感銘を与え、議論を呼んだ有名な哲学絵本です。

現在は村上春樹さん訳による新装版が出ており、この本田錦一郎さん訳の旧版は絶版となっています。

本田さんバージョンが読みたい方は、当店HPへどうぞ。

 

原題は「The Giving Tree」つまり「与える木」。

そのタイトル通り、ひたすら与え続ける大きな木と、与えられ続ける人間の男の子を描きます。

小さな男の子は、りんごの木と大の仲良し。

毎日木に会いに来て、色んな遊びをし、りんごを食べ、木陰で昼寝をします。

 

けれども年月は過ぎ、男の子は成長し、恋人もでき、木は独りぼっちになることが多くなります。

 

あるとき、男の子が戻ってきて、

おかねが ほしいんだ。おこづかいを くれるかい

と言います。

 

木はお金の代わりに、りんごを持って行って売ればどうかと提案します。

すると、男の子は気によじ登り、りんごを全部もぎ取ってしまいます。

なんだか残酷な気持ちがしますが、

きは それで うれしかった

 

その後も、男の子は戻ってくるたびに少しづつ大人になり、木に家や舟を要求します。

 

木は家を作る枝を与え、舟を作る幹を与えます。

 

そしてとうとうただの切り株になってしまった木のもとへ、すでに老人となった男の子が帰ってきます。

もう何も与える物がないことを残念がる木に、老人は、

わしは いま たいして ほしいものはない。すわって やすむ しずかな ばしょが ありさえすれば

と言います。

それなら、切り株に腰かけて休むといい、と木が言い、老人はそれに従います。

 

きは それで うれしかった

 

★      ★      ★

 

様々な解釈がなされ、今なお単一の読み取りを許さない作品です。

木と男の子、どちらを主体として読むか、二人の関係をどう読むかによって、物語の見方は分かれることになります。

 

テーマは「無償の愛」ですが、読みようによって、それを肯定も否定もできるのです。

 

それで うれしかった」と何度も繰り返すフレーズ。

木は、一切の犠牲精神なく、見返りを期待することもなく、本心から与えることに喜びを感じています。

しかし、それは本当に木にとっての幸せと言えるのでしょうか。

 

そんな読み手の疑問を誘うように、男が幹を切り倒した時だけは、「きは それで うれしかった・・・だけど それは ほんとかな」という一文が入ります。

ちなみに原文では「それは本当ではなかった」と、もっとはっきりと断言しています。

 

また、与えられ続ける男の子のほうは、これは明らかに不幸になっていきます。

 

ひたすら与えるだけの愛は、人を不幸にしてしまうのでしょうか。

あるいは、木が与えていたものは、真実の愛ではなかったのでしょうか。

 

木を「子どもを甘やかす親」とか「駄目男に尽くしてしまう女」に当てはめてこの物語を読むと、歪んだ愛に対する警鐘とも解釈できます。

 

実際、ほとんどの方が木と男の子の関係を「親子」か「男女」になぞらえているようです。

が、また別の見方も可能だと思います。

 

「木」をそのまんま「木」として、男の子を「人類」として、つまり「自然と人間」と捉えてみると、そこにもう一つの景色が広がります。

 

自然は見返りを求めません。

ただ自らの生を全うするだけで、人間はそこから様々な恵みを受け取ります。

 

ですが、自然を破壊し続け、発展し続けることで、人類は豊かになったのでしょうか。

 

……等々、様々な読み方ができ、まさに読み手の想像力が試される絵本です。

これほどに深い内容の作品を、これほど簡易な絵と文で表現しえたことが、シルヴァスタインさんの稀有な才能の、何よりの証明でしょう。

 

 

さて、色々な絵本を紹介・分析・研究してきたこのブログですが、次に取り上げる絵本でついに100冊目となります。

いつも読んでくださっている方、ショップを訪れてくださる方、本当にありがとうございます。

 

記念すべき100冊目は、あの名作を紹介したいと思います(明日更新予定)。

お楽しみに。

 

推奨年齢:小学生以上〜

読み聞かせ難易度:☆

作者の顔のインパクト度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「おおきな木

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絵本の紹介「おまえうまそうだな」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは宮西達也さんの「ティラノサウルスシリーズ」の一作「おまえうまそうだな」です。

作・絵:宮西達也

出版社:ポプラ社

発行日:2003年3月

 

アニメ化もされた人気作。

ぐーん、と一気に描いたような力強い線。

子どもが描いたような(もちろんわざとでしょうけど)、荒々しくて単純な絵で、主人公が恐竜。

 

一見すると、比較的小さな子向けの作品なのかと思えますが、実は感涙必至のドラマなんですね。

 

宮西さんは多数の作品を手掛ける人気作家ですが、「愛」や「情」をテーマにした作品を得意としていて、そのほとんどは、大人が読んでも(むしろ大人の方が)泣けるお話ばかりです。

 

一方で、子どもの喜ぶツボもしっかり押さえています。

恐竜の他にも、ウルトラマンやトラックなど、全体に男の子向けの題材の作品が多いようです。

 

さて、内容に入りましょう。

 

むかし むかし おおむかし

それこそ恐竜時代の大昔。

 

アンキロサウルスの赤ちゃんが孵化します。

周囲に親の姿はなく、心細くて泣いているアンキロサウルスの前に、恐ろしげなティラノサウルスが現れ、

ひひひひ……おまえ うまそうだな

そう言って飛びかかろうとした時、なんとアンキロサウルスはティラノサウルスに抱き着き、

おとうさーん!

 

面食らうティラノサウルスに、アンキロサウルスは

ぼくの なまえ、よんだでしょ

『おまえ うまそうだな』って。ぼくの なまえ ウマソウなんでしょ

 

という、「ルドルフとイッパイアッテナ」的勘違いにより、ティラノサウルスを父親と認識するのです。

 

なんとなく気を削がれたティラノサウルスは、そのままウマソウと暮らし始めます。

自分を父親と信じ込み、無邪気でまっすぐな信頼と愛情を寄せてくるウマソウに、次第に情が芽生えてゆくティラノサウルス。

 

外敵からウマソウを守ったり、戦う術を教えたりするようになります。

 

しかし、この関係の切ないところは、一方のティラノサウルスは、自分は決してウマソウの本当の親ではないことを知っている点。

彼にとってウマソウが大事な存在になればなるほど、いつかは別れなければならないと思うようになっていくのです。

 

そしてついにある夜、ティラノサウルスはウマソウにさようならを告げます。

当然ウマソウは泣いて拒否します。

 

いやだー! いやだー! ぜったい いやだー!

ぼく、おとうさんみたいに なりたいんだ。おとうさんと ぜったい いっしょに いる!

 

ウマソウ、おれみたいに なったら だめなんだ

それでも離れようとしないウマソウに、ティラノサウルスは、

あそこの やままで きょうそうしよう

おまえが おれに かったら、ずーっと いっしょに いてやる

 

ウマソウはその言葉を信じ、走り出します。

ティラノサウルスはその場を動かず、ウマソウの後ろ姿をじっと見守ります。

 

そして、ウマソウの走って行った先には―――

 

★      ★      ★

 

もちろん、私も号泣しました。

 

ただ、ティラノサウルスの心情の変化を、幼い子どもに理解できるかどうかは微妙だと思います。

案の定、うちの息子(3歳)も、このラストシーンにはきょとんとした様子でした。

 

古典絵本には、この手の「泣ける」物語というのはほとんど見られません。

現在は大人向けに、感動・感涙を誘う絵本がたくさん出版されるようになりました。

 

それは絵本の多様化が進んだ結果で、それ自体は喜ばしいことだと思います。

けれど、いくら絵本が進化しようとも、子どもの成長速度は変わりません。

 

うちの息子は早い時期からの読み聞かせによって、2歳以前には文章を読めるようになり、語彙も豊富で、知力レベルでは同年代の子に比べて進んでいると言えます。

でも、情緒のレベルに関しては、さほど他の子と違いはありません。

 

子どもの情緒はそんな急激に発達するものではなく、人生経験を伴って、あくまで緩やかに成長するものです

そして、そうでなくてはならないと思います。

 

絵本を選ぶ際、「最初のうちは、わかりやすい形のハッピーエンドを」というのは、そのためです。

 

かといって、小さな子にこの絵本を見せてはいけないということではありません。

前述したとおり、たとえ物語の繊細な感情が理解できなくても、この絵本には子どもが喜ぶ要素がたくさん含まれています。

ただそれを楽しむだけでも構わないのです。

 

読み聞かせる側は、そのことを理解し、けっして子どもを感動させようなどとは気負わないことです。

 

いつか子どもが懐かしさから、ふとこの絵本を手に取るようなことがあれば、その時に「ああ、あのころ読んでもらったこの絵本は、本当はこんなお話だったんだ」と、もっと深く感動できるはずです。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

孫悟飯とピッコロさんを思い出す度:☆☆☆☆

 

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誰でも持っていて、お金もかからなくて、絶対に外さない子どもへの贈り物

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は、特に、父親についての話です。

 

母親とはまた違った意味で、父親って難しいものです。

お腹を痛めないで子どもを持つことは、言い換えれば頭で考えて「親」になるわけで、そうするとなかなか即座に実感を得るのは困難です。

 

もちろん、そうでないお父さんもいらっしゃるでしょう。

そういう方は幸福だと思います。

 

私はそうではありませんでしたから。

 

出産にも立ち会いましたが、思ってたほど感動しませんでした。

夜中〜早朝にかけての分娩でしたので、とにかく眠かったこともあったし。

 

やたら印象に残っているのは、赤ん坊の爪が信じられないくらい小さかったこと。

 

自分は子どもを愛せるのだろうか。

そもそも、愛ってなんだろうか。

 

何かを与えることが愛なら、自分はこの子に何を差し出せるだろう。

 

生まれたばかりの息子を抱いて、そんなことを考えていました。

私にはお金もないし、愛情もあるのかどうかわからないし、何かを教えてやれるほどの人生経験もないし。

 

考えた末、たったひとつ、息子にあげることのできるものを見つけたのです。

 

誰もが持っていて、お金のかからないもの。

でも、意外と人にはあげたくなくて、自分だけに使いたいもの。

それだけに価値があるもの。

 

それは自分の「時間」です。

★「三つ子の魂百まで」

 

 


子どもの能力や性格やその後の人生に、もっとも大きく影響を与えるのは、生まれてから3年間の環境だと言われています。

 

それほどに重要な「最初の3年」。

なら、自分の人生の3年間を、この子に「あげる」ことにしたのです。

 

そのひとつが「いつでも、何度でも」の絵本の読み聞かせです。

それ以外の時間も「あげた」以上は、私のものではなく息子のものです。

 

息子が遊びたがれば、いつでも応じなければなりません。

 

もちろん、すべてに応じれるわけではありません。

仕事しないと生活できないし。

 

でも、家にいる間は、「自分の時間」はありません。

トイレに行く時でさえ、断りを入れて行きます。

 

やってみると、肉体的にも精神的にも、相当辛かった。

 

★3年間が過ぎて思うこと

 


正直なところ、とても完璧にやれたとは言えません。

最初のうちは、せいぜい30分もすると苦痛でした。

 

眠りたい、本が読みたい、調べものがしたい、友人と遊びたい、とにかく一人で出かけたい……。

次々と欲求が湧いて出て、それに負けることもしょっちゅうでした。

 

でも、3年が過ぎ、読み聞かせた絵本が1000冊を超えたころ、その生活にも慣れました。

 

不思議なものです。

 

あれほど「自由になりたい」と願っていたのに、今は、むしろ一人でいた時よりも自分が「自由である」と感じるのです。

 

時間を「独り占めしたい」と思っていた私は、実は不自由な人間だったのかもしれません。

 

そして、おぼろげながらも、「これが愛なのかな」と感じることがあります。

子どもと、心が繋がっていると感じることもできます。

我ながら、ずいぶんと人間らしくなったものだと思います。

 

何のことはない、この3年間で、私の方が息子から多くのものをもらっていたのです。

 

★勘違いしやすいこと

 


誤解してほしくないのは、繰り返すようですが、子どもに時間をあげるんですから、その時間は子どものものだ、という点です。

子どもを自分に付き合わせるのではありません。

 

将来、この子をスポーツ選手に

とか、

東大生に

とか、早教育に血眼になっているのは、それはむしろ「子どもの時間を奪っている」んです。

 

もうひとつ、私は基本的に子どもの言うことを何でも聞きますが、「何でも買い与える」ことはしません。

 

だって、あげたのは「時間」であって「お金」や「物」ではないですから。

 

★最後に

 


けっして簡単じゃないし、自分自身もちゃんとできなかったことを人に勧めるのもどうかとは思うんですが、それでも、世のお父さん方にぜひ勧めたいのです。

 

ゴミ出しとか、風呂掃除とか、そんなもん(大事ですけど)どうだっていい。

1時間でも、30分でも、子どもと一緒にいてあげて欲しい。

毎日1冊だけでもいいから、絵本を読んであげて欲しい。

 

たった3年、されど3年。

この3年を子どもに差し出せたなら、「自分は子どもを愛している」と言ってもいいんじゃないでしょうか。

 

 

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