2017.10.31 Tuesday
【絵本の紹介】「かようびのよる」【197冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今日は火曜日。
ハロウィンとは関係ありませんが、不思議で怪しい気分を呼び起こしてくれる絵本を紹介しましょう。
「かようびのよる」。
作・絵:デヴィッド・ウィーズナー
訳:当麻ゆか
出版社:福武書店
発行日:1992年1月20日
毎回「衝撃的」と評される作品を発表し続ける奇才・ウィーズナーさん。
これは彼の最初のコールデコット賞受賞作品です。
「最初の」というのは、ウィーズナーさんはこの絵本界最高の賞を三度も受賞しているのです。
これはかなり凄いことです。
彼の作品は概して文字が少なく、絵の力のみで物語を構成することが多いのですが、この「かようびのよる」も、テキストは最低限に削られています。
「かようび、よる8時ごろ・・・」
という一文だけが印象的に差し込まれ、あとは読者自身がここで起こる不思議な現象の「目撃者」となります。
そのワクワク感がたまりません。
突然、カエルが乗った蓮の葉が宙に浮きあがり、無数のカエルたちが空中飛行を始めます。
これはカエルたち自身の意思とは無関係らしく、カエルたちも驚いた表情を見せます。
が、すぐにこの空中遊泳を楽しみ始めます。
そのカエルたちのユーモラスなこと。
民家の庭の洗濯物の中に突っ込み、シーツをマントにしてスーパーマン気取り。
さらに家の中に侵入し、居眠りしているおばあさんの前で、テレビを鑑賞。
リモコンは舌で操作。
犬に見つかって吠えられるも、数の力で逆に追いかけ回します。
しかし、夜明けが近づくにつれ、魔法の力は弱まり……。
蓮の葉は浮遊力を失い、カエルたちは次々に落下し、すみかに帰って行きます。
朝が来て、地元の警察やマスコミが街じゅうに散らばった蓮の葉を調べ、この不可思議な現象に首をひねります。
そして、また次の火曜日……。
★ ★ ★
本文にはありませんが、カバーの袖部分に書かれた「この本にしるしたできごとは、とある町でかようびのよるほんとうにおきたことである」という文句が、読者の想像力をさらに刺激します。
で、こうした出来事は本当にあったのです。
突然に上空から魚やカエルなどが降ってくる事例は過去にいくつも報告されており、日本でも2009年にオタマジャクシが降っています。
これらはファフロツキーズ(日本では怪雨)と呼ばれ、竜巻や鳥、飛行機などが原因ではないかと考えられていますが、はっきりしたことはわかっていません。
そういう事実は脇においても、ウィーズナーさんの描写のリアリティは、読む者に「本当にあるかも」と思わせるに十分な力を持っています。
ウィーズナーさんはとにかく細部までの圧倒的なリアリティにこだわりを見せます。
それは絵の写実性とは別領域の問題です。
映画などでも、せっかく素敵なストーリーや設定があっても、ちょっとした「リアリティの欠如」が目に付くと、とたんに冷めてしまい、物語に入り込めないということがあります。
「どうせフィクションだから」では済まされない。
それは子どもも同じことです。
彼らはある意味では大人以上に合理的思考をします。
物語が「ありえるか、ありえないか」が重要なのではありません。
大切なのは「納得感」です。
ところで、この物語の中で唯一のカエルの目撃者となる男性ですが、写真で見たウィーズナーさんにそっくりなんですね。
あれはやっぱり、作者本人なのでしょう。
私たちは絵本を読むことで、作者と共に秘密を分け合う存在になるのです。
推奨年齢:4歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆
どうしてもジョジョを思い出す度:☆☆☆☆☆
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