2018.03.28 Wednesday
【絵本の紹介】「ぞうのエルマー」【231冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回は世界20か国以上で翻訳され、日本でも人気の高い「ぞうのエルマー」シリーズより第一作「ぞうのエルマー」を紹介します。
作・絵:デビッド・マッキー
訳:きたむらさとし
出版社:BL出版
発行日:2002年4月1日(新装版)
ぞうを主人公にした絵本は数あれど、見た目のインパクトという点ではこの「エルマー」ほど派手なキャラクターもいないでしょう。
「きいろに オレンジ あかに ピンク あおくて みどりで むらさきいろで くろくて しろい」
パッチワークのぞう、それがエルマー。
これは「ぼくはおこった」などの作品を手掛けた絵本作家のきたむらさとしさんが翻訳した新装版です(題字のレタリングがきたむらさん仕様になってますね)。
イラストの可愛さもあって、アニメや関連グッズも多い「エルマー」ですが、「キャラクターもの」ではなく、特にこの第一作はメッセージ性の強い内容になっています。
エルマーはふざけるのが好きで、周りの仲間たちも、彼といると笑顔になってしまいます。
そんな人気者のエルマーですが、実は自分だけが他のぞうと違うことに人知れず悩んでいました。
「どうして ぼくだけ みんなと ちがっているんだろう」
「パッチワークのぞうなんて、へんだよね」
ある日、エルマーはいいことを思いつきます。
こっそりと出かけて、「ぞういろをした 木のみ」でパッチワーク模様を消してしまい、みんなと同じ見た目の普通のぞうに変身します。
そのまま何食わぬ顔で群れに戻り、仲間の中に潜り込みます。
誰もエルマーに気づきません。
しかし、みんなが黙りこくって、深刻な顔をしていることに、エルマーは可笑しさをこらえ切れなくなって、大声を出して仲間たちを驚かせてしまいます。
雨が降ってきて、エルマーの変装をすっかり洗い流します。
いつものエルマーのいたずらだとわかった仲間たちは大笑い。
それからは仲間たちはその日を「エルマーの日」として、毎年色んな模様にそ自分を飾り立ててパレードをすることにします。
けれども、エルマーだけはふつうのぞうの模様になるので、すぐにそれがエルマーだとわかるのでした。
★ ★ ★
子どもが成長すると自我意識が芽生えますが、周囲と自分との違いを気にしたり、見た目に劣等感を持ったりするのはもう少し大きくなってからでしょう。
ですからこの絵本のテーマはわりと大きな子に向けてのものと言えます。
日本は特に同調圧力の強い国と言われています。
「個性を大事にした教育を」などと声を上げても、それはどこかぎこちなく、白々しい響きがあります。
そう言っている大人自身が、周囲の目を気にしているし、みんなと同じでないと生きにくいと感じているからでしょう。
子どもを持てばよくわかりますが、やっぱり自分の子と他の家の子を比べて、「みんなと同じでない」点を気にしてしまうものです。
その一方で「全く同じ」なのも不満で、どこかにちょっとだけ違いを求めたりする、勝手な親心。
ファッションの話みたいですが、結局それが日本人の性なのかもしれません。
「自分が個性的であるか」どうかを、他人を見て判断しようとする滑稽さ。
私たちはまだまだ「個」というものに対しておっかなびっくりで接しているのだと感じます。
佐々木マキさんの「やっぱりおおかみ」を紹介した時にも触れましたが、「個」になることと「自由」になることは密接に繋がっています。
集団でいれば安心だし、守られているかもしれないけれど、人間の意識は成長過程で「自由」を志向します。
それは一人の人間も、国家単位の集団でも変わりません。
自由になろうと思えば、「個」であることを引き受けなければなりません。
それができないのは、やっぱり我々がまだまだ精神的に未成熟だからなのです。
少なくともこの点においては、日本は後進国だと思います。
私たちの意識のどこかには、「自由」に対する恐れのようなものがあって、「自由」と聞くと「無法状態」を連想してしまったりします。
でも、真に自由な人間は、他者の自由を尊重しますから、本当の意味での道徳的社会を築くことができるはずなのです。
どんどん絵本紹介から離れてしまいそうなので「自由」問題についてはまた別の機会に。
「エルマー」シリーズは巻を重ねるごとに個性的で楽しいキャラクターが登場します。
是非、シリーズ通して読んでみてください。
推奨年齢:6歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆
カラフル度:☆☆☆☆☆
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