2018.10.29 Monday
【絵本の紹介】「もりのかくれんぼう」【280冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回は秋に読みたいしかけ絵本を紹介します。
「もりのかくれんぼう」です。
作:末吉曉子
絵:林明子
出版社:偕成社
発行日:1978年11月
見事に金色に染まった森の絵が美しいですね。
実はすでにここから仕掛けは始まっています。
気づきましたか?
かくれんぼが好きな少女「けいこ」は、お兄ちゃんといっしょに公園から帰る途中、生垣の下をくぐり抜けます。
すると、突然見たこともないような大きな森の中に出てしまいます。
「きんいろに けむったような あきのもり」をひとりぼっちで歩いていると、歌が聞こえてきます。
驚いて辺りを見回しても、誰もいません。
すると声が、
「あはは、みえなきゃ さかだちしてごらん」
けいこが足の間から覗いてみると、今まで見えなかった男の子の姿が見つかります。
「おいらは もりの かくれんぼう」
ここで読者も絵本を逆さにしてみると、ほんとに木の枝や葉っぱに溶け込むようにして見えなかった男の子の姿を発見できるはず。
そう、これは巧妙な「隠し絵」絵本なんです。
「かくれんぼう」と名乗った男の子は、けいこをかくれんぼ遊びに誘います。
森の動物たちも集まってきて、みんなでかくれんぼ。
読者はけいこといっしょに、絵の中に隠れた動物たちを探します。
これまでも探し絵絵本としては「きんぎょがにげた」「うずらちゃんのかくれんぼ」を紹介しましたが、難易度はさらに上がっており、大人も一緒に楽しむことができます。
全員見つけると、今度はけいこが隠れる番。
息を殺して、じっと茂みの中に身を潜めていると、お兄ちゃんが歌いながらけいこを迎えに来ます。
顔を上げると、そこは夕日に染まったけいこたちの団地の敷地の中。
森も、動物たちも、かくれんぼうも、どこかに消えていました。
不思議に思ってけいこがお兄ちゃんに「ここ、もりじゃなかったの?」と訊くと、お兄ちゃんはこの団地ができる前は、ここは大きな森だったんだと教えます。
けいこは、まだどこかにかくれんぼうが隠れているような気がして、辺りを見回すのでした。
★ ★ ★
林さんの絵の上手さは今さら言うまでもないんですが、今回は隠し絵。
ほんとに何でも描けるんですね、この人。
そう言えば林さんは「10までかぞえられるこやぎ」では、筋とは無関係に絵の中に人の横顔の隠し絵をこっそり入れるという遊びをしていて、あっちはさらに難しく、そもそも隠し絵があることにすら気づかないような、ほんとの隠し要素になっていました。
たまに公園で息子とかくれんぼをやりますが、あれはなかなか頭を使う遊びですね。
それに、じっと気配を殺している時の、あの何とも言えない不思議な感じも、ずっと忘れていました。
子どもの遊びは押しなべて人間能力の開発に通じるものですが、「かくれんぼ」が涵養するのは「見えないものを見る」能力なのかもしれません。
この作品が描かれたのは今からちょうど40年前、経済成長とともに人口が増え、次々と団地が建設されていた頃です。
子どもたちの遊び場も、今よりは多かったでしょうが次第に減って行き、山や森も潰されていったのでしょう。
ラストシーンに漂うちょっとした秋の寂寥感は、楽しさいっぱいだったかくれんぼ遊びが終わる時にふと感じる寂しさに似ています。
推奨年齢:5歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆
探し絵難易度:☆☆☆
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