【絵本の紹介】「くんちゃんとふゆのパーティー」【289冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

私が住んでいる大阪では、積もるほどに雪が降ることは本当に珍しく、息子はまだ積雪を見たことがありません。

けれども様々な絵本から雪遊びの知識はたくさん得ていますので、今年は色々と(勝手に)計画を立てている様子。

 

12月のカレンダーを見たら、いつの間にか息子が「そり」の予定を書き込んでました。

どうやら12月には必ず雪が積もるものと思っているらしい。

 

他にも巨大な雪だるまを作るとか、かまくら(2階建て・滑り台付き)を作るとか、期待は膨らむ一方。

これはもう、スキー場にでも連れて行くしかないかもしれません。

 

さて、今回は優しい冬の絵本「くんちゃんとふゆのパーティー」を紹介します。

作・絵:ドロシー・マリノ

訳:新井有子

出版社:ペンギン社

発行日:1981年11月

 

天真爛漫な「くまのくんちゃん」シリーズ。

以前に「くんちゃんのはじめてのがっこう」を取り上げました。

 

≫絵本の紹介「くんちゃんのはじめてのがっこう」

 

豊かな自然に囲まれた一軒家で、優しく理解のある両親から愛情を受けて健やかに育つくんちゃんの物語。

本当にこのシリーズは「健やか」という言葉がぴったりきます。

 

寒い季節がやってきて、冬ごもりの支度を始めるくんちゃん一家。

でも、くんちゃんは冬ごもりなんかしたくありません。

何故なら、まだ雪を見たことがないから。

 

それを聞いてお父さんは、くんちゃんが雪を見られるように、冬ごもりは少し先延ばしにすることにします。

子どもに理解のあるお父さん。

 

そのお父さんはよその家の屋根直しを手伝いに出かけます。

その後、ついに雪が降ってきます。

 

大喜びで雪と触れ合うくんちゃん。

雪を掴まえようとしたり、足跡を付けたり、雪だるまを作ったり。

雪が積もると食べるものがなくなるという小鳥たちのために、木の枝に食べ物を結び付けたり、しまりすやうさぎたちを呼んでパーティーを開いたりする、優しいくんちゃん。

 

そして、自分の家でも冬のパーティーをして、お父さんをびっくりさせようと考えます。

斧でもみの木を切り倒すくんちゃん。

小さくてもさすがはくま。

力持ちです。

飾りつけをし、クッキーを焼いて待っていると、真っ白な雪ぐまのようになったお父さんが帰ってきます。

 

お父さんは袋からくんちゃんとお母さんへのお土産を出し、家族は楽しい夕飯。

くんちゃんは幸せな夢を見ながら眠りにつくのでした。

 

★      ★      ★

 

黒ペンのタッチに赤が映えます。

「クリスマス」という言葉は出てきませんけど、くんちゃんが作るのは明らかにクリスマスツリーだし、大きな袋をかついで帰ってくるお父さんはサンタさんのようです。

 

マリノさんの描くイラストは、ラフなようでいて本当に繊細です。

くんちゃんの仕草や立ち方など、くまの特徴を維持しつつ人間の男の子そのものに見えます。

 

両親のくんちゃんを見つめる表情からは深い愛情が伝わってきて、思わず我が身を振り返ってしまいます。

寒いけど、面倒だけど、出費がかさむけど、やっぱりこの冬は雪遊びを経験させてやらないとなあ。

しかしいざとなったら、うちの息子は雪の冷たさと寒さにくじけて、早々に逃げ帰るんじゃなかろうか……。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

お母さん美人度:☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「くんちゃんとふゆのパーティー

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

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【絵本の紹介】「ババールとサンタクロース」【288冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は久しぶりに「ぞうのババール」シリーズの続きをやりましょう。

ババールとサンタクロース」です。

作・絵:ジャン・ド・ブリュノフ

訳:矢川澄子

出版社:評論社

発行日:1974年12月30日

 

この「ババールとサンタクロース」はシリーズ5作目にして、ブリュノフさんの遺作となります。

私もこの大河ロマン的絵本を綴ってきて、とうとうここまで来たかと感慨ひとしおです。

過去記事も併せてお読みください。

 

≫絵本の紹介「ぞうのババール」

≫絵本の紹介「ババールのしんこんりょこう」

≫絵本の紹介「おうさまババール」

≫絵本の紹介「ババールのこどもたち」

 

幼くして母親を亡くし、逃亡の果てに良き理解者や伴侶と出会い、ついにはぞうの国の王となったババール。

いくつもの試練を乗り越えたババールは、三人の子どもに恵まれ、幸せな安定した暮らしを手に入れます。

 

そして今回は、こざるのゼフィールが人間の世界で「サンタクロース」と呼ばれるおじいさんの存在を知り、アルチュールとババールの子どもたちにその素敵な話を聞かせるところから始まります。

 

彼らはさっそく、自分たちもクリスマスにプレゼントがもらえるよう、サンタクロースに手紙を出します。

けれど返事は来ず、がっかり。

 

そんな彼らを見たババールは、自らサンタクロースに会って直談判しようと決意します。

 

身分を隠し、一人旅に出るババール。

サンタクロースの手掛かりを求める彼の前に、様々な登場人物が現れ、協力してくれます。

サンタクロースについての文献を手に入れ、学者に解読してもらい、犬の協力を得て、サンタクロースのいるらしき「プリムネストエ」に向かいます。

 

そこでやっと本物のサンタクロースの家に辿り着きます。

サンタクロースは地下に住んでおり、アリの巣のようなその内部が図解されます。

実に楽しいシーンです。

 

さて、サンタクロースは忙しくてとてもぞうの国までは回り切れないとのこと。

そこでババールはクリスマスまでの休暇として、サンタクロースをぞうの国へ招待することにします。

 

ひこうせん サンタとくべつごう」に乗り、ぞうの国に帰還するババール。

サンタクロースはぞうたちの熱烈な歓迎を受け、ゆっくりとバカンスを楽しみます。

 

そのお礼として、サンタクロースはババールにサンタクロースの衣装とおもちゃの袋を渡します。

ババール自身がサンタとなって、ぞうの国の子どもたちにプレゼントを配るのです。

もちろんクリスマスは子どもたちはみんな大喜び。

サンタクロースはクリスマスツリーを届けてくれ、来年からは毎年ぞうの国にも来てくれることを約束して帰って行くのでした。

 

★      ★      ★

 

今回は絵本界最強クラスのご都合主義パワーは抑えられ、ババールはなかなかに苦労します。

その象徴として、例の大金持ちのおばあさんが登場しません。

彼女ならサンタクロースに対するコネも持ってそうなのに。

 

つまり、もうババールは完全に大人なのです。

自らの力で人生を切り拓く力を持っているのです。

 

その力の根源は、これまでのシリーズで繰り返し描かれてきた「落ち着いた態度」「均衡の取れた感情」「理性的な対処」といった「正のパワー」です。

不治の病に侵されたブリュノフさんは、最後の最後まで、子どもたちへのこれらのメッセージを送り続けたのです。

 

彼の死後、残された原稿をもとに、息子のロランさんがこの絵本を完成・出版しました。

そしてそれ以降も、「ババール」シリーズはロランさんの手によって描かれ続けています。

 

この間紹介した「マドレーヌ」シリーズが、作者の孫の手によって引き継がれたのと同じです。

 

≫絵本の紹介「マドレーヌのクリスマス」

 

奇しくも、作者の最後の作品がクリスマスにまつわるものという点まで共通しています。

 

ジョン・ベーメルマンスさんもロラン・ド・ブリュノフさんも、自分が子どもの頃から親しみ続けてきた偉大で楽しい絵本シリーズが終わってしまうことに耐えられなかったのでしょう。

作者の魂は作品と共に生き続け、また次の世代へと受け継がれていきます。

 

「正のバトン」を受け取った者は、それを正しく次のランナーに渡す使命感を呼び起こされます。

そんな風にして、ブリュノフさんが命を削って描いた「ぞうのババール」は、今もなお、世界中の子どもたちの生きる力となっているのです。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

サンタ家の断面図の楽しさ度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ババールとサンタクロース

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【絵本の紹介】「さむがりやのサンタ」【287冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは「さむがりやのサンタ」です。

作・絵:レイモンド・ブリッグズ

訳:すがはらひろくに

出版社:福音館書店

発行日:1974年10月25日

 

この時期になると今でも本屋さんに並ぶロングセラーです。

テキストなしのコマ割り手法を用いた「ゆきだるま」が世界中で大人気になったブリッグズさん。

この作品も同様にテキストはなく、フキダシにによるセリフのみという漫画的絵本です。

 

≫絵本の紹介「ゆきだるま」

 

点で描かれたつぶらな瞳がチャーミングなサンタさん。

絵本に登場するサンタさんって、わりかし作者の個性がにじみ出たキャラクターが多いんですが、このサンタさんは少なくとも見た目は一発でわかる王道サンタクロースです。

 

ところが、ページをめくってみると予想外。

何しろ、いきなり自宅のベッドで南国の夢を見ているところを目覚ましに起こされて、不機嫌そうな顔で、

やれやれ またクリスマスか!

と愚痴が飛び出すのです。

そして、ぶつぶつと文句を言いながら紅茶を入れ、朝ごはんを用意し、身支度をします。

これが細かいコマ割りで実にリアルに、丁寧に描かれています。

 

イギリス風生活を営むサンタの日常がありありと想像できるのです。

口を開けば文句と愚痴ばかりなサンタですが、生活の所作は丁寧で実直。

 

プレゼントをそりに積み、きちんと幌をかけ、一緒に暮らす動物たちに声をかけ、仕事に繰り出します。

 

そして一軒一軒を回ってプレゼントを配るのですが、これがなかなかの重労働。

意外にも煙突はお嫌いなようで、考えてみれば玄関を開けていてもらえば早いものを、わざわざ煙突を降りなければ入れないのは確かに非効率です。

 

えんとつなんて なけりゃいいのに!

すすだらけになっちまった

 

悪態をつくサンタに、同情しつつもついクスリと笑ってしまいます。

ラジオで雪情報を聴きながらお弁当のサンドイッチを食べるサンタ。

ちゃんとトナカイにもエサをあげます。

 

住人の差し入れ、ジュースは喜ばないけど酒には満足。

寒いですものね。

 

牛乳配達人と言葉を交わし、女王の宮殿にもプレゼントを配り、やっと仕事は終わります。

ここで終わらないのがこの作品のいいところ。

自宅へ戻ったサンタは、また紅茶を入れ、トナカイを労わり、温かいお風呂に入って一杯やります。

 

そして、自分へのクリスマスプレゼントを開け、ひとくさり文句。

寝る前にはちゃんと犬と猫にもプレゼントをあげ、最後は読者に向かって仏頂面で、

ま、おまえさんも たのしいクリスマスをむかえるこったね

 

★      ★      ★

 

いやあ、実に楽しいサンタさんです。

 

口が悪くて不愛想で文句が多いけど、根はやさしくて仕事も暮らしぶりも丁寧で真面目。

昔の頑固おやじ風のブリッグズサンタ。

 

何だか普段は知らないお父さんの仕事を覗き見たような気分になります。

それが不思議と温かく、親近感が湧きます。

 

リアリティと人間味たっぷりだけど、夢は壊れず、むしろサンタさんがもっと好きになる、そんな素敵な絵本です。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆(コマ割りについてこれる子でないと難しいです)

人間臭さ度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「さむがりやのサンタ

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【絵本の紹介】「マドレーヌのクリスマス」【286冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は大人気「マドレーヌ」シリーズより、この季節にぴったりの一冊を紹介しましょう。

マドレーヌのクリスマス」です。

作・絵:ルドウィッヒ・ベーメルマンス

訳:江國香織

出版社:BL出版

発行日:2000年11月1日

 

パリの寄宿舎で暮らす12人の女の子の活躍を描いた素敵な物語。

これまでに2作品を紹介しました。

 

≫絵本の紹介「げんきなマドレーヌ」

≫絵本の紹介「マドレーヌといぬ」

 

マドレーヌといぬ」では絵本界の最高賞コールデコット賞を受賞したものの授賞式には出ず、マドレーヌの名前のモデルである妻を代理に立てたというシャイなベーメルマンスさん。

素行不良で故郷にいられなくなり、アメリカに渡り、ほとんど独学で絵を、描いて描いて描きまくることによって学んだベーメルマンスさん。

 

そんな魅力的な作者の生涯は、「ベーメルマンス マドレーヌの作者の絵と生涯」という本にまとめられています。

とても面白いですよ。

 

さて、シリーズ化して以降のマドレーヌたちは、隣に引っ越してきたいたずらっ子のペピートと交友を深めたり、ロンドンやアメリカに遠征したりと世界を股にかけた活躍を見せます。

今回はパリに帰ってきて、お馴染みの寄宿舎でクリスマスを迎えるのですが……。

 

なんとマドレーヌ以外の11人と、ミス・クラベルまで屋敷中が風邪で寝込んでしまいます。

たった一人元気なマドレーヌは、掃除に料理、みんなの看病までてきぱきとこなします。

ただのいたずらっ子ではない、実にしっかり者。

そこに訪ねてきた、妙にアラビアンなじゅうたん商人さん。

12まいのじゅうたん」を行商に来たのです。

 

なんてすてき。あさ おきるとき、これで あしが つめたくないわ

と、やさしいマドレーヌは、ミス・クラベルの許しを得て、12枚のじゅうたんを商人から買い取ります。

 

ところが、全部のじゅうたんを売ってしまった商人は寒さに震え、じゅうたんを取り戻そうと屋敷に引き返してきます。

どんな商人だよ。

 

屋敷に辿り着いた時には、商人は全身カチンコチンに凍っており、マドレーヌがやかんのお湯で解凍し、薬を飲ませてやります。

パリの冬って、そこまで寒いの?

元気になった商人は実は魔術師で、マドレーヌを手伝って魔法で皿洗いをします。

さらに、呪文を唱えると、

じゅうたんが一斉に空に飛び上がり、12人をそれぞれの家族のもとに連れて行ってくれます。

12人は実家で楽しく過ごした後、寄宿舎に戻って元気に新しい年を迎えるのでした。

 

★      ★      ★

 

ツッコミどころ満載のマドレーヌ流クリスマス。

サンタカラーのじゅうたん商人、あれほどの魔術師なら、寒さくらいなんとかならなかったのかとか、最後に呪文を解くのは何故かミス・クラベルだったりとか。

なかなかはっちゃけた展開のオンパレード。

 

この楽しい絵本が、ベーメルマンスさんの遺作となりました。

絵本製版にあたっては、雑誌掲載時のカットを写真撮影で引き延ばしたり、その上から彩色したりして製本したそうです。

 

そのためかどうか、正直なところ、絵の完成度としては初期作品に及ばない部分が見られます。

いつもの美しい街並みのカットがないせいかもしれません。

 

でも、マドレーヌの奮迅ぶりは頼もしいし、珍しく彼女の顔のアップも見られますし、荒唐無稽でありながら幸せなストーリーも爽快感があります。

あっさりとした終わり方は、ある意味でベーメルマンスさんの遺作に相応しいようにも思います。

 

ベーメルマンスさんの死後、このシリーズは彼の孫のジョン・ベーメルマンスさんが引き継いで描いています。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

じゅうたん商人にツッコミたくなる度:☆☆☆☆☆

 

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【絵本の紹介】「サンタクロースってほんとにいるの?」【285冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

そろそろ今年もクリスマスが近づいてきました。

ぼちぼちクリスマス絵本を取り上げて行こうと思います。

 

サンタクロースを信じているのは何歳までか」という問いが定番になっているほど、子どもとサンタを巡る問題は決着しません。

子どもにサンタの存在を信じ込ませようとするのは親のエゴだ」と言われると、そうかもしれない気もします。

 

無邪気にサンタを信じ、プレゼントに感激する子どもの姿は確かに可愛いものです。

しかし、「いい子にしていないとサンタさんが来ないよ!」と取引の道具にするのはどうかと思います。

 

かの瀬田貞二先生が児童百科事典を編纂した際に、「かっぱ」の項目に「かっぱは今もいる」と断言された時の気持ちを考えると、子どもにとってサンタがいなくてどうするのだ、とも思います。

 

では、当の子どもたちはこの問題をどう考えているのでしょう。

大人よりも遥かに合理的で現実的な彼らは、「サンタクロースの矛盾」を無視はできないはずです。

 

今回はそんな子どもたちと両親の息詰まる攻防を描いた絵本「サンタクロースってほんとにいるの?」を紹介します。

作:てるおかいつこ

絵:杉浦繁茂

出版社:福音館書店

発行日:1982年10月(かがくのとも傑作集)

 

ねえ サンタクロースって ほんとにいるの?

 

いつかは浴びせられるであろう、子どもからの問い。

とある家庭の、浴室風景です。

お父さんは子どもたちとお風呂に入りながら、彼らの鋭い質問に答えて行きます。

えんとつがなくても くるの?

ドアに かぎが かかっていても くるの?

 

どうして ぼくの ほしいものが わかるの?

どうして としとって しなないの?

どうやって ひとばんで せかいじゅうを まわれるの?

みなみのくにでは どうするの?

こないうちもあるのは なぜ?

お父さんとお母さんは、次々に投げかけられるもっともな質問から逃げたりあしらったりせず、真摯に丁寧に、彼らが納得しやすいような回答を与えます。

 

最後に子どもたちはどこか不安な表情で、

ねえ、ほんとうにいるの

 

いるよ

サンタクロースは ほんとにいるよ

せかいじゅう いつまでもね

 

子どもたちは求めていた答えを得て、幸せな表情で眠りにつきます。

 

★      ★      ★

 

子どもに嘘を教えることは良くないことです。

しかし、子どもにはファンタジーが必要です。

 

彼らはこの世界が「善きところ」「美しきところ」であることを信じたいと思っています。

これからの長い人生にとって、世界が美しく善いところでなくてどうしましょう。

 

子どもがいつかサンタクロースの正体を知る日が来たところで、そんなことは些末なことです。

その時までに、彼らの心に色鮮やかなファンタジーが育っていれば、サンタクロースそのものは問題ではないのです。

 

大人がそのことを理解し、そして自分も心からこの世界が美しいことを信じていれば、この絵本のような子どもからの質問に、確信をもって即答することができるはずです。

 

大人たちが一瞬でもたじろいだり、「自分の言葉でない言葉」で語ったり、ごまかしたりすれば、子どもは即座に見抜きます。

その時、子どもは大人を出し抜いたという勝利感を手にするでしょうが、同時にかけがえのない世界を失っているのです。

子どもに、そんな悲しい勝利を与えたくはありません。

 

それにしても、我が家の息子はサンタクロースについてどう考えているのでしょう。

実のところ、どうにもそれが不明なんです。

 

年齢相応以上の読書経験のある子ですから、その中にはサンタの存在を否定するような内容のものもあったでしょう。

科学本もたくさん読んでいますし、意外と現実と幻想を分けているような素振りも見せます。

本当はサンタクロースなんていないと思ってるのかもしれません。

 

でも、今年のクリスマスには「本当に乗れる飛行機のラジコン」が欲しいなどと宣います。

そんなもん……」と言いかけると、不思議そうな顔でこちらを見てきます。

どうしてダメなの? サンタさんに頼むのに」と言わんばかりの表情で。

 

何もかもわかっててやってるのか。

無邪気なのか。

 

聞くわけにもいきませんしねえ。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

両親のアドリブ能力度:☆☆☆☆☆

 

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