2019.07.31 Wednesday
【絵本の紹介】「マリーナ」【332冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
夏休みらしい絵本をと思い、今回は「マドレーヌ」シリーズで有名なルドウィッヒ・ベーメルマンスさんによる幻のユーモア絵本「マリーナ」を持ってきました。
作・絵:ルドウィッヒ・ベーメルマンス
訳:ふしみみさを
出版社:クレヨンハウス
発行日:2009年6月20日
世界中で大人気の「マドレーヌ」シリーズについては、過去記事をお読みください。
さて、今作が「幻の」と言ったのは、日本では長らく翻訳されていなかったからです。
クレヨンハウスから2009年に発行されていますが、ベーメルマンスさんがこれを発表したのは実に1962年のこと。
内容はと言えば、次々と海の生き物たちが登場する、まるで水族館のような楽しさいっぱいの絵本です。
「マドレーヌ」とはまた違ったベーメルマンスさん「らしさ」が読めます。
「マリーナ」とはアシカの女の子の名前。
主人公でありながらセリフなし。
そのへんは初登場時のマドレーヌも同じでしたが、マドレーヌと違ってマリーナは行動もほとんどなし。
物語の中心にいながらひたすら受動的であるという面白い立ち位置になってます。
物語を牽引するのはマリーナの父親です。
彼はサーカスのスターであり、夏のバカンスに妻と娘を連れて海辺の家へ出かけます。
そこで呑気に遊んでいるイルカの一群を見て、父親は「あれじゃ へっぽこ イルカショーだよ!」と玄人っぽく批判します。
が、その間にマリーナは一人で海へ遊びに出て、大きなサメに丸呑みにされてしまいます。
両親は慌ててそこらの生き物に助けを求めますが、くじら、トド、ワニ、誰に声をかけてもつれない返事。
するとそれを見ていた先ほどの6頭のイルカたちが立ち上がります。
イルカたちはサメを海の上に放り出し、サメは弱ってマリーナを吐き出します。
両親は急いで娘を救急病院へ搬送し、手術が行われ、マリーナは元気になります。
無事に家に帰った後、父親はしみじみと呟きます。
「どうしようもなく こまったときに、たすけてくれるのは、ふだんは のんきな おどけものなんだな!」
★ ★ ★
見返しも含めて、絵が素晴らしく楽しいです。
一見テキトーな線なようで、ひとつひとつのキャラクター造形が凝っており、表情豊かです(特にサメ)。
助けを求めるアシカ両親に対するくじらたちのシビアな回答、マリーナを吐き出したのに結局カラカラの干物にされてしまう可哀そうなサメ。
ユーモラスでキューティでありながら甘ったるいところがないのがベーメルマンスさん流。
また、原文はわかりませんが、ネーミングでも遊んでます。
「ノラ」「クラ」「ダラ」「デレ」「グー」「タラ」……ひどい。
イルカとマリーナ以外では何故か唯一名前を付けられているのが看護師の「ヒポポタマスさん」(カバ)。
これはどう考えても「ヒポクラテス」とかけたかっただけでしょ。
全然活躍しない主人公のマリーナはラストシーンではちょっと大きくなって髪の毛が伸び、娘らしくなってます。
これは事件を経て成長したということなのか、それとも単なる描き間違いでしょうか。
何しろ「げんきなマドレーヌ」では、11人のはずのキャラクターを12人描いたりするベーメルマンスさんですからね(38pのシーン)。
推奨年齢:4歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆
カバは海の生き物じゃないだろ度:☆☆☆
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■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「300冊分の絵本の紹介記事一覧」
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