【絵本の紹介】「算数の呪い」【335冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

夏休みも終わり、新学期が始まりますね。

憂鬱な気持ちの子どもたちも多いかもしれません。

 

私はあまり勉強の好きな子どもではありませんでしたが、中でも数学は苦手で、ほとんど苦痛でした。

面倒な式、難解な用語、集中力のない自分には辛い計算。

そして最終的には「いったいこれが何の役に立つの?」という、数学を放棄する子どもたちの常套句を口にするのでした。

 

さて、今回紹介するのはそんな難解な数学用語がたくさん登場する珍しい絵本です。

そのおどろおどろしいタイトルと、若干ホラーテイスト漂うイラストに、ちょっと手に取るのをためらいがちな作品ですが、あにはからんや、これが数学アレルギーの私でさえ最初から最後まで楽しんで読める傑作なのです。

 

算数の呪い」。

作:ジョン・シェスカ

絵:レイン・スミス

訳:青山南

出版社:小峰書店

発行日:1999年1月12日

 

私の息子にも絶対にウケると確信して読んでやったところ、予想以上の高評価。

我が家に数千冊ある絵本の中でも栄えある「リピート率高い絵本」にランクインしました。

特に様々な単位がびっしりと書かれている見返しがお気に入りの様子。

 

「楽しく数学を学べる」系の絵本かと言えばそうでもなく、どっちかというと悪ノリのユーモア絵本という印象で読んでいると、割にマジな数学知識が登場したり、なかなか一筋縄では行かない作品です。

 

算数の授業中「フィボナッチ先生」がいった「たいていのことは、算数の問題としてかんがえられるんですよ」の一言がきっかけで、目の前の現象すべてが算数の問題として現れるようになってしまった(ちょっと神経過敏ぎみの)少女。

 

おきたのは7:15

服をきるのに10分で、朝ごはんを食べるのに15分で、歯をみがくのには1分かかる

1 バスは8:00にきますが、まにあいますか?

2 1時間は何分ありますか?

3 1つの口に歯は何本ありますか?

この調子で問題責め。

1ガロンは何クォートですか?」なんていう、耳慣れない単位も飛び出します。

ピザを分ければ分数の問題、英語の時間なら「mail+box=mailbox」、図工の時間は古代マヤの数字。

 

ちょいちょい算数と関係ない問題を混入し、油断してるとすぐに足をすくわれます。

有名なフィボナッチ数列や、4進法、2進法などの考え方もさらりと登場。

問題の出し方は非常にユニーク、そしてイラストはハイセンス。

次から次に出てくる問題に少女はふらふら、読者であるこっちの頭もごちゃごちゃ。

夢の中で少女は最大の危機に襲われますが、よくわからない機転で切り抜け、ついに呪いを解きます。

 

晴れ晴れとした気分で目覚める少女。

ところが平和な気持ちは束の間、今度は「ニュートン先生」が「たいていのことは、理科の実験としてかんがえられます……

 

★      ★      ★

 

子どもには、いや大人にだって難しすぎる問題を、いちいち立ち止まって解こうとする必要はありません。

最後まで読んだら、時間と余裕がある時にじっくりと一人で考えてみましょう。

 

裏表紙にはとてもありがたい「こたえ」が掲載されています。

答え合わせをしながら、必ずもう一度笑えることをお約束します。

 

さて、数学に悩まされた頃の私が発した「これが何の役に立つの?」というあのワードこそが、実は自分自身に対する「呪いの言葉」だったことに気づいたのは大人になってからです。

一度その言葉を口にすれば、あらゆる学習意欲は削がれます。

それは無知で無力な子どもにとっては恐るべき呪いです。

 

私の周りにはその呪いを解いてくれるような大人はいませんでした。

彼らの答えは「受験に必要」だから「今は我慢して」勉強しろ、というものだったのです。

 

いくら無知な子どもでも、彼らの人生観の空虚さだけはわかりました。

けれども、そういう大人から逃げたつもりで、結果的に「学び」を放棄してしまったことは、とてつもなく大きな代償だったと思います。

 

受験という制度が子どもたちから奪ったもの(これからも奪い続けるもの)の多さは深刻です。

遠い未来にはこんな制度はなくなるでしょう。

愚かだからです。

 

子どもは本来「受験のために」勉強などしません。

そんなことを心からしたがる子どもはいません。

彼らは自分の生を充実させてくれる「知」を求めます。

 

かつてプラトンは、自分のもとで哲学を学ぼうとする弟子に、必ず数学を学ぶことを義務付けたといいます。

それは数学の持つ「真理」の概念を学ばせるためだと思います。

「1+1=2」という概念はすべての人間に平等に顕現する真理です。

明晰な思考はそうした真理という土台の上に構築しなければなりません。

 

いずれは子どもの学びというものが、上記のような理念のもとに考え直されなければならないと思います。

その根っことなるのは、幼児期から知的好奇心を自然な形で満足させてやることです。

子どもが本来持っている「おもしろいか、おもしろくないか」の基準は、実は非常に正確であり、その後の人生にとっても重要な意味を持つのです。

 

子どもたちがこの絵本を読みたがるのは数学の勉強のためではなく、「おもしろいから」という理由でしかないはずです。

そして、それで良いのです。

 

推奨年齢:7歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

学校の成績貢献度:☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「算数の呪い

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

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【絵本の紹介】「さかなはさかな」【334冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

絵本界を代表する哲学者、レオ・レオニさん。

ラブリーな絵柄、鮮やかな色彩、そして深いメッセージの込められた現代的寓話。

大人が読んでも考えさせられる絵本作品の数々。

 

レオニさんの作品に共通するテーマは「自分とは何か」です。

哲学・宗教・あらゆる思想において最も重要で最も難しいのが「己を知る」ことです。

 

今回はレオニさんならではの視線が心地よい良作「さかなはさかな」を紹介します。

作・絵:レオ・レオニ

訳:谷川俊太郎

出版社:好学社

発行日:1975年

 

副題は「かえるのまねしたさかなのはなし」。

今作ではレオニさん得意のコラージュ手法ではなく、色鉛筆画が用いられています。

しかし、目に楽しい鮮やかな色使いは変わりません。

 

仲良しの「おたまじゃくし」と「こざかな」。

森の池で一緒に泳いでいた彼らでしたが、ある日おたまじゃくしには足が生えます。

自分がかえるになろうとしていることを誇らしく思うおたまじゃくし。

けど、さかなは納得できません。

かえるは かえる、さかなは さかな そういう ことさ!」とおたまじゃくし。

やがて本物のかえるに成長して岸へ上がって行ってしまいます。

 

だいぶしばらくしてから、かえるは池に帰ってきます。

世の中を見てきたかえるに話を聞き、さかなは池の外の世界へ思いを巡らせます。

鳥や牛や人間の存在を聞くと、さかなは魚に翼や角や手足が生えたような生き物を想像するのでした。

この一連のシーンは「スイミー」が海の中を泳ぎ回る場面と同じく、美しく楽しいものです。

ただ、スイミーは現実を見ているのに対し、さかなが見ているのはあくまでも自分の理解可能な領域に現実を落とし込んだ想像です。

 

再びかえるが行ってしまった後、さかなはとうとう決心して、世の中を見に水から飛び出します。

陸に上がったさかなは息をすることも動くこともできす、弱々しく助けを求めます。

運よくかえるがさかなを見つけ、池の中に戻してくれます。

 

この せかいこそ、たしかに どんな せかいよりも うつくしい せかいだった」ことに気づいたさかなは、かえるに微笑みかけます。

きみの いったとおりだよ

さかなは さかなさ

 

★      ★      ★

 

この結末をどう感じますか?

どこか素直に感動できない、「これでいいの?」という疑問が残る……もしそうなら、それは我々があまりに現代的価値観に囚われているからです。

 

それは「実現不可能に思えるようなスケールの夢」を抱くことが「よいこと」だという価値観です。

巷には「どんな夢も信じて努力すれば叶う」という物語が溢れています。

 

もし、この絵本が現代的価値観に染まった凡庸な作家によって描かれたとすれば、最後にはさかなは陸上で生活する能力を手に入れ、かえるとともに楽しく暮らす……という実につまらないラストに辿り着くことでしょう。

 

けど、そんなふうに「実現不可能な夢」を推奨するような物語ばかりを子どもに与えることによる弊害について、私たちはあまりにも無自覚ではないでしょうか。

 

私自身は「強く願えば夢は叶う」ことを信じています。

しかし「強く願う」の部分は、実は相当難しい条件だと思うのです。

「強く願う」とは単なる夢想ではなく、常に明るい知性と想像力を保ち続け、現実的な観察を怠らず、自分についてどこまでも客観的な判断が下すことができ、その上で現在やるべきことを的確に見極めるという能力です。

 

そんなことのできる人間は控えめに言っても非常に少ないでしょう。

「将来の夢」に「サッカー選手」(今だとユーチューバーとかになるのかな)と書いた子どものうち、ほぼすべては夢破れます。

それが悪いとは思いません。

問題は、本気で「なれる」と思っていた子どもたちが、その後の人生において正確な自己評価を持てるようになるかどうかです。

 

ほとんどの人間は、自分自身に正確な評価を下せません。

我々は基本的に「身の程知らず」なのです。

 

かえるに成長変化するおたまじゃくしを妬み、嫉み、自分の浅薄な知識で世界を理解した気になり、自分にだって同じことができるはずだと思い込む。

私たちはこのさかなを笑えるでしょうか。

 

「己を知る」ことができない限り、我々は自分の本当の欲求をも知ることができません。

生涯他人の欲望を模倣し、常に不充足感に悩まされ続けます。

 

さかなは さかなさ」と悟ることのできたさかなは、もうかえるを妬む必要がなくなったのです。

彼は友だちと自分の違いを涼しく認め、友だちの価値を認め、自分の価値を認めることに成功したのです。

「精神的に自由になる」とは、本来そういうことなのです。

 

関連記事≫絵本の紹介「スイミー」

≫絵本の紹介「シオドアとものいうきのこ」

≫絵本の紹介「フレデリック」

≫「みんなのレオ・レオーニ展」に行ってきました。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

水草のバリエーションの隠れた楽しさ度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「さかなはさかな

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たまには児童書感想文

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今日から通常営業再開しています。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

お盆休み中はこれといった過ごし方もしてなかったんですが、息子とはずっと一緒に遊んでました。

最近息子のピタゴラ熱が上昇しており、よくピタゴラ装置を作ってます。

私も手伝わされるんですが、あの装置を作るのはなかなかにしんどい作業です。

息子の設計はやっぱりまだ甘いので成功率も低いし。

 

けど、以前と違うのは失敗しても怒らなくなったこと。

むしろ失敗を楽しんでるみたいで、何回でも繰り返してチャレンジしてます(設計を見直すことはしない)。

50回くらい失敗した時に、「作り直したほうがいいんじゃないの」と言うと、

ぼくがピタゴラ装置が好きなのは簡単だからではなく、困難だからだ

 

……こいつ、アポロ計画の時のケネディ大統領の演説をどっかで見たな。

休み中だからといって本はあんまり読んでません。

それでも一般の5歳児の読書量とは比べられないでしょうけど。

 

もうここ一年以上、絵本を「読んで」と言ってくることはなくなりました。

かつて毎日何十冊も読んでたころのことを思い返すと楽になったような寂しいような。

たまには一緒に読みたいですね。

 

読んであげるのはもっぱら児童書ばかりです。

食事の時に少しずつ読んでます(おかげで食べるのの遅いこと)。

 

読了したものを一部紹介しますと、

ジュール・ベルヌの「十五少年漂流記」。

結構難しかったと思うんですが、まあまあ理解しているみたいです。

今でもクライマックスの戦闘シーンだけをリクエストしてくることがあります。

 

ぼくは王さま」シリーズ。

特に、「王さまロボット」に収録されている(新装版だと「ハアト星の花」)「モルト星の石」という短編がお気に入り。

私も大好きでしたが、こういう本格SFも違和感なく盛り込んでいるところが「王さま」の魅力のひとつ。

しかも、SF系短編のほとんどは未解決の部分を残した結末になってて、不思議な読後感。

 

あと、初期のお話「ウソとホントのほうせきばこ」もリピート率高いです。

王さまの話は基本的に途中で切らずに読み切ることになってるんですけど、このエピソードは相当長いんで苦労します。

 

長くつ下のピッピ」(アストリッド・リンドグレーン著・岩波少年文庫・大塚勇三訳)。

海外児童小説はちょっと伝わりにくいユーモアや言い回しがあったりしますが、そういうものにどんどん触れておくと将来一人で読書する時の楽しみが増えると思います。

世界一の怪力、独特のファッション、人を煙に巻くようなお喋り、お金持ちで学校にも行かず、毎日好きなことをして過ごすピッピの痛快なこと。

息子はピッピが「馬を持ち上げる」シーンと料理のシーンで必ず大笑いします。

 

西遊記」は翻訳が違うもので子ども向けのを二作読みました。

ひとつは偕成社から出版されている渡辺仙州訳・佐竹美保絵。

もうひとつはポプラ社の吉本直志郎訳・原ゆたか絵。

 

個人的には後者のほうが訳文・絵ともに好みでした。

というか、音読するとよくわかるんですが、文章力とかテンポの良さとかが段違いです。

偕成社のほうは同じ言い回しが多用されてたり日本語が変だったり、正直読んでて辛かったです。

 

ただ、ポプラ社の方はわりと性的な描写もあるので(オブラートに包んではいますが)、息子から突っ込まれないかドキドキしながら読んでました。

別に聞かれたら答えるけどさ。

 

もっとも息子の方はどちらが好きということもなく、どっちも喜んで読んでました。

西遊記自体が超面白いですからね。

特にユニークな武器の数々がツボだったようです。

 

ルドルフとイッパイアッテナ」シリーズ。

これは現在四作目まで刊行されてます。

私は二作目の「ルドルフともだちひとりだち」までしか知らなかったので、息子のおかげで続編に触れることができました。

やっぱり最初の方が面白いです。

これ、子どもの頃は気づかなかったけど、実は「任侠もの」なんですね。

 

ドロシー・エドワーズの名作「きかんぼのちいちゃいいもうと」シリーズ。

福音館書店から出版されている作品は訳が渡辺茂男さん、挿し絵が酒井駒子さんということで、絵本好きなら親しみやすいでしょう。

とにかく名文。

作者は子どもの普遍的な心情というものを知悉しており、深い愛情を持って彼らが喜ぶであろう物語を構築します。

私が一番好きなのは最初の「おさかなとり」で、全然泣くような話じゃないのに、何故かラストで涙ぐんでしまいます。

それは「よくぞこんなところを掬い取ってくれた」という作者への感動かもしれません。

言うまでもありませんが、酒井さんのイラストは最高です。

 

斎藤淳夫さんの「冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」。

私が子どもの時はアニメから入った作品です。

アニメも原作も傑作です。

 

実はこの作品で息子は初めて物語を聞いて涙を見せました。

ラストシーン、潮路さんが死んでしまうところです。

これまでは感動する話を読んでもゲラゲラ笑ってたり、いまいち感情の掴めない子だったんですが、成長したなあと感慨ひとしおでした。

 

ただ、本人は悲しくなる話は読んで欲しくないそう。

それも普通ですけどね。

幼い子どもは単純なハッピーエンドを求めるものです。

 

物語なら涙ぐむくらいですむけど、休み中に「となりのトトロ」を見せたら、サツキとメイが喧嘩して大泣きするシーンで息子が泣きながら「消して!」と叫んで怒り出してしまいました。

泣くシーンは絶対ダメだそうです。

 

息子の情緒はまだまだ成長途上です。

 

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【絵本の紹介】「サンタのたのしいなつやすみ」【333冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

当店は夏休みとして8月10日〜15日までは出荷作業をお休みさせていただきます。

受注・問い合わせメールは常時受け付けております。

 

さて、今回紹介するのは「サンタのたのしいなつやすみ」です。

作・絵:レイモンド・ブリッグズ

訳:こばやしただお

出版社:篠崎書林

発行日:1976年6月1日

 

この絵ですぐにピンときますよね。

そう、ブリッグズさんによるあのやたら人間臭いサンタが奮闘する「さむがりやのサンタ」の続編です。

 

≫絵本の紹介「さむがりやのサンタ」

 

これは篠崎書林から出版されていた廃刊本で、現在はあすなろ書房から翻訳を新たに「サンタのなつやすみ」が刊行されています。

 

いやあ、またあのサンタさんに会えるのは嬉しいです。

今回もたくさん文句言ってます。

 

タイトル通り、サンタさんの夏休みを描いた番外編的作品なのですが、その過ごし方の優雅なこと、愉快なこと。

世界各国の描写の面白いこと。

個人的には前作よりも好きだったりします。

 

このサンタさんはイギリス在住なのですが(どうもイギリス以外の国は管轄外っぽい)、夏休みに海外旅行を計画します。

前作同様、細かいコマ割りとフキダシによるコミックスタイル。

ごちそう、ワイン、太陽に憧れてパリ行きを決めるサンタさん。

 

仕事用のそりを改造してキャンピングカー仕様にし、ラジオでフランス語を勉強。

持っていく荷物からサンタさんの個性が見えます。

バードウォッチングが趣味の様子。

 

パリでは覚えたてのフランス語を操り、服を買い、フランス人っぽく振る舞おうとしたり。

レストランではクリームソース料理ばかりでケチャップとソースを恋しがったり。

挙句にはお腹を壊してしまいます。

水のきれいなところがいい、というわけでサンタさんは次にスコットランドを目指します。

現地の音楽やウイスキーを堪能しますが、水が冷たいのとサメが出るのに辟易して、今度は砂漠のラスベガスへ。

山盛りのポテトに肉料理、ケチャップ……ジャンクフードはサンタさんの好みに合ってるようです。

ショーを見物し、カジノでギャンブルに興じ、念願かなって熱い日差しを浴びてプールで泳ぎ、夢のバカンスを満喫。

プールサイドで読んでいるのはギャンブル本。

まさに「俗」丸出しのサンタさんですが、とても好感が持てます。

下品じゃないからでしょうか。

 

楽しい時を過ごしたサンタさんですが、お金が寂しくなってしまい、我が家へ帰ることに。

ペットたちと再会し、庭の花々の生長を確認し、そしてすぐさま仕事に取り掛かることになります。

 

だれがみてるってわけでもないけど」赤いユニフォームに着替え、いつもの紅茶を沸かし、すっかり仕事顔に戻ります。

そしてしみじみと「やっぱりここが じぶんのうちがいい」と呟くのでした。

 

★      ★      ★

 

実は私の息子もこの作品が大好きで、何度も引っ張り出して読んでます。

特にフランス語のシーンとフランス料理のシーンがお気に入り。

 

この絵本ではフランス語の会話がそのままカタカナ表記されてるので、そこを読んではゲラゲラ笑ってます。

息子に限らず、子どもは知らない言葉が好きなものかもしれません。

 

旅行に行きたくなる本でもありますが、フランスもスコットランドも魅力的に描きつつ、案内役のサンタさんが最後はぼろくそに言うので、薦めてるのかけなしてるのかわかりません。

 

ヨーロッパでは長期休暇が当たり前でも、日本人は休み下手なので、こういう長いバカンスの過ごし方がわからないのではないでしょうか。

このサンタさんは実に休み上手。

時間の使い方、気持ちの切り替え、暮らしの中のちょっとした手間。

相変わらず文句は多いけど、豊かな人生の過ごし方を知ってます。

 

お金も相当使ってますけど。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

ガイドブック絵本度:☆☆☆

 

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