2019.11.27 Wednesday
【絵本の紹介】「カニツンツン」【349冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回紹介するのは「カニツンツン」です。
作:金関寿夫
絵:元永定正
出版社:福音館書店
発行日:2001年10月31日(こどものとも傑作集)
絵を見ただけでわかるでしょうけど、作画はあの魔術的中毒性を持つ伝説絵本「もこもこもこ」の元永定正さんです。
名作絵本は数あれど、他を冠絶するリピート率はもはや異常。
この「カニツンツン」も「もこもこもこ」に勝るとも劣らぬ魔法の絵本です。
我が家の息子的にはむしろこっちの方がツボでした。
死ぬほど笑い転げて、「もう1回」「もう1回」「あと10回」「いいって言うまで繰り返し」。
30回くらいでやっと笑わずに読み終わるけど、次に読むとまた転げ回る。
「カニツンツン」、なんじゃそりゃ。と思うでしょう?
蟹がハサミでツンツンする絵本ではありません。
意味不明の言葉の羅列みたいに見えるけど、ところどころ英語が入ってたり、意味ありそうだったり、詩のような、歌のような、呪文のような、言葉遊びのような、摩訶不思議なテキスト。
他の絵本にも言えることですけど、これは特に音読をオススメします。
黙読ではこの楽しさがわかりません。
ともかく一部読んでみましょうか。
はい、ご一緒に。
「カニ ツンツン ビイ ツンツン ツンツン ツンツン カニ チャララ ビイ チャララ チャララ チャララ」
「イーニ ムーニ ムー ロッシーニ ショショーニ」
「スプモーニ トトーニ スイート トスカニー」
「ドンキー モンキー スモーキー ミルオーキー」
「スマッシュ スラッシュ ブラッシュ ウオッシュ」
「トッチン ツン トッチン ツン トチチリツン トチチリトン」
「トンガ コンガ オロンガ コンガ オノンダガ」
「モチ チイテ ヤオ テバ ニゲロ、ダー」
ついてきてますか?
「ピンク シンク リンク ボボリンク ドリンク」
「ベンヴェヌート チェリーニ」
「カニ ツンツン ビイ ツンツン カニ チャララ ビイ チャララ」
元永さんの描くカエルっぽい謎の物体が「ツンツン」言いながら画面のあちこちに現れ、最後はドアップになって(ここも子どもが大笑いするポイント)「チャララ」。
★ ★ ★
これを一回読みで満足する子どもはいないんじゃないでしょうか。
読み聞かせる側も楽しいので、30回繰り返してもさほどストレスは感じません。
これは一体なんなんだ、とどうしても意味を求める大人たちのために、親切にも巻末に解説文が掲載されています。
作者の金関寿夫さんはアメリカの先住民の詩などを研究なさっている著名な学者・翻訳家です。
作者の創作した言葉と、様々な形ですでに存在している言葉の響きとを組み合わせて、この絵本のテキストが作られたそうです。
「カニ ツンツン……」は、アイヌ民族が鳥のさえずりを聴き取ったもので、後は英語、イタリア語、北米インディアンの部族名、歌劇の登場人物名など、自由自在。
しかしどれも耳に心地よいリズムがあります。
この作品が月刊絵本「こどものとも」に発表されたのが1997年、金関さんが亡くなったのがその1年前。
製作途中で亡くなられたのか、あるいは没後に、絵本にするつもりもなかった作者のメモ書きを元に絵本化を試みられたのか、そのあたりの経緯は知りません。
確実に言えるのは、絶妙にマッチした元永さんの絵の力もあり、この作品が大変な成功を収めているという事実です。
限られた作品のみが有する「絵本の魔法」、ぜひ一度体験してみて欲しいと思います。
推奨年齢:3歳〜
読み聞かせ難易度:☆
魔法のリピート率度:☆☆☆☆☆
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